異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第4章<最終戦線>編

125話「決着と、新たな戦い」

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    闇のティアマトに生み出され、影の一味の1人として暗躍していたリュウカだが、彼女は常日頃からとある夢をよく見る事があるそうだ。

「おとーちゃん!今日は何を狩るの!」

「今日は鴨を狩りに行くぞ!今夜は鴨肉だ!」

「わーい!」

「おとーちゃんが教えた通りにやるんだぞ!」  

「うん!」

    とある猟師の親子の夢。
    まだ10歳にも満たない少女が猟師の父親と共に弓を携え動物を狩る夢だ。
   
    少女は父親の見様見真似で弓を引き鴨を撃ち抜き、それを自慢げに父親に見せつける。

「……や、やったー!私凄いでしょー!」

「すごいな!将来は立派な猟師になれるかもな!」

「おかーちゃんも喜ぶね!」

「きっと喜ぶぞー!」

「……そうだよね……。」

    その晩、その一家の食卓には鴨肉が並べられ、3人はそれを美味しそうに頬張った。
    そして眠りについた少女はある夢を見る。
    とても恐ろしい夢だ……

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「ニンゲン……ヨクモ……コロシテクレタナ……ユルサナイ……オマエモ……クッテヤル!」

    猟師の父によって殺された鴨が怪物となって少女の前に現れ、少女を食べる為に追いかけてくる、という夢だ。

「いやぁぁぁあ!」

    少女は一心不乱に怪物から逃げるも、足をくじいて倒れてしまい、怪物に追いつかれ……そこで少女の夢と、そしてリュウカ自身もまた夢から覚める。
    リュウカは自分がティアマトの子である事を理解していた。だからこれは自分の前世の夢なのではないかと思っていた。
    
    リュウカはこの事を狂死郎に話しても適当にはぐらかされ、センジュからは「悪夢を見ないように俺が添い寝してやるよ」とからかわれ、結局夢の真相は分からずじまいだった。

    ただ、夢の中の少女は優しい心の持ち主であり、殺した動物の怨念に囚われてしまうような人間である事は理解できた。

    そしてリュウカはこの時初めて理解した……寄生植物によってその悪夢を延々と見せられ苦しめられる最中、何故自分とは関係ない少女が苦しめられる悪夢で自分も苦しめられているのか、と……。
    それは他ならない、その少女は前世の自分の姿なのだとリュウカは理解したのだった__



    ソレイユが振りかざした双剣は確かにリュウカを斬り裂いた……かに見えたが、リュウカの身体には傷1つついてなかった。
    ただ、リュウカの足元に焼けこげた寄生植物が転がっていた。

「なんで……俺は……せっかく生まれたのに……生きたいって思っちゃ……ダメなのかよぉぉ……。」

「私の刃は悪を斬る刃、私の炎は悪を焼く炎だ。弱きを助け悪しきをくじく。私はただ父の教えの元、自分の正義を成したに過ぎない。その結果貴様は死ぬ。」

    最期の言葉を発する寄生植物にソレイユは冷静にそう返す。
    
「……ははは、言ってくれるねぇ……」
 
    寄生植物はそう言い残して塵と化した。
    ソレイユが使った攻撃魔術は、彼女自身の心の在り方によって斬り倒すべき敵を定めるものである。
    彼女が悪と定めた者のみを討ち倒し、生かすべき者は生かす……それがソレイユの奥の手である攻撃魔術「救善討悪(きゅうぜんとうあく)」だ。

   獄焔態を解除しリュウカに近づくソレイユ。
   自我を取り戻していたリュウカは何故自分を助けたのかとソレイユに疑問を抱く。

「何故、私を助けたのですか……?」

「初めて君を見た時から、君は根っからの悪人には見えなかった。そして2度目の邂逅である今回は悪意によって操り人形にされていた、と……だから君は他の影の一味とは違うのではないかと思ってな。」

「……私は、自分の罪を償いたいです。」

「この戦いが終わったら君達の襲撃を受けたルスタ村とサータニャ村と……合わせて4つの村の復興を手伝ってくれないか?それが君の償いだ。」

「……そんなものでいいのなら……。」
 
    ソレイユは罪の償いをしたいというリュウカにその方法を提案した後、腰のポーチに入れていた回復のポーションを取り出しそれを飲み干し傷を回復させる。

「……っはー。君がもう影の一味として私達と戦う気がないのなら、私達は君を歓迎する。納得しない人達もいるだろうが、彼らは私が説得すると約束しよう。」

「……ごめんなさい……ありがとうございます……!」

    涙を流しながら謝罪と感謝の言葉を呟くリュウカ。
    これにてソレイユとリュウカの戦いは決着したのだった。



    時間は少し前に遡る。

「キングクラーケンの触手!」
 
    グォン!グォン!

    バルベストの塔の周辺には影の一味が自らのアジトである塔を防衛する為に、何匹ものモンスターが徘徊していた。
    そのモンスターが良太郎達の戦いに割って入って邪魔をしないよう、モンスターの討伐を任せられたのはタウラス、ベル、ドラコの3人だった。

「グギャアァァァァァァ!!」

「キュイィィィィィ!!」
 
    トカゲ型モンスターのシェルリザードや蜘蛛型モンスターのポイズンスパイダーが両手を烏賊型モンスター、キングクラーケンの触手に変化させたタウラスの攻撃によって次々になぎ倒されていく。

「高速斬!」

「ウインドスラッシュ・ウェーブ!」
 
「ギュエェェェ!!」

    タウラスに負けじとベルとドラコも2人で協力して手強いモンスター達を1匹ずつ確実に倒していく。
    標的のサソリ型モンスター、チェイサースコーピオンにベルが繰り出した高速の斬撃を直撃させた後、ドラコが放った風の斬撃を飛ばす魔術によってトドメを刺した。

「よし!」

「このままいくよ!」

「待て!」

    その時、モンスター達を掃討してやろうと意気込むベルとドラコの元にイブが現れる。
    何事かと思い一旦イブの傍に近づくタウラス、ベル、ドラコ。
    その間イブは簡易対モンスター結界を展開し、それによってモンスターからの攻撃を阻む。

「王都で何かあったんすか!?」
 
「あぁ。これを見ろ。」

    イブはシャナと戦う片手間で王都レガーの防衛戦の様子を確認しており、その王都で異常が起こっていたのを確認したイブは王都への助っ人としてタウラス、ベル、ドラコを選んだのだ。

「これは……」

    イブが持っていた水晶を覗く3人。
    そこには、謎のモンスターによって冒険者達が次々に倒されていく映像が映っていた。

「シャナのついでに、モンスターの相手は私が引き受ける。お前らはこれを持って王都へ。」

「あぁ!」

「任せたぜイブさん!」

「行こう2人共!」

    イブはティアマトの子モンスターに有効な武器、浄魂の剣をドラコに託し3人をワープゲートによって王都へ向かわせる。
    この数分間なんとか簡易結界によってモンスターの足止めをできたイブだったが……

パリィン!  

「まぁ、お前には通用しないよな……簡易結界だし。」

「あはは!私をほっぽってどこかに行かないでよ!イーブさーん!」

    結界を破ったのはその場にイブを追って現れたシャナだった。
    人類と影の一味は熾烈さを増していく……。


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