異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

119話「光と、影」

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    私はたった1人になったこの空間で、死者の魂を捏ねくり合わせてモンスターを作り続けた。
    良太郎君がここにやってきた後、決戦を明日に控えた今日までずっとモンスターを作り続けた……明日はいよいよ、これら全てをスワロウ大陸の5王国に解き放つ……。

    ティアマトという特殊な存在であるが故に疲れなどは全く感じなかった……それに私のことを邪魔する者などいなかったから今日までモンスターをひたすら作り続ける作業など苦ではなく__

「私の中から出ていけ!」



「……?」

    次の瞬間、私は彼の意識の中に引きずりこまれ、彼の心と対峙した……戸田山蓮……私がこの体を奪った相手だ……。

「最近ずっと静かだったと思ったら……健気だねぇ、ずっと私の意識を乗っ取る機会を伺っていたとは。」

「乗っ取る?ふざけるな!取り返したんだ!」

「それについては謝るよ。狂死郎と私の野望の為にティアマトの力は必要だったんだ。そもそもそのティアマトが私の手によって作られたもの……私こそ乗っ取ったなどという言われはない。自分のものを自分の好きにして何が悪い?」

「そこに私の意思が介入すればティアマトはお前だけのものではない!私は生命の神ティアマトとして……死者を安らぎの異世界に送る事を使命としてきた!」

    私は蓮とそんなやり取りをするが……根本が違う私と彼とでは話にならないな。

「じゃあこう言ってあげよう……私が道楽で作った神様の役を演じてくれてありがとう!もう君の身体はいらないよ……ただ、「神様の役」は私が引き継ぐ。」

 「何を__」

    私は蓮をティアマトの役目から解放し、それに自分が成り代わる事を決めた。
    この身体を2つの肉体に分離させ、片方には戸田山蓮の人格が、もう片方には私とティアマトの力が宿った。



「……改めて聞こう!貴様は何者だ!」

「私は地球の意思、ガイ・アステラの3つに切り分けられた魂の1片さ。さよなら蓮!妻にまた会えるといいな!」

「うぁぁぁ!!」

    私は蓮に別れを告げ、掌を蓮に向けて彼を操り、異世界の適当な場所に放り投げた。
    
「くっくっく……始まるぞ狂死郎クン……私達の新世界が……!」



「そうだね、闇のティアマト……」

    脳内に響く闇のティアマトの言葉を聞きながら、僕は大きな椅子で心を穏やかにして身体を休める。
    この塔の周りには無数のモンスターが徘徊している上に、僕ら影の一味の戦力もセンジュにリュウカ、そしてシャナと申し分ない。
    死神はモンスター達にによる王国アストレアの王都レガー襲撃に向かわせよう……雑兵達に紛れさせてあんな化け物が来たら彼らも少しは驚いてくれるだろう。
 
「なぁリーダーよぉ。」

「なんだい?」

    センジュが僕にある事を問いかける。

「このリュウカ、私が何やっても反応しないんだけど……少しは恥じらいとか見せてくれた方がさぁ!遊びがいがあるだろ!なぁ?」

    と、まぁセンジュらしいと言えばセンジュらしい質問だった。

「……君は女の子なのに女の子が好きなんだね。」

「好きに性別は関係ねぇだろ。ほら見てみ?髪の毛触っても、お腹揉んでも、胸揉んでも何も反応しねぇ!」

「セクハラは良くないわよセンジュちゃん。」

    リュウカの体を隅々まで触るセンジュにシャナは注意するが、センジュは気にも止めてない様子だ。

「うっせーなシャナ。だいたいこのメンバーはなんか辛気臭ぇんだよ!少しは盛り上げ役の私を労ってもいいだろ?な?」

    センジュは陽気な態度でそう言うと、シャナにもウザ絡みしに行こうとする。

「シャナは幼女カワイイし、リュウカはクーデレカワイイし、もっとお前ら楽しんでいこうぜ!先の短い殺人鬼集団なんだからよぉ、上辺だけでも楽しんでねぇとやってらんねぇよ!」

    ……センジュの言い分も納得できない訳ではない。
    明日の決戦で誰か死ぬか……最悪皆死ぬかもしれない。
    人類を虐殺し世界を支配する、なんて意気込んでる僕らに報復という死の恐怖を感じでビクビクする資格なんてない……それは当たり前のことだけど……うん、いつも通り陰湿にしてたらせっかくここに来てくれる良太郎君達に失礼かな、なんて。

「やろう、皆!」

「リーダー……」

「明日、良太郎君達を殺し__」

「__僕達が世界の支配者となる!」

    僕は僕の中のガイ・アステラと共にセンジュ、リュウカ、シャナにそう宣言する。
    勝つのは、僕達だ__



「ありがとうございます、グルさん!」

「おうよ!その新しい武器で影の一味をぶっ飛ばしてこい!」

    マリーネはグルさんから、自分専用の新しい魔杖「ラファエル」を受け取り彼にお礼を言った。
    新しい武器を渡すのはマリーネで最後だと、俺とマリーネがこの工房に来た時にグルさんがそう言っていた。

    俺はマリーネと共に工房を出て、街の景色をしっかりと目に焼き付けながら門の所まで歩いていく。

「リョータロー君、町中をまじまじと見てどうしたの?」

「いや……気になってたんだ。狂死郎が言ってた事が……狂死郎には真の目的があって、それが実現したら……俺は元いた世界に帰れるって……。」

    俺はマリーネの疑問にそう返す。
    するとマリーネは

「ここにはもういられなくなるかもしれない……って事?」

「分からない……その真の目的を聞かない分には。ただ……俺はこの1ヶ月……マリーネ達と一緒に影の一味と戦ってきた。たった1ヶ月だけど……皆とは心が通じあっていたと思う。生まれた場所は違っても……俺達は仲間なんだ。」

「……そうね。私もリョータロー君の事、最高の仲間だと思うわ。」

    マリーネは俺の事を最高の仲間だと言ってくれた。
    その一言で、今まで頑張って影の一味と戦い続けてきた事が報われてたような気がした。
    
「リョータロー君。」

「何?」

「この世界の事……好きになってくれた?」

「……うん。マリーネ達が生きている素晴らしい世界だ。」

    俺はそのままマリーネと共に俺達の家に帰っていった。
    明日、世界の命運を決める戦いが始まる……俺達は絶対に勝たなくちゃいけないんだ……!


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