異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

107話「闘志、尽きず」

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    南の王国アダンの荒野にポツンと立っている塔……そこが僕たちのアジトだという事をリュウカは話してしまった。
    もうリュウカが下手な事をしないように傀儡も同然の状態にはしたけど……ここに攻め入られるのも時間の問題かな……。

「ねぇリーダー!私の最高のゴーレムの試運転ができるのはいつかしら?」

「うーん、それならすぐにでもやってみれば良いんじゃないかな?ほら、良太郎君達はもうすぐで巨大ゴーレムを手に入れようとしているし。」

    僕はシャナの質問に答えながら、魔術のモニターで良太郎君達の様子を映し出してそれを眺める。
    巨大ゴーレムが良太郎君達の手に渡れば戦況はあちら側に傾くだろうけど、それはフェアじゃないよね……闇のティアマト。
 
「じゃあその巨大ゴーレムと私の最高のゴーレムを戦わせるって事で良いかしら?私のゴーレムは力作なのよ?」

「それは楽しみだ。」

「楽しみにしててね!最高のショーを見せてあげるわ!」

    シャナはそう言うと影の移動術でその場から姿を消した。
    恐らく最高のゴーレムとやらを作っている「ラボ」に向かったんだろう。
    うん、ここから先楽しい展開がいくつも待ってるだろうと思うと、ワクワクが止まらないよ……!



「グォォォォォ!!」

「火炎斬!!」

    イブさんの言葉で背中を押された私は、目の前に立ち塞がる強敵、グラン・ベヒーモスを何としても打ち倒す事を決意する。
    グラン・ベヒーモスの重い一撃を回避しながら炎を纏わせた剣による斬撃を繰り出して攻撃をしかける。

ザシュッ!!ゴオォォォォ……!!

「グォアァァァァ!!」

「よし!!」

    グラン・ベヒーモスの足の傷口に炎が纏わり付き、傷口を焼いている。
    そしてその場所は傷が回復していない……やはり不死身の敵に対してこの炎は有効だ!
    だが敵も負けじと怒涛の攻撃を繰り出してくる。

「グォォォォォォ!!」

ドガドガドガドガドガドガァッッッ!!

「ッ……!」

    敵は拳を何度も地面に振り下ろし、地形を歪める勢いで私に攻撃を繰り出してくる。
    だが地形が歪もうと、私には炎がある……炎はこんな使い方もできるんだ!

「火炎噴射!」

 ゴゴゴゴゴ……!

    私は足裏から炎を吹き出し、その噴射の力で宙に浮かび上がる。
    そして今の私は爆躍で身体能力が飛躍的に向上している……このまま連撃を仕掛け、確実に敵を倒すんだ……!

「うぉぉぉ!!」

「ゴァァァ!!」

    私は炎の剣を構え、炎の推力でグラン・ベヒーモスに突撃し、敵の拳や脚を回避しながら斬撃を繰り出し敵にダメージを与えようとする。

「業火斬!!」

ザシュッ!!

「グォア……!!」

    業火斬を腹部に受けたグラン・ベヒーモスは呻き声をあげ、体勢を崩した。
    さらに私とグラン・ベヒーモスは互いに怒涛の攻勢を繰り広げ、私は敵の攻撃を全て見切って確実に攻撃を当てていく。

ザシュッ!ザンッ!ガキィンッ!

    先程同様傷は回復していない。
    私はモンスターと戦う為にモンスターの生態を今までずっと勉強し続けてきた……グラン・ベヒーモスの生態ももちろん把握している。

    その図体から繰り出す一撃は受ければ致命傷は免れない……だが、当たらなければなんて事はないただのパンチやキックだ!
    通常のベヒーモスよりもパワーとスピードが高く気性が荒い事がグラン・ベヒーモスの恐ろしい所だが、フィジカル頼りのモンスターである事は通常種と変わりはない!
    私の炎と相性が悪い水属性の魔術を使ってくる訳でもない!
    いける!私は負けない!私は勝つ__

ビシャアッ!!

