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第3章<怪物と少女>編
85話「鬼人、対峙する」
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俺の必殺の一撃、ボイジャーズ・ストライクを受けたセンジュは吹き飛ばされ、壁に身体を打ち付ける。
これで倒す事ができていれば良いんだけど……。
「やるわねリョータロー君!ところで、ボイジャーズ・ストライクってどういう意味なの?」
「えっと……宇宙を探査する船の事をボイジャーって言うんだけど、ウイングユニットをそれに見立てて……的な事だよ。」
「へぇ、良い技名ね。」
俺はマリーネの質問にそう返しつつセンジュの方を見てみたのだが……そこには彼女の姿が無かった。
確かについさっきまでそこにいたはずなのに……その時、俺の神経が危機を察知しその場から飛び退く。
「リョータロー君?」
「マリーネ!!センジュはまだ___」
俺が急に動いた事に困惑するマリーネ。
咄嗟に身体が動いてしまったので、マリーネにも危機が及ぶかもしれないとは考えるに至らなかった。
それが俺のミスだった……。
「はいおしまい。」
「マリーネ!!」
センジュは俺とマリーネの背後にいた。
彼女はマリーネの肩を強引に抱き寄せ、俺に手を向けてサンダーバレットを連射してくる。
イブさんは……!?そう思い彼女の方を見てみると、なんとそこにはイブさんが倒れていたのだ。
それに加えて、センジュは金色のオーラを纏っている……前にトーゴを倒した時に使った強化形態、雷神具猛怒か……!!
「イブさん……センジュに……!?」
「あの女、不意打ちでやられちまうとは案外弱いじゃねぇか……これで形成逆転だ。マリーネちゃんは俺の愛玩動物にでもしてやろうか……クヒヒ……!!」
「ぐ……ッ!!」
「おっと動くなよ!その羽を動かしたら、イブとやらにかけた魔術、スタンサンダーの威力を強め、感電死させる。」
センジュはそう言って脅しをかけ、俺の攻撃を許さないつもりだ。
一体どうすればこの状況を切り抜けられるか、俺は必死に考えるも俺1人では何もできない……!
「よくもお師匠様を……!!」
「あんなのが師匠か……どうりでマリーネちゃんもよえー訳だ……クヒヒ!」
マリーネの言葉に、彼女を挑発するような言葉で返すセンジュ。
一体どうすればこの状況を抜け出せるのかは未だ分からない……もう諦めるしかないのか……そう考えたその時。
「悪かったな、「あんなの」で。」
「!?」
その瞬間、俺が僅かに俯いたその一瞬、気がついたらセンジュの首元に宙に浮く4つのダガーが突きつけられていた。
一体誰が……というか、今の声は……!
「お前……!!」
「お師匠様!!」
「え……え!?」
センジュもマリーネも、俺の方を見てそう呟く。
何がどうなって……そう思いながら振り向くと、そこにはイブさんが立っていた。
だけどイブさんはさっきまで倒れてて……と思い、彼女が倒れていたはずの場所を見てみると、そこには誰もいなかった。
「馬鹿が!死ね!」
センジュは怒りに満ちた表情で掌をイブさんに向け、ゆっくりと指を閉じていく。
さっき言ってたスタンサンダーの威力を上げているのか……?
「できるかな?」
「何ッ!?」
イブさんの挑発に困惑しつつもセンジュはスタンサンダーの威力を上げていき、イブさんの身体は電撃で覆われその電撃が彼女を襲う。
だけど何故か……イブさんは全くなんともないみたいだ。
普通に立っていられてるし……。
「イブてめぇ……なんなんだ、お前の力は……!」
「私が得意とする魔術は……「リフレクト」そして「ピアス」だ。リフレクト、言わば反射を操る事であらゆる物を身体から反射する事ができる。
そしてピアス……言わば貫通はあらゆる物を刺し貫く。お前の首に向けられたダガーがそれだ。よく私が攻撃を受けたフリしたのに騙されておいて、私の事を「あんなの」呼ばわりできたもんだ。」
イブさんはセンジュに自分の得意な魔術を説明する。
なんて強い魔術なんだ、と僕は思ったし、センジュもきっとそう思っただろう。
「テメェ……!!」
「マリーネを離して城から出ていけ。」
「ッ……しゃあねぇ、そうするよ。」
センジュは自分ではイブさんに勝てないと悟ったらしく、マリーネを自分の手から離し、その場から後ずさりした。
「命が惜しいか。散々人を殺しておいて。」
「まぁな。私はティアマトの子だ。特別な存在なんだ。私が殺してきた有象無象とは訳が違うんだよ。」
「母親から生まれるかそうじゃないかの違いだろ!人の命は皆特別なんだ!」
俺は思わずイブさんとセンジュの会話に割って入り、センジュの言葉を否定する。
あんな事を言うセンジュにどうしてもそう言いたかったからだ。
「ぬかせよガキが……私は、いや……私達は特別だ。人間を支配すると言う理念の元動いている。ただダラダラと生きていければ良いなとか思ってる有象無象とは違うんだよ。」
「キョーシローがお前にそう教えこんだのか!?」
「そうだよ。ティアマトの子は神から直接生まれた特別な存在。」
その時、レイキ城の中からそう言いながら現れたのは……センジュを従える存在、狂死郎だった。
あいつもここに来ていたのか……!なら、ヒトミさんが言ってた「あれ」を確かめる必要がある……!
