異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

106話「炎、揺らぐ」

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    魔法陣から現れたティアマトの子、グラン・ベヒーモスは俺達の行く手を阻むようにその巨体で立ち塞がる。
    仁美さんの見立てによると闇のティアマト、レンが俺達の目的を阻む為に生み出したモンスターだろうとの事だ。
 
「まさか……影の一味はこのモンスターで私達の足止めをしている隙に「秘密兵器」を破壊するつもりなのではないでしょうか……!?」

「その可能性は高いな……ゲームメーカーのアイツはフェアなゲームを望んでいる。こっちがチートアイテムを持つのは喜ばしくないだろう。」

「ゲーム……?フェア……?チートアイテム……?この世界の人達の命がかかってるのよ……それなのに闇のティアマトはそんな事を……!」

    マリーネはイブさんの言葉を聞いて闇のティアマトに対して怒りを顕にする。
    マリーネの言う通りだ……敵はティアマトの力を使っていつ大量のモンスターでこの世界の人達を攻撃してきてもおかしくない。
    俺達はそれを阻止する為に秘密兵器の力で__

ドゴォォォォォン!!

    次の瞬間、俺は無意識的に身体を動かし、力強く振り下ろされたグラン・ベヒーモスの右手を回避した。
    突然の攻撃だったけど、マリーネとイブさん、ソレイユさん、仁美さんもなんとか回避できたみたいだ。
    俺が右手に持っている「コア・ゴーレム」の入った麻袋は無事みたいだけど……。

「リョータロー君!!マリーネ君!!」

「はい!!」

「あ、はい!?」

    次の瞬間、ソレイユさんは大きな声で俺とマリーネの名前を呼び、俺とマリーネはとっさに返事をする。
    彼女は続けて俺達に指示を下した。

「昨日の夜の会議で決めたプランB……私達の妨害をする敵が現れた場合のプラン通りに行く!私とイブさんがグラン・ベヒーモスを足止めする!リョータロー君、マリーネ君、ヒトミさんは秘密兵器の元へ!」

「「はい!!」」

「でも……今の攻撃で馬車が……!」

    マリーネと仁美さんは覚悟を決めた表情で返事をするが、さっきの敵の攻撃で馬車が壊されてしまい、馬はパニック状態になって逃げてしまった事を俺はソレイユさんに伝える。
    それを聞いたソレイユさんは策を考えようとするも、グラン・ベヒーモスはソレイユさんを標的にして攻撃を繰り出してくる。

ドゴォォォォォン!!

「ぐっ……!!」

「私がワープゲートを使います!座標はここから先12.135キロ!良太郎さん!マリーネさん!私の傍に!」

「「はい!!」」

    だが、仁美さんがワープゲートを使えると俺に教えてくれて、俺とマリーネは仁美さんの傍に近づき、仁美さんはワープゲートを発動する。

「ワープゲート!」

    仁美さんがそう唱えると黒い渦が出現し、仁美さんは「ここは任せます!」と言い残して黒い渦へと入っていく。
    俺とマリーネもそれに続いて渦の中へと入っていった。

「お師匠様!ご武運を!」

「ソレイユさん!気をつけてください!」

「任せろ。」

「後で追いつく!」

    俺達はイブさんとソレイユさんの言葉を聞き届け、秘密兵器があるフリーゼル山へと続くワープゲートへ入っていった。



「……。」

「ソレイユ……お前のお親父さんはグラン・ベヒーモスに殺されたみたいだな……。」

    リョータロー君、マリーネ君、ヒトミさんを見送った後、グラン・ベヒーモスを前にする私に対してイブさんはそう問いかける。
    私やガオレオ、セリエらの冒険者はこの人とは少し付き合いがある……その時に私の父についての事を話した事もあったな。

「……そうですが……その個体は父の死から少し後にどこかの冒険者によって討伐された事が報告されています。この個体はついさっき生まれたばかりのティアマトの子であって、その個体とは無関係……この個体を殺した所で__」

