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第2章<鋼の心>編
70話「蘇る記憶・その1」
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俺は自分の過去を仲間達に明かした。けどこれから話す俺の過去は、皆には明かさなかった小学生時代の後の話だ。
◇
林檎を傷つけてしまった小学4年生の頃の俺は、周囲の人達の目が気になり小学校にもいられなくなり、不登校になった。
不登校になった俺は、田舎のおじいちゃんの家に行ってそこで心を休める事にした。
「おう良太郎。元気してたか?」
「うん……まぁ。」
「ゆっくりしていけよ。ジュース飲むか?お菓子もあるぞ。」
「じ、じゃあジュース飲みたいな。」
俺は2年間おじいちゃんの家にずっといたのだけど、その間は1人で小学校の勉強をしていた。
2時間程の勉強を終えたら、おじいちゃんが近くのスーパーに連れて行ってくれて、そこでお菓子やジュースを買ってもらっていた。
たまにスーパーの中のアイスクリーム屋さんでアイスやコーラフロート、クレープ等を食べたり、おもちゃコーナーでプラモデルを買ってもらったりもした。
おばあちゃんは俺が物心付く前に病気で亡くなっており、おじいちゃんの家にはおじいちゃん1人しかおらず、俺は昼間は基本的に1人で家にいたが、あまり1人でいる事は苦だと思っていなかった。
自分のような人間……いや、鬼人族には1人がお似合いだと思っていたからだ。
それから2年が経過し、俺は小学校を卒業して中学生になった。
通う中学校は、通っていた小学校からかなり離れた所にある学校を選び、そこに入学した。
きっと小学校から離れた所なら、俺の噂も届いていないだろうと思ったからだ。
「良太郎。いざって時には学校から逃げていいんだからね。貴方の生き方はそれだけじゃないんだから。」
「うん。」
「もしも貴方の事を鬼人族だからって理由で虐めてくる子達がいたら先生に言って、先生がその子達にちゃんと注意してくれなかったらそんな学校辞めちゃいましょう。その後の事はその後考えましょうね。」
「分かった。じゃあ行ってくる。」
「うん。気をつけてね。」
授業開始日、俺は1人で駅へと向かい、そこで電車に乗って隣町、伊野町の中学校へと向かった。
その道中たまに視線を感じる事があったが、いつもの事なのでスルーし、そして学校に辿り着き自分の教室へと入る。
それから授業が始まったのだけど、初日の授業は小学校の頃の学習内容の復習見たいな感じであまり難しい事はしなかった。
でも、皆が教室から指名され、出題された問題を答えていく中、俺だけは一度も指名される事は無かった。
当時の俺はその理由を察する事ができない程鈍感では無かったので、教師達の心情を理解し教師達に対して反論をする事は無かった。
まぁ、教師に当てられないって言うのは楽ではあったけど。
そして1限目の休み時間、俺の前の席の背の高い男子と右隣の黒髪ロングヘアの女子がいきなり俺に話しかけてきた。
「なぁ、あの噂本当なのかよ?お前が鬼人族ってやつ。」
「本当だよ。だから皆俺の事怖がって近寄らないんだ。」
特撮ヒーローの小説を読んでいた俺はその手を止め、前の席の男子に対してそう答える。すると今度は隣の席の女子がこう言ってきた。
「それじゃあ貴方友達がいないんじゃない?友達や頼れる人はいた方が良いわよ?困った時にその人が自分の事を助けてくれるかもしれないじゃない。」
俺に対してそう言ってくる女子はなんか威圧的な態度だなぁ、と当時の俺は思ってたけど、今思うと俺の事を気にかけてくれてたんだなぁと感じる。
「……友達かぁ。いたら楽しいだろう
なぁ。」
