異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第2章<鋼の心>編

72話「蘇る記憶・その3」

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    流進高校入学初日、俺は一真、花菜と共に電車に揺られながら登校していた。
    その時の俺は、高校に入学する事に期待半分、不安半分と言った心持ちだった。
    「高校でも一真や花菜のような心優しい生徒と出会えるかもしれない」と言う期待、「鬼人族である事が原因でいじめられるかもしれない。」と言う不安、その両方を抱え、俺は自分のクラス、1年A組のドアを開けた。

「……。」

「おはよう皆!!」

「……。」

     俺と花菜は人見知りな性格をしており、流石に登校初日に皆に挨拶をする勇気は無かったが、流石一真と言ったところか、彼は教室の中にいた生徒数名に元気に挨拶をした。
    
「お……おはよう!」

「陽キャじゃん。」

「あーいうのいると安心する~。」

    一真の元気な挨拶に対してのクラスの人達はおはようと返す。
    俺は彼がクラスの良いムードメーカーになるだろうと、その時から確信していた。

    だが、それと同時にこんな声もクラスから聞こえてきた……。

「あの白髪と赤い目、まさか……。」

「いや、ただのコスプレだろ。鬼人族なんているわけねぇって。」

「でもなんか怖いから話しかけんとこ……。」

     クラスの俺に対する眼差しは、予想通り良いものでは無かった。
    その空気に俺が滅入りそうになった時、俺を助けてくれたのは、他でもない一真と花菜であった。

「お、おいーっす!俺!大鷲一真!このクラスのムードメーカーやろうと思ってるんで!これからこのクラス盛り上げていくぜ~!」

「いよっ!流石一真!」

「2人とも……。」

    一真と花菜は皆の空気を変える為に、自らそう名乗り出て場を盛り上げようとしたのだ。
    俺はその場では2人に何か言うのを抑えて、心の中で2人に感謝した。
  
    それからクラスに続々と生徒達が入ってきて、俺が教室に入ってから約10分後にはクラスの生徒が揃うまであと1人の所まで来ていた。
    一真はその間クラスに同級生が入ってくる度に一人一人に挨拶をしていた。
    彼は本当に優しいんだな、と俺は実感した。

    そして、最後にクラスに女子が入ってくる……。

「ギリギリセーフ!」

「おぉ、あの女子可愛くね?」

「確かに。」

「初対面だけどあの子好きだわ~。」

    皆がそう口走る程可愛い女の子。だけど、俺はその可愛さを知っていた。
    いや、可愛さなんて今は関係無い。その子が……野原林檎がこのクラスに、いや、この学校に入学していた事実に、何より驚いたのだ。

「……!!」

「どうした良太郎?」

「知り合い?」

「……う」

「あ……。」

    俺は一真と花菜に林檎との関係を言おうとした瞬間、ふと林檎と目が合ってしまった。
    俺は鬼人族である故に特徴的な見た目をしてるので、きっと相手も俺を認識してるだろうと思ったが、その時は林檎から話しかけられる事は無かった。

    人間なんて成長すれば小学生の頃の考えなんて捨て去って、新しい価値観で生きていくんだろう、そんな風に林檎も俺なんかには関わらないで生きていくつもりなんだろう、その時の俺はそう思っていたのだけど……。



「明日は身体測定をします。本格的な授業は来週の月曜日からです。では委員長の堀田さん。挨拶を。」

「はい。起立。礼。」

    そうしてその日は、自己紹介の後、クラスの委員長、副委員長、書記、委員会の割り当てを決めて午前中の内に下校する事になった。
    
「一真だっけ?友達になろうぜ!」

「お前水泳しにこの高校来たのか!」

「これからよろしくな!」

「俺も水泳好きなんだよ!」

「おう!皆仲良くしような!」

    これから皆下校のはずなのに一真の周りには沢山の同級生がいる。
    日陰者の俺はそういうのに憧れたりもしたけど……俺みたいな奴の周りには人は集まらないだろうと早々に諦めていた。

「ねぇねぇ林檎ちゃん!友達になりましょう!」

「思ったんだけど、野原林檎ってめっちゃかわええ名前しとるやん!」

「おまけに可愛い系美人……これは推せるわ。」

「う、うん!皆よろしくね!」

    林檎も既に同性の同級生と仲良くなってた。
    花菜は一真に「校門で待ってる」と伝え、俺と共に校舎を出たのだけど……そんな俺の後を追ってくる生徒が1人。
    俺はその気配を感じつつ、目を合わせたらどんな事を言われるか分からないので、その人に注意しつつも特にこちらからは何もせず校門前まで来た。
    そして、その人物は校門前で俺に接触してくる……。  

「良ちゃん!!」

「わっ!?」 

    その生徒は林檎だった。その時ようやく「林檎はクラスでは俺に話しかけづらかったからこの時を待っていた」という事を俺は理解した。

「良太郎……知り合い?」

「え、えっと……。」

「名前呼び?貴方良ちゃんの友達?それとも……いやいや、それも大事だけど良ちゃんと高校で再会できるなんて……夢みたいだよ!!」

    この時の俺は花菜に林檎を、林檎に花菜をどう紹介するのが正解か分からず、とりあえずこう説明する事にした。

「か、花菜……この子は野原林檎。俺が小学生の頃の同級生なんだ。それと林檎……この人は天海花菜という人で……中学生の頃できた友達……みたいな?」

「へぇ~!よろしくね!花菜ちゃん!」

「う、うん……よろしく。」

    その時の俺にとってはただひたすらに疑問だった、林檎は俺の手であんな大怪我を負ったのに、なんでそんな俺に接触してくるのかと言う事が。
    林檎は並の人間とは一線を画す善人だと言う事は分かっている。それでも、自分の命を脅かした男にどうしてそんな笑顔を向けられるのか、それが俺には分からなかった。

「おっす良太郎!花菜!あれ?その子は確か……林檎ちゃん?」

「うん!めっちゃ元気な一真君だよね?君も良ちゃんの友達?」

    その後、一真が校舎から出てきて俺達と合流する。

「良ちゃん……だってぇ!?お前そんな仲良い子がいたなんて!なんで言わなかったんだよ~!」

「あ、うん……ごめん……。」

「良太郎を離してやりなよ。」

「おっと悪い悪い。じゃあ4人で帰ろうぜ!」

「うん!そうしようね、良ちゃん!」

「う……うん。」

    そうして俺、林檎、一真、花菜は4人で駅に行く道の途中まで一緒に下校した。
    林檎によると、彼女は小学4年生の頃からこの街、月与市に住んでいるそうだ。
    そして一真の「林檎ちゃん可愛いし、彼氏とかいたんじゃない?」という質問に「そういうのを作った事は無い」と彼女は答えた。

「それじゃあまたね。一真君、花菜ちゃん!」

「おう!またな!」

「また明日。」

「……。」

「良ちゃん!またね!」

「ま……また明日……。」

    俺と一真と花菜の3人と林檎は学校から15分程歩いた所で別れ、俺達3人は電車に乗って自分達の家へと帰っていった。
    一真と花菜は新しい友達ができて嬉しそうだったけど、俺にとっては……林檎は俺にとってのトラウマみたいな感じになっていた。
    その林檎とどう向き合っていくか……それだけが悩みだったのだ。
     
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