「そう言う割にはお前、瞳孔開いてるぞ。」

    私は自分が至って冷静であるとイブさんにアピールしようとするが、彼女にはお見通しのようだ。
    彼女の言う通り、私は迸る怒りによって今にもグラン・ベヒーモスで脳死の突撃を繰り出してしまいそうだ。
    そんな事をすれば返り討ちにあう事は火を見るよりも明らかだ。

「グォォォォォォォ!!」

    そうこうしている間にグラン・ベヒーモスは拳を振り上げ、私達に攻撃を仕掛けようとしてくる。
    私はそれを回避する為に身構えるが……。

「穿孔戟徹」

ドギュウゥゥゥン!!

    イブさんが敵に手を向けてそう呟いた瞬間、グラン・ベヒーモスの腕は血飛沫を上げて吹き飛んだ。
    彼女の得意とする貫通と反射の魔術……それはどんなに重く鋭い攻撃をも反射し、どんな硬度の壁にも穴を穿つ魔術だ。
    正直、彼女さえ__

「私一人でなんとかなると思ってるか?」

「え……?」

    次の瞬間、イブさんは私の事を見透かしたような事を呟き、私は動揺してしまった。

「穿孔戟徹・二重」

ドギュギュン!!

「グァァァァァァァ!!」

    イブさんは変わらず冷静な態度で魔術を発動し、今度はグラン・ベヒーモスの左腕と右脚を破壊した。
    そうだ……そんな事ができる人間に補佐をする人なんてものはいらないはず……。

「私は特級冒険者です……しかし、貴方と比べてしまえば……。」

「だったら、何で私はお前達を鍛えたと思う?貴重な時間を割いてまでな。」

    イブさんの質問を聞いて、私は気付かされた……私の存在意味を。
    私が炎を使える……いや、炎しか使えない私の価値を……。

「見ろ。」

「……!」

    イブさんにそう言われてグラン・ベヒーモスを見てみると、なんと敵の破壊されたはずの両腕、右脚が少しづつ再生していたのだ。
    
「そんな……グラン・ベヒーモスに瞬時に傷を治す治癒力は無いはず……それも四肢の欠損となれば尚更無理な話だ……。」

「奴はティアマトの子だが……レンめ。複魂転生(ふっこんてんせい)をしたな。人の魂をいくつも繋ぎ合わせて1つの巨大な魂にすれば、脅威的な治癒力を得る。」

    イブさんによると、グラン・ベヒーモスは複数の魂を捏ねくり合わせて1つの巨大な魂として生み出されたらしい。
    私はティアマトの子だが、私の魂もその為に利用されていた可能性があるかもしれなかったと考えると、恐ろしい事だ……。

「グォォォォォォォ!!」

    そうこうしている内に敵は完全に破壊された両腕と右脚を完治させた。
    イブさんが言いたい事がなんとなく理解できた気がする……それが私の存在理由なんだ……。

「奴の肉片を1ミリも残さず焼き尽くせ。その為のお前の炎だ。」

「……はい!!」

    イブさんの言葉を聞いて、私は自分の存在理由の確信を掴んだ気がした。
    私はこの炎で敵を焼き尽くす……不死身、不滅、そんなものはこの私の前には存在しない……何故なら私が総てを焼き尽くすからだ……!

「爆躍!」

    私は自らの心臓の鼓動を一時的に早める魔術「爆躍」を発動し、全身に熱く迸る血を巡らせる。
    私の身体から蒸気が吹きでて、さらに私が持っている2本の剣に炎を帯びさせる。
    片方は私が愛用している剣で、もう片方は昨日の作戦会議の際、リョータロー君が私に貸してくれた「浄魂の剣」だ。
    これは剣士である私が持っている方が有効活用してくれると、彼は言ってくれた。

     彼の想いと、これを作ってくれたヒトミさんの想いに応える為に、私はグラン・ベヒーモスを討つ……!

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