「!?」

「な……!!」

    次の瞬間起こった出来事は、私だけでなく後ろで見ていたイブさんも驚きを隠せなかった。
    突如、頭のてっぺんから足の爪先まで、全身を覆い尽くすような寒気が私を襲った。
    精神的な意味ではなく、私の肉体は本当に身震いをするような寒さに襲われていたのだ。
    
   私は全身に冷水を浴びていたのだった。

「バカな……グラン・ベヒーモスは属性魔術を使わない……はず……!?」

「上を見ろ!ソレイユ!」

「上……!?」

    私は焦りを隠せないような声のイブさんの声を聞いて上を見上げる。
    そこには宙を舞うモンスターが2体……羽のついた魚のような見た目のそのモンスターの名前は確か……

「スカイフィッシュ……なんでこんな所に……!?」

「グラン・ベヒーモスは自分の中にある複数の魂から幾つかを切り離し、その魂で新たなモンスターを生み出したんだ……それがその2体のスカイフィッシュ……お前がグラン・ベヒーモスとの戦いに気を取られていた隙に、敵はお前の頭上でそれを作り出していたんだ……!」

    グラン・ベヒーモスとの戦いに集中していた私にイブさんはそう説明する。
    そんな芸当ができるなんて……敵は一体どれ程の力を秘めているんだ__

「「キュエェェェェ!!」」

    次の瞬間、私が思考を巡らせているのもお構い無しでスカイフィッシュは口からレーザーのような水のブレスを私に向けて連続で放ち、私はなんとか回避しようとするが……爆躍による身体能力向上が先程の攻撃によって大幅に弱体化しており、身体が上手く動かない……!

「ぐっ……!」

    私はギリギリで水のブレスを回避するが、その隙をついてグラン・ベヒーモスは蹴りを繰り出してきた。
    回避が間に合わず、私は蹴りを受けて後方に吹っ飛び、岩に身体を打ち付けてしまう。

「ぐはっ……!」

    頭を打ってしまった……意識が朦朧とする……!
    だがグラン・ベヒーモスとスカイフィッシュは確実に私を仕留める為に容赦なく攻撃を繰り出してくる。

ビシャッ!!

「ぐっ……!!」

    再びスカイフィッシュの口から放たれた冷水の塊を私は紙一重で回避するが、そこにグラン・ベヒーモスが蹴りを仕掛けてくる。
    まずい……!

「穿貫戟!」

ドギュンッ!

「グォォ……ッ!」

    しかしギリギリの所でイブさんが穿貫戟をグラン・ベヒーモスに繰り出し、脚部に穴を開けられた敵は空中で体勢を崩して私への蹴りを不発に終わらせた。
    その隙に私は体勢を立て直し、剣を構える……しかし、この湿気った身体では炎を上手く使える自信が無い……グラン・ベヒーモスはスカイフィッシュを作った事によって治癒力は落ちているみたいだが……それでも足の穴は確実に塞がろうとしている。
    どうするべきかと悩んでいたその時、イブさんが私に声をかけた。

「ソレイユ。」

「?」

「今なら見ているのは私だけだ。遠慮なくお前の本来の姿になれるぞ。」  

「……!」

    イブさんの言葉を聞いた私は「あの姿」にならなければ勝てないのか……という考えが頭をよぎったが……。

「良太郎が自分の正体を明かした時、お前も自分の真の姿を晒しただろ。」

「……。」

「良太郎は仲間である私達になら、そう思って自分が鬼人族である事を私達に話した。そしてお前とガオレオ、そしてセリエはその気持ちに応える為に、自分達も本来の姿を良太郎に見せた。違うか?」

    イブさんの言う通りだ。
    あの時リョータロー君は私達の事を信用して自分の正体を明かしてくれた。
    敵の黒幕と同じ鬼人族だ……敵の同族、敵の仲間、何と言われるかも分からなかっただろうに……彼はきっと「覚悟」していた。

    だから私も覚悟を決めて自分の真の姿をリョータロー君に見せてあげた。
    その時彼がその姿に拒否反応を示したか?
    いや……私達が彼の出生に拒否反応を示さなかったように、彼も私達を否定しなかった。

    ならば__

「グォォォォォ!!」

    私が考え事をしている隙にグラン・ベヒーモスは傷を回復させ、私の脳天に拳撃を叩き込もうと攻撃を仕掛けてきた。

「ソレイユ……!」

    私の名前を呼ぶイブさんの声を聞いた私は、全身を燃えたぎる炎で覆い尽くし、自身を真の姿へと変化させた。

ガシッ!!

    そしてグラン・ベヒーモスの拳撃を浄魂の剣で受け止め、その姿をイブさんの目の前に晒す。
「獄焔態」……この姿で貴様を……グラン・ベヒーモスを倒す……!

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