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第3章<怪物と少女>編
79話「<新章開幕>鬼人、起つ」
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鬼人としての元の身体を手に入れた俺は、この日からこの身体で生活していく事になる。
ゴーレムの身体も、それはそれで未知の体験的な感じで悪くなかったけど、こっちの身体だと美味しいご飯も食べられるし暖かいベッドで眠れるし、どっちが良いかと言われたらこの鬼人の身体の方が良いかな。
「「いただきます!」」
俺はマリーネと一緒に、彼女手作りの朝食を食べる。
ベーコンを乗せたパンと、その隣にある赤いジュースはなんだろう?
「マリーネ、このジュースは何?」
「トマトジュースよ。美容に良いって聞いたから、トマトをすり潰して作ってみたの。」
「そっか。」
それがトマトジュースだとマリーネに教えてもらった俺はコップを手に取ってトマトジュースを口にした。その瞬間……。
「……美味しい。」
「本当?良かったわ!」
俺はあまりの美味しさにそう呟いてしまったのだけど、実は俺、トマトジュースはあまり好きじゃなかったんだよなぁ。
でもこのトマトジュースはとても美味しいと感じる。
なんでだろう……そう思いながらそれをすぐに飲み干し、ベーコンの乗ったパンも食べ終えた。
「ごちそうさま。」
「おはよう。」
その時、家の奥の方からイブさんが姿を現した。
この人は昨日からこの家に居座る事になり、昨晩は物置部屋で寝泊まりをしたらしい。
「すみませんお師匠様、眠れる所が物置部屋しかなくて……よく眠れなかったんじゃないですか?」
「いや、ぐっすり眠れたぞ。私は基本どこでも眠れる。」
「それなら良いんですが……。」
「それより、朝食は食べ終えたか?」
「はい。今食べ終えました。」
「じゃあ歯磨きも早くしてこい。ヒトミを迎えに行くぞ。西の王国ディアーガにな。」
「はい!」
イブさんはリビングに来るなりそう言って俺達に早く出かける準備をするように促した。
そう、イブさんの言う通り今日はヒトミさんがこの世界に降り立つので、それを俺達は迎えに行く事になっている。
この世界を創造し、この世界に命を産み落としている神ティアマト。
その正体は世界の支配を目論む闇のティアマトと、闇のティアマトの……大切な人の暴走に心を痛める光のティアマトだった。
光のティアマト、ヒトミさんは闇のティアマトによってあの空間からこの世界に転移させられ、今日彼女はこの王国アストレアの西にある王国、ディアーガに生まれ落ちるらしい。
闇のティアマトは、「盤上に駒を揃えるため」そう言っていたけど、その真相は俺には計り知れなかった。
ただ、闇のティアマトと協力関係にあり、彼同様世界の支配を目論む鬼島狂死郎率いる「影の一味」はヒトミさんを殺そうとしてて、それに反して闇のティアマトはヒトミさんを殺しはせずこの世界への転移をした。
狂死郎と闇のティアマトは仲間なんだよな?じゃあ何故そんな事を……。
ヒトミさんは、闇のティアマトは「何か」に洗脳されてると言っていた……あくまで俺の考えだけど、「世界を支配したい」と言うのが「何か」の考えで、「ヒトミさんを影の一味の魔の手から逃がしたい」と言うのは闇の……いや「レンさん」の意志、って事なのだろうか……。
ダメだ、俺なんかには話のスケールが大きすぎて……。
「リョータロー君?」
「え?」
「なにか考え事でもしてるの?」
「い、いやなんでもないよ。」
俺はマリーネにそう聞かれ、とっさになんでもないと答える。
俺達は馬車に乗り、王国アストレアの西端を目指している。
西端にある国境関所を通ってディアーガに行くのだ。
「お前にはちょっと複雑な問題か?この世界を取り巻く問題は。」
「は、はい……。」
「その事考えてたの?なんでもなくないじゃない!」
「あ、ごめん……。」
「じゃあとりあえず、闇のティアマトは奴を洗脳してる「何か」から解放してやる、狂死郎ら影の一味はぶっ倒す、ヒトミは仲間として迎え入れる。これだけ頭に入れとけ。」
