異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

105話「闘獣、生誕」

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    俺はマリーネ、イブさん、仁美さん、ソレイユさんと共に王宮の敷地内にある闘技場に案内された。
    この北の国アトラでは新しいルールや法律を作る時、国の方針を決める時、その他色々そういう事をやる時に「決闘」をするみたいだ。

    それを決めるかどうかの決闘ではなく、決めた上でそれが上手くいく事を神様に祈る為の決闘?みたいな事らしい。
    今回だと「秘密兵器をアンドレイ陛下から俺達に譲渡する事を決めて、影の一味との戦いが上手くいく事の祈願」の決闘みたいだ。

「突然こんな提案をしてすまないね。」

「いえ、決闘はこの国では神聖な儀式なのですよね?郷に入っては郷に従えという言葉があるので。」

「王国アストレアにはそんなことわざがあるのかい?」

「い、いえ……お……自分の故郷の言葉です。」

     俺は国王のアンドレイ陛下の質問に一人称を間違えそうになりながらもそう返す。

「君の得意で戦ってやろう。剣でも槍でも好きなものを使うといい。」

    そこに俺が戦う相手のブレイさんが木剣を携え、俺が使う為と言って木剣や木製の槍を持ってきた。
    得意で戦え、か……じゃあこの姿で戦ってもいいのだろうか……と考えつつ、俺は変身ポーズを構えてゴーレムの姿に変身する。

「血鬼変動!」

ギュイィィィン……!

「ひ、人がゴーレムに!?」

「おぉ~、君面白いね。人がゴーレムになるなんて……。」

    俺がゴーレムになったのを見てアンドレイ陛下もブレイさんも驚いた表情を浮かべる。
    初めて見る人のリアクション久しぶりに見た気がする……。

「自分はこれでいきます……よろしいでしょうか?」

「問題ない。ゴーレムとの戦い方も熟知している。その姿なら頭を飛ばしても死なないのかな?」

「はい。多分戦闘不能の状態になったら元の姿に戻るだけだと思います。」

「分かった。それなら遠慮なく本気を出せるな。」

    
    ブレイさんは俺がゴーレムの姿で戦う事を許してくれた。
    という事で、フィールドの中に俺とブレイさんは一礼してから入り、俺達の試合を陛下直々に審判してくれる事になって、マリーネ達は俺の応援をしてくれた。

「リョータロー君!頑張って!」

「頑張ってください!」

「頑張れよ!」

「う、うん!」

    俺はマリーネと仁美さん、ソレイユさんの応援に手を振って応え、戦闘態勢に入る。
    ブレイさんも木剣を構えて……というか、構えてるだけなのに凄い気迫だ……もしかしてこの国で一番強い……的な人なのかな……。
    そう考えている内に陛下が決闘開始の合図をする。

「決闘……開始!」

   ダンッ!

    次の瞬間、ブレイさんは勢いよく地面を蹴り、ひとっ飛びで俺の間合いまで急接近する。
    攻撃がくる……でも……!

「はぁッ!」

「ッ!」

    俺は首を狙ったブレイさんの木剣の突きを白刃取りで受け止め、そのまま反撃の回し蹴りを相手に叩き込む。

「でやぁ!」

「ぐ……ッ!」

    ブレイさんは俺の回し蹴りを受けるもガードの体制でそれを受け止め、その場からビクとも動いていない。
    なんて頑丈な人なんだ……けど……!

「パージ!」

    俺は相手に受け止められた右足をパージして切り離し、身体がバランスを失って前に倒れようとするが……その勢いを利用して右手に魔力のオーラを纏わせたパンチを繰り出す。
    トーゴがやっていた事の真似事だけど……!

「喰らえ……鬼拳(きけん)!!」

「ッ……!!」

    勢いに任せて繰り出した拳撃「鬼拳」をブレイさんは防御魔術「メタルシールド」で受け止めるも、衝撃は殺し切ることができず彼は後方に吹っ飛んだ。
 
「なんて威力……!」

「リョータロー君あんな技を使えるようになったのね……!」

    俺を応援しているマリーネと仁美さんはそう呟く。
    見よう見まねの技だから、トーゴが磨き上げた技に比べれば甘いところはあるけど、今はこれで十分__

「そこまで!」

「え?」

    次の瞬間、陛下が決闘終了の合図をした。
    まだ始まったばかりなのでは?と思いつつ対戦相手のブレイさんを見てみると……彼は木剣を持っていなかった。
    彼は俺の攻撃を防ぐ為に木剣を手から離していたのだ。

「私が木剣を手放してしまったからこの決闘は君の勝ちだ。」

「やったわねリョータロー君!」

「おめでとうございますリョータローさん!」

「……そもそも、第1撃を止められた時点で私の勝率はだいぶ落ちていた。確実に討ち取るつもりで攻めたのだが……それを止める君の手腕、見事だ。」

    マリーネと仁美さんは俺の勝利を喜び、ブレイさんは俺の腕前は見事なものだと褒めてくれた。
    確か……褒められたら「まだまだ」「こんなもので」と謙遜するよりも……褒めてくれた人に感謝して、褒められた事を素直に喜ぶ方が褒めた側も気持ちいいっておじいちゃんが言ってたよな……。

「あ……ありがとうございます!」

    俺は変身を解除し人の姿に戻った後、ブレイさんとマリーネ達に頭を下げ、元気な声でそう言った。
    
「ではアンドレイ陛下。秘密兵器は私達のもの……という事でよろしいですね。」

「あぁ。ビャッコから聞いてるかもしれないが……ここから東南にあるフリーゼル山にそれはある。気をつけて取ってくるんだよ。」

「ありがとうございます。あれは私達の手で有効活用してみせます。」

    イブさんは自分達に秘密兵器を譲渡するという胸の言質を改めて陛下から得て、その翌日、俺達はフリーゼル山へと向かう事になった__



「……転生……!」

    神の間……仁美がいなくなり、そこにたった1人でいる闇のティアマト、蓮は無数の光の玉……即ち魂を1つの塊にして、地上に産み落とす。

    巨大な光の玉と化した光の玉は蓮の一言によって異世界へと落ちていく。
    それが向かった先は王国アトラ。
    フリーゼル山へと向かう良太郎一行の前にそれは生まれ落ちた……。



ファァァァァ……

「魔法陣!?」

「ティアマトの子だわ……!!」

「蓮さん……私達の行く手を幅もうと……!!」

    フリーゼル山へと続く荒野を進む俺達の前に突然魔法陣が現れた……!
    あと10キロ程でフリーゼル山なのに……一体どんなモンスターが現れるんだ……!?
    俺……と多分皆がそう考えていると、魔法陣の中からそのモンスターはついに姿を現した。

「グォォォォォォォォ!!」

    魔法陣の中から現れたそのモンスターは……大きすぎる……!
   20メートルはあるんじゃないか……!?
   巨大な2本の角が特徴で、牛が二足歩行で立っているみたいなこのモンスターは確か……

「ベヒーモス……?」

「いえ!これはその中でも特に凶暴な個体……グラン・ベヒーモス……!!」

    俺がその名前を言おうとした直後、ソレイユさんが鬼気迫る表情でその名前を呟き、その後から仁美さんが名前の訂正をする。
   グラン・ベヒーモス……一体どれ程恐ろしいモンスターなんだ……!?
  


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