「キョーシロー!お前がその邪悪な心で、闇のティアマトを洗脳したんじゃないのか!」
「……あの嘘つきの女がそう言ったのかい?」
「嘘つきだって?」
「僕は邪悪なんかじゃない。本能に従って生きてるだけだ。人間がそうであるようにね。その結果人間とは相容れない存在になったのが鬼人族さ。君だって野原林檎を喰ったじゃないか。
一命を取り留めたとは言え、彼女は深い傷を一生引きずる事になってしまった。君にとって僕は酷い奴に見えるかい?でもね、野原林檎の親族からすれば君だって__」
「リョータロー君が!!悪意を持ってそんな事!!する訳ないじゃない!!」
狂死郎の言葉を妨げるかのようにそう言うマリーネ。
彼女の目には強い心が宿っているように俺には見えた。
俺の事を守る為にそう言ってくれたのか……。
「良い友達を持ったね、良太郎君。」
「そうだ、大切な友達だ。世界を支配して人を食糧にしようと考えているお前とは違う!」
「言うねぇ……。」
「で、話をはぐらかしたつもりなんでしょうけど、貴方はヒトミさんを洗脳してるの?」
マリーネの質問に、狂死郎は少し考えた後こう答える。
「僕の心にあてられて彼はああなった、と言えるね。心が弱いからああなってしまった……そう言う事さ。」
狂死郎は悪びれる様子もなくそう口にする。
「狂死郎……よくも!」
これが狂死郎の嘘偽りない本性……底知れない闇なのか……!
こいつだけは絶対に倒さなくてはならない、俺はそう決意し拳を握りしめる……。
これで倒す事ができていれば良いんだけど……。
「やるわねリョータロー君!ところで、ボイジャーズ・ストライクってどういう意味なの?」
「えっと……宇宙を探査する船の事をボイジャーって言うんだけど、ウイングユニットをそれに見立てて……的な事だよ。」
「へぇ、良い技名ね。」
俺はマリーネの質問にそう返しつつセンジュの方を見てみたのだが……そこには彼女の姿が無かった。
確かについさっきまでそこにいたはずなのに……その時、俺の神経が危機を察知しその場から飛び退く。
「リョータロー君?」
「マリーネ!!センジュはまだ___」
俺が急に動いた事に困惑するマリーネ。
咄嗟に身体が動いてしまったので、マリーネにも危機が及ぶかもしれないとは考えるに至らなかった。
それが俺のミスだった……。
「はいおしまい。」
「マリーネ!!」
センジュは俺とマリーネの背後にいた。
彼女はマリーネの肩を強引に抱き寄せ、俺に手を向けてサンダーバレットを連射してくる。
イブさんは……!?そう思い彼女の方を見てみると、なんとそこにはイブさんが倒れていたのだ。
それに加えて、センジュは金色のオーラを纏っている……前にトーゴを倒した時に使った強化形態、雷神具猛怒か……!!
「イブさん……センジュに……!?」
「あの女、不意打ちでやられちまうとは案外弱いじゃねぇか……これで形成逆転だ。マリーネちゃんは俺の愛玩動物にでもしてやろうか……クヒヒ……!!」
「ぐ……ッ!!」
「おっと動くなよ!その羽を動かしたら、イブとやらにかけた魔術、スタンサンダーの威力を強め、感電死させる。」
センジュはそう言って脅しをかけ、俺の攻撃を許さないつもりだ。
一体どうすればこの状況を切り抜けられるか、俺は必死に考えるも俺1人では何もできない……!