「は、はい。」
イブさんは俺にそう言い、そう考えるのが今の俺にとっては多少楽でいられるな、と俺は思いそうする事にした。
それと、気になった事がもう1つ……。
「イブさんは鬼人族について詳しい事は知ってますか?」
「ヒトミから聞いた範囲ではな。」
「じゃあ、何で俺は人をほとんど食わずに生きる事ができたんですか?他の鬼人族はそうじゃなかったんですよね?多分狂死郎も……。」
俺の質問に対して、イブさんはこう答える。
「お前の事はあっちから見ていた。鬼人族の末裔はお前が生きてた時点で全世界に3人いた。」
「3人?俺だけじゃなかったんですか?」
「あぁ。何せ鬼人の存在は秘匿事項らしいからな。1人はアメリカの、1人はドイツの施設で保護されている。その存在は一般には明かされていない。自由な生活を送れていた鬼人はお前だけだ、良太郎。日本のお国柄のお陰だろうな。」
「……2人の鬼人の人はどんな扱いをされてるんですか?」
「このご時世、人権を蔑ろにする奴は石を投げられる。鬼人族も人の形を保ってはいるお陰で人権は保証されている。だが制約は多いらしい。変わり映えしない部屋で食事は3食同じもの。会いに来る親族はいない。1日のほんどは自由な時間だが読書ぐらいしかやる事がない。たまになんか訳分からんことを言うカウンセラーの長話を聞かされて……それがその2人の現状だ。」
「そう……ですか。」
とりあえず酷い扱いを受けてはいないみたいだから良かったけど……その2人も俺のように自由に生きられないのかな……。
「まぁ殺されはしないと思うから安心しろ。国の機密事項だって覗き見る事ができる私が言うから間違いない。鬼人族愛護団体なる連中もいるからそう簡単には殺せないしな。お前はお前のやる事だけ考えろ。2人を解放してやりたいとか言うのは後でゆっくり考えればいい。」
「は……はい!ていうか、俺の事は……」
「すまない、話が逸れたな。お前は__」
「お師匠様!リョータロー君!関所が見えてきたわよ!」
「……あれは……。」
マリーネがそう言うので馬車の荷台から外を見てみると、遠くの方に大きな門があるのが見えた。
あれが関所か……俺にとって国を跨ぐのは2度目だな。
ディアーガではどんな事が起こるんだろう……それよりも先に俺の事をイブさんに聞かなくては。
ゴーレムの身体も、それはそれで未知の体験的な感じで悪くなかったけど、こっちの身体だと美味しいご飯も食べられるし暖かいベッドで眠れるし、どっちが良いかと言われたらこの鬼人の身体の方が良いかな。
「「いただきます!」」
俺はマリーネと一緒に、彼女手作りの朝食を食べる。
ベーコンを乗せたパンと、その隣にある赤いジュースはなんだろう?
「マリーネ、このジュースは何?」
「トマトジュースよ。美容に良いって聞いたから、トマトをすり潰して作ってみたの。」
「そっか。」
それがトマトジュースだとマリーネに教えてもらった俺はコップを手に取ってトマトジュースを口にした。その瞬間……。
「……美味しい。」
「本当?良かったわ!」
俺はあまりの美味しさにそう呟いてしまったのだけど、実は俺、トマトジュースはあまり好きじゃなかったんだよなぁ。
でもこのトマトジュースはとても美味しいと感じる。
なんでだろう……そう思いながらそれをすぐに飲み干し、ベーコンの乗ったパンも食べ終えた。
「ごちそうさま。」
「おはよう。」
その時、家の奥の方からイブさんが姿を現した。
この人は昨日からこの家に居座る事になり、昨晩は物置部屋で寝泊まりをしたらしい。
「すみませんお師匠様、眠れる所が物置部屋しかなくて……よく眠れなかったんじゃないですか?」
「いや、ぐっすり眠れたぞ。私は基本どこでも眠れる。」
「それなら良いんですが……。」
「それより、朝食は食べ終えたか?」
「はい。今食べ終えました。」
「じゃあ歯磨きも早くしてこい。ヒトミを迎えに行くぞ。西の王国ディアーガにな。」
「はい!」
イブさんはリビングに来るなりそう言って俺達に早く出かける準備をするように促した。
そう、イブさんの言う通り今日はヒトミさんがこの世界に降り立つので、それを俺達は迎えに行く事になっている。
