異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

113話「冒険者、帰還」

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    俺はマリーネ、イブさん、ソレイユさん、仁美さんと共に王国アトラの王宮で今すぐアンドレイ陛下に挨拶をして王国アストレアに帰る事にした。
    俺が「巨大ゴーレムから元の姿に戻りたい」と念じると、気がついたら俺の姿は元の姿に戻っていて、それを見ていたマリーネ曰く「ゴーレムの胸のクリスタルからリョータロー君が出てきた」だそうだ。

    そして巨大ゴーレムは一旦そこに置いといて後で俺がまたそれに変身してアストレアに戻る事にし、俺達は今アンドレイ陛下の王宮に来ている。
    王宮に来た俺達に、アンドレイ陛下はまず労いの言葉をくれた。

「よく影の一味の妨害を払い除け、巨大ゴーレムを受け取ってくれた。その力は是非影の一味との戦いに役立てて欲しい。」

「もちろんそのつもりです。」

「さて……リョータロー君。」

「はい?」

    そして彼は俺の名前を呼び、続けてこう言う。

「「世界が闇に覆われた時、白銀の鎧を身に纏う勇者が闇を払い、世界に光をもたらす」……というおとぎ話がこの国では言い伝えられているんだけど……僕はその勇者が君だと思うんだ。」  

    アンドレイ陛下の言う事はちょっと不鮮明なような気がするけど、俺が勇者か……鬼人族の俺が……。

「失礼ですが……自分は鬼人族です。この世界を支配しようとしてる鬼島狂死郎の血を引いた者です。そんな自分が勇者になれるのでしょうか?」

    そうは聞いてみるものの、俺の中の「ヒーローへの憧れ」が上辺だけのものなのか?と言われたら嘘になる。
    俺は今だってヒーローになりたい。
    ただ、僅かなものでいいから確証が欲しいんだ。

「あぁ、なれるさ……君にその意思があればね。」

    アンドレイ陛下は胸を張ってそう答えてくれた。
    だったら俺はそれに答えなくてはならない……元々林檎に背中を押されて始まった俺の夢……何としても叶えるんだ……!

「はい!俺は……狂死郎を倒します!」

    俺は元気よくアンドレイ陛下に宣言し、それを聞いた彼は満足したような表情を浮かべる。
    
    そうして俺達は王国アストレアに最速で帰還するべく、仁美さんのワープゲートで王都から関所へ、そして関所を抜けた場所から再びワープゲートで王都レガーへと帰ってきた。
    巨大ゴーレムが通れる程のワープゲートを頑張って作ってくれた仁美さんには感謝しないと。



キィン!ガキィン!

「もっと腰を入れて!」

「おう!」 

「ベヒーモスの剛角!」

「セブンスアイスバレット!」

    俺と舎弟のベル、ドラコ、冒険者仲間のタウラスとセリエは今王都の修練場にいる。
    文字通り武器を使った戦闘や格闘術、そして魔術を使った戦闘の修練を積む為の場所で、ここには多くの冒険者達が自分を鍛え上げる為に入り浸っている。
    最近影の一味が現れ人間を襲っているから、俺達はこうして対人戦闘の修練をしている訳だ。

    ドラコとベルはペアで剣術の訓練を、タウラスは十八番の魔獣変化の魔術、セリエは多彩な属性魔術で訓練用ゴーレムと戦っている。
    俺は得意の風属性を交えた剣術を磨いているんだが……そういや今日はリョータローの旦那やマリーネ達が帰ってくる日じゃなかったっけな?

    巨大ゴーレムがどんなものなのか気になるな……それはそうとリョータローの旦那、男1人で他は女の子で王国アトラに行ったんだよな?羨ましいぜコンチクショー!
    まぁリョータローの旦那はいわゆる女の子受けしやすい顔立ちだしな……モテるのも無理ないか。
    
    ズン……ズン……ズン……ズン……

    俺が考え事をしていたその時、何やら地響きのような音が聞こえ、俺はとっさに修練場を飛び出す。

「サボりかガオレオー?」

「違ぇよ!」

    ドラコがそう言ってくるが軽く受け流し、俺は風魔術で高く飛び上がり王都の壁の上に飛び降りる。
    そこから見えた音の正体は……

「き、巨大ゴーレム?」

    そう、黒と赤の装甲が特徴の巨大ゴーレムが音の正体だったのだ。
    そしてその足元にはマリーネとソレイユ、イブさんとティアマトの人がいるのが見えた。

「お前らー!!そのゴーレムが王国アトラで回収してきた巨大ゴーレムかー!?」

「そうだよガオレオー!!」

    俺の言葉に巨大ゴーレムが手を振りながら、リョータローの旦那の声でそう答える。
    なんでリョータローの旦那の声がするんだ……まさか旦那が巨大ゴーレムに変身したって事か……?

    と考えていると、俺に続いて地鳴りのような音に気づいたタウラス、セリエ、ベル、ドラコらが修練場から続々と出てきた。 
    俺も壁から降りて皆と共に旦那の元に駆け寄る。



「「カ……カッケー!」」

    ガオレオとドラコは巨大ゴーレムの姿を見て目を輝かせながらそう叫ぶ。
    こ、この世界の人達にもこのゴーレムのロマンを「理解る」人がいるのか……。

「長旅ご苦労さんだな。マリーネちゃんとソレイユはこれから俺と一緒にお茶でも飲んでリラックスを__」

「普通に家で休ませろ。」

「あ、あはは……」

    タウラスはキザな態度でマリーネとソレイユさんをお茶に誘おうとするが、ベルが頭を叩いてそれを止め、マリーネはその様に苦笑いを浮かべる。

「改めて皆、ただいま!」

「リョータロー……。」

「おかえり!」

    巨大ゴーレムから鬼人の姿に戻った俺は、帰ってきたんだから言わなきゃと思って改めて挨拶をし、皆はおかえりと言って返してくれた。

「私達はしばらく休んだ後、皆をギルドに呼ぶが構わないな?」

「え……どうしてですか?」

    イブさんの発言にどういう事かとベルは聞き返し、他の皆もどういう事なのかと疑問を抱くような態度を取る。
    イブさんはその理由を皆に答える。

「影の一味のいる場所は割れてるんだ……私達はすぐにでもそこを叩きに行かなくてはならない。その作戦を立てるんだよ。」

「……!!」

    イブさんの答えを聞いた皆はハッとしたような表情を浮かべ、俺もついにこの時が来たんだと腹を括る。
    いよいよ始まるんだ……影の一味との決戦が……ここにいる皆とこの大陸にある全ての力で、影の一味と戦うんだ……!
    




    

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