異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

94話「ゴーレム、爆ぜる」

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    王都は再び影の一味の攻撃を許してしまった。
    でも、今の俺は前とは違う……目の前に立ち塞がる新たな敵ゴーレムと再び現れた大型竜シャドーロード、この2体を倒す、俺の手で!

「グォアァァァァァ!!」

    シャドーロードは俺を敵と認識するやいなや背中の棘を飛ばし俺に攻撃を仕掛ける。
    あの鋭い棘を捌き切るのには特級冒険者のセリエさんも一苦労してたな……多分前の俺だったら簡単にやられてたと思う。
    けど、俺の中の鬼人の本能さんと俺自身の力で……この攻撃を耐え抜く!

「ふんっ!」

    俺はまず最初に自分に飛んできた棘を後方バク転で回避し、さらに立て続けに飛んでくる無数の棘を機敏な動きで回避する。
    名付けて「必勝機動!エモーショナル・ハイマニューバ」!
    ただ攻撃を避けるだけだけどね!

ギュギュギュン!

「っ!!」

    その時、敵ゴーレムが俺に向けて魔弾を発射して攻撃を繰り出してきて、その魔弾は先程シャナとの戦いでやったように、鬼人の本能さんによるウイングユニットのオートガードで対応する。
     先に面倒な方を倒すべきなのは当然の事だけど、シャドーロードも敵ゴーレムも飛び道具持ちで厄介だ……なら、恐らく近接攻撃の手段が無いであろう……敵ゴーレムを倒す!

    俺はそう決断すると、地面を強く蹴って敵ゴーレムまで急接近する。
    その隙に飛んでくるシャドーロードの棘伸ばし攻撃はウイングユニットで防ぎ、敵ゴーレムとの距離を確実に詰めていき、俺は敵ゴーレムをバーニングソードで斬り倒せる程の間合いに入った。

「くらえ___」

   俺は燃え盛る剣を構え、1太刀の元に敵ゴーレムを倒そうとした……のだけど……

「EMc!EMc!EMc!EMc!」

「え?」

「d……a……@……0!」

ドォォォォォォォン!!

    一瞬、頭の中が真っ白になって、キィィィィィン……と耳を劈くような音が鳴り響いた。
    それで気がついたら、俺の上半身は破壊された拘置所の瓦礫の中にめり込んでいた。

「……っは!」

    俺はすぐさま意識を取り戻し、瓦礫から上半身を引き抜いて辺りを確認する。
    そこではマリーネとリコが滞空しながら標的に攻撃を仕掛けるシャドーロードを相手に戦っており、敵ゴーレムは上半身が破壊されていてもう動きそうには無かった。

「まさか……自爆!?」

    俺がほんの一瞬気を失う直前に見たのは、敵ゴーレムが内側から破裂する所だった……まさか自爆攻撃を仕掛けてくるとは……俺がゴーレムだったから良かったけど、元の姿であれを喰らっていたら危なかったかもしれない……!
    気絶したのは多分、本能的に死の恐怖を感じ取って、おったまげて気絶したんだろう。

     戦いに慣れたとは言え、あんなこと(自爆)をやられたら誰だって怖い。
     それはそうと、敵ゴーレムはもういなくなった……あとはシャドーロードだけだ。
    俺自身が気絶してしまうと鬼人の本能さんのオートガードが使えなくなるのだろうか……。

「リョータロー君!!大丈夫!?」

「大丈夫!!ここから逃げた悪い人達と怪我をした人達は!?」

「悪い人達は全員捕まえて、怪我をした人達も回復魔術で治癒したわ!!」

「ありがとう!俺もマリーネ達の手伝いをするよ!」

「無理しないでね……!」

    俺はマリーネの元に近づき、リコも合わせた3人でシャドーロードをなんとかする事を決める。

「グォアァァ!!」

「ぐっ……!!」

    シャドーロードは尻尾のなぎ払いをリコに繰り出し、リコは防御魔術「メタルシールド」で身を守る。
    さらにシャドーロードは口を開けて黒いオーラを溜める動作をしたが、俺はリコを守る為に前に飛び出す。

「リョータロー!!」

「ここは任せて!!」

「ゴァァァァァァ!!」

    そしてシャドーロードの口から禍々しい魔力の塊が放たれ、俺はそれに対して必殺の攻撃で迎撃する。

「ボイジャーズ・ストライク!!」

    4つのウイングユニットを十時状に配置し、その中心から光線を放つボイジャーズ・ストライク。
    これを敵の魔力の塊にぶつけて押し返し、あわよくばシャドーロードにダメージを……という算段だ。
    センジュにもダメージを与えた必殺の一撃……これなら……!

「ゴァァァ……!!」

ドゴォォォォ

    俺の予想通り、ボイジャーズ・ストライクはシャドーロードが放った魔力の塊を押し返し、さらに光線が敵に直撃しダメージを与える事ができた!

「グォアァ……!!」

   だが完全に倒し切るには至らなかった。
   ボイジャーズ・ストライクは一撃で敵を倒し切るレベルに磨きあげる必要があるな……特訓でもした方が良いのだろうか。
    なにそれ少年漫画?

    と考えている隙も与えず、シャドーロードは先程の魔力の塊を小さくしたようなものを自身の周りに浮かび上がらせ、それをマシンガンのように連発してきた。

「サンダークライシス!!」

「セブンスフレイムバレット!!」

    だが俺も、もちろんマリーネとリコも臆する事無く即座に防御をする事によって身を守る。
    マリーネは杖の先端から無数の電撃を放つ雷属性の強力な魔術、サンダークライシスによって、リコは7つのフレイムバレットを同時に放つ強力な魔術、セブンスフレイムバレットによって敵が放った全ての魔力の塊を撃ち落とす事に成功した。

「さぁリョータロー!リコ!シャドーロードを倒すわよ!」

「うん!」

「えぇ!」

    俺達はシャドーロードとの戦いにケリをつける為に、本気で敵を倒しにかかる。
    この街を守る為に……!



「リュウカ、僕達を裏切るのかい?残念だね……。」

「……!!」

    影の一味のアジト、そこでリュウカはシャナのゴーレムに押さえつけられ、狂死郎に見下されていた。
    リュウカが影の一味を抜ける事は、狂死郎にとって許し難い事だった。
    1度影に生まれた者は正しい道に戻らない、狂死郎はそう考えていたからだ。

「これを食べさせる事になるけど、良いかな?」

「……約束してください……!」

「ん?」

「これ以上……捕虜にしたルスタ村の人を……喰わないと……!」

    リュウカの言う通り、狂死郎は空腹を満たす為にルスタ村から攫った村人達を食していたのだ。
    そうしなければ保たない命、それが鬼人族、それが狂死郎なのだから。

「……良いよ。」

「……!」

「もうルスタ村の人達は喰わない。」
 
「本当ですか___」

    狂死郎はリュウカにそう言った直後、闇のティアマトによって生み出した植物に実った果実を彼女の口に押し込んだ。
    それを飲み込んだリュウカは気を失ってしまう。

「食べた者は鬼人の忠実な下僕になる果実……こんな物も作れるなんてね。」

「次はどうするんだ?リーダー。」

「私はもっとたくさんの人達のカワイイお顔が見たいわ~!」

「そうだね……」

   センジュとシャナから命令を催促された狂死郎は、邪な笑みを浮かべた後、2人に指示を下す。

「もっと多くの人を喰う。次の標的は……王都アストレアの住人全てだ……。」

    世界を支配し、人間を食糧にする為、狂死郎は歩みを止めない……。





    
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