この世界を創造し、この世界に命を産み落としている神ティアマト。
その正体は世界の支配を目論む闇のティアマトと、闇のティアマトの……大切な人の暴走に心を痛める光のティアマトだった。
光のティアマト、ヒトミさんは闇のティアマトによってあの空間からこの世界に転移させられ、今日彼女はこの王国アストレアの西にある王国、ディアーガに生まれ落ちるらしい。
闇のティアマトは、「盤上に駒を揃えるため」そう言っていたけど、その真相は俺には計り知れなかった。
ただ、闇のティアマトと協力関係にあり、彼同様世界の支配を目論む鬼島狂死郎率いる「影の一味」はヒトミさんを殺そうとしてて、それに反して闇のティアマトはヒトミさんを殺しはせずこの世界への転移をした。
狂死郎と闇のティアマトは仲間なんだよな?じゃあ何故そんな事を……。
ヒトミさんは、闇のティアマトは「何か」に洗脳されてると言っていた……あくまで俺の考えだけど、「世界を支配したい」と言うのが「何か」の考えで、「ヒトミさんを影の一味の魔の手から逃がしたい」と言うのは闇の……いや「レンさん」の意志、って事なのだろうか……。
ダメだ、俺なんかには話のスケールが大きすぎて……。
「リョータロー君?」
「え?」
「なにか考え事でもしてるの?」
「い、いやなんでもないよ。」
俺はマリーネにそう聞かれ、とっさになんでもないと答える。
俺達は馬車に乗り、王国アストレアの西端を目指している。
西端にある国境関所を通ってディアーガに行くのだ。
「お前にはちょっと複雑な問題か?この世界を取り巻く問題は。」
「は、はい……。」
「その事考えてたの?なんでもなくないじゃない!」
「あ、ごめん……。」
「じゃあとりあえず、闇のティアマトは奴を洗脳してる「何か」から解放してやる、狂死郎ら影の一味はぶっ倒す、ヒトミは仲間として迎え入れる。これだけ頭に入れとけ。」
「は、はい。」
イブさんは俺にそう言い、そう考えるのが今の俺にとっては多少楽でいられるな、と俺は思いそうする事にした。
それと、気になった事がもう1つ……。
「イブさんは鬼人族について詳しい事は知ってますか?」
「ヒトミから聞いた範囲ではな。」
「じゃあ、何で俺は人をほとんど食わずに生きる事ができたんですか?他の鬼人族はそうじゃなかったんですよね?多分狂死郎も……。」
俺の質問に対して、イブさんはこう答える。
「お前の事はあっちから見ていた。鬼人族の末裔はお前が生きてた時点で全世界に3人いた。」
「3人?俺だけじゃなかったんですか?」
「あぁ。何せ鬼人の存在は秘匿事項らしいからな。1人はアメリカの、1人はドイツの施設で保護されている。その存在は一般には明かされていない。自由な生活を送れていた鬼人はお前だけだ、良太郎。日本のお国柄のお陰だろうな。」
「……2人の鬼人の人はどんな扱いをされてるんですか?」
「このご時世、人権を蔑ろにする奴は石を投げられる。鬼人族も人の形を保ってはいるお陰で人権は保証されている。だが制約は多いらしい。変わり映えしない部屋で食事は3食同じもの。会いに来る親族はいない。1日のほんどは自由な時間だが読書ぐらいしかやる事がない。たまになんか訳分からんことを言うカウンセラーの長話を聞かされて……それがその2人の現状だ。」
「そう……ですか。」
とりあえず酷い扱いを受けてはいないみたいだから良かったけど……その2人も俺のように自由に生きられないのかな……。
「まぁ殺されはしないと思うから安心しろ。国の機密事項だって覗き見る事ができる私が言うから間違いない。鬼人族愛護団体なる連中もいるからそう簡単には殺せないしな。お前はお前のやる事だけ考えろ。2人を解放してやりたいとか言うのは後でゆっくり考えればいい。」
「は……はい!ていうか、俺の事は……」
「すまない、話が逸れたな。お前は__」
「お師匠様!リョータロー君!関所が見えてきたわよ!」
「……あれは……。」
マリーネがそう言うので馬車の荷台から外を見てみると、遠くの方に大きな門があるのが見えた。
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