「よくもお師匠様を……!!」
「あんなのが師匠か……どうりでマリーネちゃんもよえー訳だ……クヒヒ!」
マリーネの言葉に、彼女を挑発するような言葉で返すセンジュ。
一体どうすればこの状況を抜け出せるのかは未だ分からない……もう諦めるしかないのか……そう考えたその時。
「悪かったな、「あんなの」で。」
「!?」
その瞬間、俺が僅かに俯いたその一瞬、気がついたらセンジュの首元に宙に浮く4つのダガーが突きつけられていた。
一体誰が……というか、今の声は……!
「お前……!!」
「お師匠様!!」
「え……え!?」
センジュもマリーネも、俺の方を見てそう呟く。
何がどうなって……そう思いながら振り向くと、そこにはイブさんが立っていた。
だけどイブさんはさっきまで倒れてて……と思い、彼女が倒れていたはずの場所を見てみると、そこには誰もいなかった。
「馬鹿が!死ね!」
センジュは怒りに満ちた表情で掌をイブさんに向け、ゆっくりと指を閉じていく。
さっき言ってたスタンサンダーの威力を上げているのか……?
「できるかな?」
「何ッ!?」
イブさんの挑発に困惑しつつもセンジュはスタンサンダーの威力を上げていき、イブさんの身体は電撃で覆われその電撃が彼女を襲う。
だけど何故か……イブさんは全くなんともないみたいだ。
普通に立っていられてるし……。
「イブてめぇ……なんなんだ、お前の力は……!」
「私が得意とする魔術は……「リフレクト」そして「ピアス」だ。リフレクト、言わば反射を操る事であらゆる物を身体から反射する事ができる。
そしてピアス……言わば貫通はあらゆる物を刺し貫く。お前の首に向けられたダガーがそれだ。よく私が攻撃を受けたフリしたのに騙されておいて、私の事を「あんなの」呼ばわりできたもんだ。」
イブさんはセンジュに自分の得意な魔術を説明する。
なんて強い魔術なんだ、と僕は思ったし、センジュもきっとそう思っただろう。
「テメェ……!!」
「マリーネを離して城から出ていけ。」
「ッ……しゃあねぇ、そうするよ。」
センジュは自分ではイブさんに勝てないと悟ったらしく、マリーネを自分の手から離し、その場から後ずさりした。
「命が惜しいか。散々人を殺しておいて。」
「まぁな。私はティアマトの子だ。特別な存在なんだ。私が殺してきた有象無象とは訳が違うんだよ。」
「母親から生まれるかそうじゃないかの違いだろ!人の命は皆特別なんだ!」
俺は思わずイブさんとセンジュの会話に割って入り、センジュの言葉を否定する。
あんな事を言うセンジュにどうしてもそう言いたかったからだ。
「ぬかせよガキが……私は、いや……私達は特別だ。人間を支配すると言う理念の元動いている。ただダラダラと生きていければ良いなとか思ってる有象無象とは違うんだよ。」
「キョーシローがお前にそう教えこんだのか!?」
「そうだよ。ティアマトの子は神から直接生まれた特別な存在。」
その時、レイキ城の中からそう言いながら現れたのは……センジュを従える存在、狂死郎だった。
あいつもここに来ていたのか……!なら、ヒトミさんが言ってた「あれ」を確かめる必要がある……!
「キョーシロー!お前がその邪悪な心で、闇のティアマトを洗脳したんじゃないのか!」
「……あの嘘つきの女がそう言ったのかい?」
「嘘つきだって?」
「僕は邪悪なんかじゃない。本能に従って生きてるだけだ。人間がそうであるようにね。その結果人間とは相容れない存在になったのが鬼人族さ。君だって野原林檎を喰ったじゃないか。
一命を取り留めたとは言え、彼女は深い傷を一生引きずる事になってしまった。君にとって僕は酷い奴に見えるかい?でもね、野原林檎の親族からすれば君だって__」
「リョータロー君が!!悪意を持ってそんな事!!する訳ないじゃない!!」
狂死郎の言葉を妨げるかのようにそう言うマリーネ。
彼女の目には強い心が宿っているように俺には見えた。
俺の事を守る為にそう言ってくれたのか……。
「良い友達を持ったね、良太郎君。」
「そうだ、大切な友達だ。世界を支配して人を食糧にしようと考えているお前とは違う!」
「言うねぇ……。」
「で、話をはぐらかしたつもりなんでしょうけど、貴方はヒトミさんを洗脳してるの?」
マリーネの質問に、狂死郎は少し考えた後こう答える。
「僕の心にあてられて彼はああなった、と言えるね。心が弱いからああなってしまった……そう言う事さ。」
狂死郎は悪びれる様子もなくそう口にする。
「狂死郎……よくも!」
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