そのクラスの子達は、早ければ入学初日の時点で友達になってる人達もいたが、俺がそんな事できるはずもなく……このまま俺はずっと1人で中学生活を送っていくのかと思っていたが……。
「じゃあ俺達が友達になってやるよ。
な、花菜?」
「ええ。」
俺は耳を疑った。彼らは……一真と花菜、2人は突然俺と友達になると言ってくれた。
「……俺は良太郎。2人の名前は?」
「俺は大鷲一真!一真で良いぜ!よろしくな良太郎!」
「天海花菜。花菜って呼んで。」
その日から俺と一真、そして花菜は友達となった。
中学入学記念に俺はスマホを買ってもらったので、早速俺は通話アプリ、LAINで2人と友達登録をし、学校にいる時だけでなく、家にいる時も会話をする事ができた。
その過程で俺は2人に自分の事を知ってもらい、俺も2人の趣味や好きな物を理解していった。
これはある日の俺と一真と花菜の会話なんだけど……。
「2人は俺が怖くないの?」
「え?」
「俺って鬼人族じゃん?」
「あぁー、そういう事ね。」
俺は2人が「俺の事を怖がってないのか?」と気になり、2人にそう質問する。
すると2人が俺に返した答えは……。
「なんか鬼人族って面白そーだなって思ったから声掛けたんだよ。怖いとかは……考えもしなかったな。」
「私は……鬼人族と友達になる、ってのがなんか未知の体験じゃない?って思ったのよ。」
「……。」
2人とも、俺が鬼人族である事を恐れている様子はなく、むしろ鬼人族と友達になるのは楽しそう、と答えたのだった。
特に一真は明るい性格なので、笑顔でそう答えていた。
「じゃあ、俺が鬼人族としての本性を現したら……?」
俺は恐る恐る、2人にそう質問してみた。その答えがもしも……とも考えたが、それを聞かずにはいられなかったんだ。
「うーん……それはそれで面白そうじゃね?鬼のお前から俺が逃げて、これがホントの鬼ごっこ!なんつって!」
「アンタねぇ……。」
その質問をされてもなお、一真はいつもの明るい笑顔を絶やさなかった。
この時俺は確信したんだ。2人と友達になって良かった、と。
そして忘れてしまっていた。林檎を傷つけてしまったという過去を……一真と花菜、2人と一緒にいる時だけは、過去の事を忘れていた自分がいた……。
◇
林檎を傷つけてしまった小学4年生の頃の俺は、周囲の人達の目が気になり小学校にもいられなくなり、不登校になった。
不登校になった俺は、田舎のおじいちゃんの家に行ってそこで心を休める事にした。
「おう良太郎。元気してたか?」
「うん……まぁ。」
「ゆっくりしていけよ。ジュース飲むか?お菓子もあるぞ。」
「じ、じゃあジュース飲みたいな。」
俺は2年間おじいちゃんの家にずっといたのだけど、その間は1人で小学校の勉強をしていた。
2時間程の勉強を終えたら、おじいちゃんが近くのスーパーに連れて行ってくれて、そこでお菓子やジュースを買ってもらっていた。
たまにスーパーの中のアイスクリーム屋さんでアイスやコーラフロート、クレープ等を食べたり、おもちゃコーナーでプラモデルを買ってもらったりもした。
おばあちゃんは俺が物心付く前に病気で亡くなっており、おじいちゃんの家にはおじいちゃん1人しかおらず、俺は昼間は基本的に1人で家にいたが、あまり1人でいる事は苦だと思っていなかった。
自分のような人間……いや、鬼人族には1人がお似合いだと思っていたからだ。
それから2年が経過し、俺は小学校を卒業して中学生になった。
通う中学校は、通っていた小学校からかなり離れた所にある学校を選び、そこに入学した。
きっと小学校から離れた所なら、俺の噂も届いていないだろうと思ったからだ。
「良太郎。いざって時には学校から逃げていいんだからね。貴方の生き方はそれだけじゃないんだから。」
「うん。」
「もしも貴方の事を鬼人族だからって理由で虐めてくる子達がいたら先生に言って、先生がその子達にちゃんと注意してくれなかったらそんな学校辞めちゃいましょう。その後の事はその後考えましょうね。」
