異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

99話「悩み、その果てに…」

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    俺達の前に現れたのは、自らをティアマトの子と名乗る「ジェネラルオーク」……俺達は王国アトラへ行かなくてはならない……だから立ち塞がる敵は倒す!

「穿貫戟」

    イブさんは即座に穿貫戟を発動し、ジェネラルオークの両腕に小さな穴を開ける。
    けど、先程オークの群れにやったように腹部に大きな穴を開ければいいのでは……?
   
「イブさ__」

「この魔術は私が狙った場所に穴を開けられるような便利な魔術じゃないんだ。弱い奴になら弱点に穴を穿ってくれるが、ある程度強い奴にはどうも狙いが逸れる。」

「でも……ダメージを与えてくれるだけありがたいです!」

    マリーネはそう言うと魔杖サバーニャの形状をアタックモード・クロスジャベリンへと変化させ、それによって敵に近接攻撃を仕掛けようと飛び出す。

「コシャクナ……!」

    ジェネラルオークは腕が痛いはずなのに、それをものともせずマリーネに向けて戦斧を振り下ろす。
    だがマリーネは敵から見て右側に回避してその強力な一撃を回避し、イブさんが敵に空けた腕の穴目掛けて攻撃を繰り出した。

「アイススラッシュ!!」

グサッ!

    刃に氷のオーラを纏わせた一撃はジェネラルオークの腕に空いた穴に直撃し、それを喰らったジェネラルオークは危機を察知し後方に飛び退いた。

「ヌゥ……!!」

「どう!?今の一撃は!!」

「……マダマダァ!!」

    だけど敵は即座に耐性を立て直して地面を強く蹴り、マリーネに急接近する。
    マリーネは急接近してきたジェネラルオークに対応できないかもしれない……そう感じた俺はウイングユニットを呼び出し、それによってマリーネの身を守る事を決意する。

「ウイングユニット!!」

    俺がそう叫ぶと空からウイングユニットが飛んできて、それが盾となってジェネラルオークがマリーネに接近する事を阻んでみせた。
    そして次は反撃だ……!

「行け!!」

    俺は右手を前に突き出しウイングユニットを動かし、その4つの砲口からレーザーを射出して敵に連撃を仕掛ける。
    敵を確実に倒す為に容赦はしない……狂死郎と初めて出会い、彼がティアマトの力で呼び出したティアマトの子を倒す事を俺は躊躇ったけど……今度はそうは行かない!
    あれが人の命の成れの果てと言うのなら……殺す事が魂の解放になるのなら……!

ドシュッ!ドシュッ!

「グゥゥ……!!」

    何発ものレーザーを身体中に受けて呻き声をあげるジェネラルオーク。
    そして俺はトドメを刺すべく必殺の一撃を敵に喰らわせる……!

「ボイジャーズ・ストライク__」

「__タスケテ__ダレカ__」

「!!」

    この場にいる全員がその声を聞いて、驚きを隠せなかった。
    先程までの猛々しいジェネラルオークの声じゃなく、まるで弱々しい男性の声で、俺達に助けを求めるように敵は語りかけてきた。

「今の声は……!」

「……闇のティアマトめ……。」

「あれが……ティアマトの所業なのか……?」

「ッ……ボイジャーズ・ストライク!!」

    俺がいた世界に住む誰かが、闇のティアマトの力でジェネラルオークに変えられたんだろう……闇のティアマトは俺の心を揺さぶる為にこんな悪どい事を思いついたのか……いかにもあの男らしい事だ……。
    それでも俺は、世界を守る為に戦う!相手がなんだろうと……!

    俺はボイジャーズ・ストライクを発動し、4つのウイングユニットの中央から放たれる光線によってジェネラルオークの身体を1片残すこと無く焼き払った。
    その場に残ったのはイブさんが倒したオーク達の死骸だけ……俺達はオークの襲撃をなんとか乗り切ったんだ。
    そう確信した俺は変身を解除し、鬼人の姿に戻る。

「……」

「リョータロー君……その、私いつかリョータロー君と約束したわよね?リョータロー君はモンスターとゴーレムの相手をして、影の一味の相手は私達に任せてって。」

「……うん。」

「でもリョータロー君は、この前はセンジュと戦って……今回は……元々人間だったはずの命を……。」

「よせマリーネ。良太郎は良太郎なりに覚悟を決めたんだ。」

「でも……悲しいじゃない……人の命は……他の何にも変え難いものなのに……リョータロー君にそんな事やらせるぐらいなら__」

「心配してくれてありがとう、マリーネ。でもいいんだ。俺は何としても闇のティアマトと狂死郎を止めて、こんな事は続けさせないって決めたから。」

    涙を流しながら俺の事を心配してくれたマリーネに、俺はそう言ってあげる事しかできなかった。
    俺は子供の頃ヒーローに憧れて、人を助けたいと思って、今こうして世界を支配しようとする敵と戦っている。
    マリーネ達もその敵と戦っているっていうのに、俺だけ違うとはいかないから……。

「うぅ……っ……」

「マリーネ……。」

「コイツはお前の代わりに泣いてやってるんだよ。」

「え?」

「お前、泣いてねぇだろ。」

    イブさんは全てを見透かしたかのような表情で俺にそう言う。
    ……確かにそうかもしれない。
    今の俺は……正義のヒーローを演じている今の俺は泣いてる暇なんか無いんだって、無意識の内に思っているのかもしれない。

    これが、幼い頃から俺が夢見てたヒーローの姿か?
    自分の胸に手を当ててそう考えた。
    この疑問に対する答えは見つかるのだろうか……。

「リョータロー君。王国アトラの王都はだいぶ先だ。それまで馬車の中で私の話を聞いてくれないか?君の悩みに対する答えの足がかり……になるかは分からないが……。」

「ソレイユさん……?」

    その時、ソレイユさんが俺にそう語りかけてきて、俺は彼女の顔を見つめる。
    自分の話を聞いて欲しい、というソレイユさんのお願い……俺はそれを聞くべきだと思った。

「お……お願いします。」

    そこから馬車は再び王国アトラへの道を進む事を再開し、俺は道中でソレイユさんの過去の話を聞く事になる……。






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