異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

98話「蛮獣、荒ぶる」

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    リョータローの旦那達が王国アトラに行く前日、俺はギルドのクエストボードであるクエスト依頼書を見つけた。
    なんの変哲のないごく普通のクエスト依頼書だったんだが……

「アストレア北部に現れたオークの群れの討伐か。報酬金はいい額してるな……これ受けようかな~。」

「ガオレオ、クエストを受けるつもりか?」

「あ?ソレイユか……。」

    そこにソレイユが現れて俺に声をかけてきた。
    こいつ、確か北の明日王国アトラに行くんだよな?

「なぁお前、明日王国アトラに行くんだろ?影の一味と戦う為の秘密兵器を取りに行く為に……昨日の特級冒険者会議でそう話してたよな?それについて気をつけるべき事が……」

「あぁ。影の一味はきっと私達を妨害してくるだろう。」

「そうじゃなくてよ、これ見てくれ。」

    俺はそう言いながらソレイユにクエストボードに貼られてるオークの群れの討伐クエスト依頼書を見せる。

「……北部か……それも王国アトラに行くには絶対に通らなければいけない道のすぐ傍とは……。」

「気ぃつけろよ。お前にとっちゃオークはそんな脅威じゃないかもしれないが、万が一こいつらのボスが危険度大竜レベルのモンスター「ジェネラルオーク」だとしたら、リョータローの旦那は……。」

「問題ない。私達の元に帰ってきたリョータロー君の目を見て私は確信した……彼は前とは格段に違う存在になったのだとな。」

「……お前がそう言うなら良いんだけどよ。とにかく秘密兵器とやらは俺もどんな物かこの目で拝みてぇからよ、お前らが帰ってくるの待ってるぜ!」

「あぁ、待ってろ。」

    ソレイユは自信に満ちた表情で、秘密兵器を必ず持ち帰ると宣言した。
    俺と同じティアマトの子であるセリエやコイツと長いこと一緒に戦い続けてきた俺から言わせれば、ソレイユには自信に見合う程の実力がある。
    コイツの燃えたぎる炎の剣に、倒せない敵はいねぇ……



「血決変動!!」

    俺は即座にゴーレムの姿に変身し、マリーネ達の戦闘に加勢する。
    相手は緑色の肌と筋骨隆々の肉体が印象的なモンスター、オーク……その群れだ。

「グォォォォ!!」

「とりゃあっ!!」

    俺は地面を強く蹴り、狙いを定めたオークとの距離を詰めて勢いよく拳を振り下ろす。
    その一撃はオークの頭部に直撃し敵は気を失った。

「フレイムランス!!」

「蛍火!!」

「サンダーランス!!」

    マリーネとソレイユさん、ヒトミさんも怒涛の攻撃を繰り出しオークを次々に倒していくけど、オークは次々に現れ倒しても倒してもキリがない状況が続いてしまう……。

「グォォ……!!」

「グォアア……!!」

    この状況をどうやって切り抜けるべきか……俺もマリーネもそう考えていた時、イブさんが俺達の前へと歩いていき、オーク達の前に立ちはだかった。

「お師匠様……!!」

「イブさん!!」

「……穿貫戟。」

    イブさんがそう唱え、指をパチンと鳴らした瞬間……無数のオークの腹部に大きな穴が開けられ、全てのオーク達はそこから血を流して地面に倒れ伏した。

「……なんて力なんだ……!」

「流石お師匠様!」

「ざっとこんなもんだ。」

    さっきまで俺達を苦しめていたオークは、イブさんたった一人に全滅させられた。
    こんなに強いイブさんに加えて、ソレイユさんだっているんだ……きっと秘密兵器を回収するのだって簡単に済む話……おれがそう思っていた時……

「全員、身を守れ!!」

    イブさんが声を荒らげて俺達に咄嗟に指示を出す。
    何事かと一瞬戸惑ったが、俺は戸惑いつつもウイングユニットを呼び出しそれによって身を守る。
    その直後、まるで地震でも起きたかのような強い衝撃が辺り1面に炸裂し、そこら中に土埃が舞い散った。

「リョータロー君!!ソレイユさん!!無事!?」

「私は問題ない!!」

「俺も!!一体何が……!?」

    俺達は互いに安否確認を行い、それぞれの無事を確認できたのだが……土埃が晴れ、衝撃の中心地に「それ」がいる事を目視で確認できた。
    先程のオークよりも一回り大きく、一対の角が生えていて、尚且つ巨大な戦斧を両手で担いでいる。
    あれは……オークの親玉的なやつなのか……!?

「ニンゲンヨ!!」

「喋った!?」

「ワレハ、イノチノカミ「アニマ」ニヨッテ、イノチヲサズカリシ……「ジェネラルオーク」デアル!!」

「アニマ……!?」

「ティアマトの事か……。」

「つまりティアマトの子という訳か。」

    ジェネラルオークと名乗るその巨大なオークは自らをティアマトの子であると語った。
    ティアマトの子……つまり、狂死郎が前言ってた事が正しければ……俺と同じ世界から来た人間の生まれ変わり……!!

「俺達は既に彼の仲間を何匹も殺した……彼も倒すしかないのか……!!」

「リョータロー君……嫌なら私達に任せて__」

「いや、俺もやる……!!彼に人間としての意識がもう無いなら……人の命がもつ既にモンスターに染まりきっているのなら……俺達の手で倒して、その命を眠らせる!!」

「……ならやるわよ!!ソレイユさん!!お師匠様!!4人でこのモンスターを倒しましょう!!」

「あぁ。」

「任せろ。」

「やってやる……!!」

    俺達はオークのボス、ジェネラルオークを見据え戦闘態勢に入る。
    秘密兵器を回収する為の道を阻む敵を倒し、先へ進まなければ……!!

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