「分かった。じゃあ行ってくる。」
「うん。気をつけてね。」
授業開始日、俺は1人で駅へと向かい、そこで電車に乗って隣町、伊野町の中学校へと向かった。
その道中たまに視線を感じる事があったが、いつもの事なのでスルーし、そして学校に辿り着き自分の教室へと入る。
それから授業が始まったのだけど、初日の授業は小学校の頃の学習内容の復習見たいな感じであまり難しい事はしなかった。
でも、皆が教室から指名され、出題された問題を答えていく中、俺だけは一度も指名される事は無かった。
当時の俺はその理由を察する事ができない程鈍感では無かったので、教師達の心情を理解し教師達に対して反論をする事は無かった。
まぁ、教師に当てられないって言うのは楽ではあったけど。
そして1限目の休み時間、俺の前の席の背の高い男子と右隣の黒髪ロングヘアの女子がいきなり俺に話しかけてきた。
「なぁ、あの噂本当なのかよ?お前が鬼人族ってやつ。」
「本当だよ。だから皆俺の事怖がって近寄らないんだ。」
特撮ヒーローの小説を読んでいた俺はその手を止め、前の席の男子に対してそう答える。すると今度は隣の席の女子がこう言ってきた。
「それじゃあ貴方友達がいないんじゃない?友達や頼れる人はいた方が良いわよ?困った時にその人が自分の事を助けてくれるかもしれないじゃない。」
俺に対してそう言ってくる女子はなんか威圧的な態度だなぁ、と当時の俺は思ってたけど、今思うと俺の事を気にかけてくれてたんだなぁと感じる。
「……友達かぁ。いたら楽しいだろう
なぁ。」
そのクラスの子達は、早ければ入学初日の時点で友達になってる人達もいたが、俺がそんな事できるはずもなく……このまま俺はずっと1人で中学生活を送っていくのかと思っていたが……。
「じゃあ俺達が友達になってやるよ。
な、花菜?」
「ええ。」
俺は耳を疑った。彼らは……一真と花菜、2人は突然俺と友達になると言ってくれた。
「……俺は良太郎。2人の名前は?」
「俺は大鷲一真!一真で良いぜ!よろしくな良太郎!」
「天海花菜。花菜って呼んで。」
その日から俺と一真、そして花菜は友達となった。
中学入学記念に俺はスマホを買ってもらったので、早速俺は通話アプリ、LAINで2人と友達登録をし、学校にいる時だけでなく、家にいる時も会話をする事ができた。
その過程で俺は2人に自分の事を知ってもらい、俺も2人の趣味や好きな物を理解していった。
これはある日の俺と一真と花菜の会話なんだけど……。
「2人は俺が怖くないの?」
「え?」
「俺って鬼人族じゃん?」
「あぁー、そういう事ね。」
俺は2人が「俺の事を怖がってないのか?」と気になり、2人にそう質問する。
すると2人が俺に返した答えは……。
「なんか鬼人族って面白そーだなって思ったから声掛けたんだよ。怖いとかは……考えもしなかったな。」
「私は……鬼人族と友達になる、ってのがなんか未知の体験じゃない?って思ったのよ。」
「……。」
2人とも、俺が鬼人族である事を恐れている様子はなく、むしろ鬼人族と友達になるのは楽しそう、と答えたのだった。
特に一真は明るい性格なので、笑顔でそう答えていた。
「じゃあ、俺が鬼人族としての本性を現したら……?」
俺は恐る恐る、2人にそう質問してみた。その答えがもしも……とも考えたが、それを聞かずにはいられなかったんだ。
「うーん……それはそれで面白そうじゃね?鬼のお前から俺が逃げて、これがホントの鬼ごっこ!なんつって!」
「アンタねぇ……。」
その質問をされてもなお、一真はいつもの明るい笑顔を絶やさなかった。
この時俺は確信したんだ。2人と友達になって良かった、と。
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