異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

文字の大きさ
上 下
58 / 170
第2章<鋼の心>編

58話「目覚める鬼」

しおりを挟む
    俺は狂死郎と戦う決意を固め、目の前の敵を倒すべき敵だと判断する。
    狂死郎が俺の先祖だろうと関係ない、こいつを放っておくと世界が危ない!

「じゃあ最後の試練だ。」

    だがその時、彼がそう呟いた瞬間、俺の足元から何か音が聞こえた。そこそこの重量があるものが落ちる音だ。

「な……ッ!?」

    その地面に落ちた物を見て俺は驚愕した。地面に落ちていたものは、俺自身の左腕だった。
    その左腕を切り落としたのが地面から伸びる黒い触手だと言うことを理解するのに、そう時間はかからなかった。

「リョータロー君!」

「最後の試練だ。君には死んでもらう。」

「何だって……ッ!!」

    俺に死ねと言うのか!?なんでそんな……と考えている隙にも触手は俺を攻撃してきて、俺はそれを避けるので精一杯だった。
    
「俺に仲間になって欲しいんじゃないのか!?気が変わったのか!?」

「うーん、君を仲間にするのはまだ諦めてないんだけどね、君には一旦死んで欲しいんだよ。」

     「一旦」死んでもらう……?一旦も何も人は死んだらそれっきりなんだぞ……?死んだ人間が生き返るなんて……まさか!!

「お前……何を考えて……!!」

「それは死ねば分かるさ。ほら抵抗しないで。」

    狂死郎はそう言いつつ、触手を操って俺の右腕すら切り落としてしまう。
   これで俺は逃げる事しかできなくなった……。
   それと、俺は狂死郎が考えている事がなんとなく分かった気がする。でもそれをして、狂死郎にどんなメリットがあるって言うんだ……?俺が狂死郎の思い通りになったあと、その後の事は俺には分からない……そう考えつつ、俺は脚部武装、ホイールゴローダーの機動力を活かして触手を回避する。

「何抵抗してるの?君を殺せないじゃないか。」

「そう簡単に命を投げ出せられるか!」

    そうだ、もし仮に、本当に死ぬのは「一旦」だけで、その後生き返れたりするにしても……本当に生き返れるなんて保証はあるのか分からない。
     そんなのリスクが高すぎる……俺の考えはこうだ、狂死郎は俺にティアマ……

「ぐ……ッ!!」

    その瞬間、俺は脚を触手に破壊され、バランスを失ってしまう。それが命取りだった。

「さよなら。また会おう、良太郎君。」

    それが俺が最後に聞いた狂死郎の言葉、狂死郎が出現させた無数の触手が俺を襲うのが、最後に見る光景となった____



「リョータロー君!!」

    私はただ、叫びをあげることしかできなかった。目の前でリョータロー君の身体が触手によってバラバラに切り刻まれる瞬間を、私はただ見てる事しかできなかった。

「リョータロー君……そんな……ッ!!」

    私はまた失ったの……?大切な人を……!私の脳裏に、あの日の光景がフラッシュバックする。
    地面に転がるアーサーのサンダル、それを見て私は彼の死を理解した。そして、両親の死も……あんな思いはもうしたくなかったのに、私はまた……!

「マリーネ!!」

「!」

「……落ち着いて……。」

    その時、私に声をかけるセリエさん。その言葉を聞いて初めて、自分が呼吸を荒くし、パニック状態になっている事に気づいた。

「リーダー!!こいつらはどうする!?人質として今後役に立つんじゃねぇか?」

「そうだね。人間と何かしらの交渉をする時がくるかもしれない。その2人は僕達の手中に収めておく事に損は無いだろう。」

    リョータロー君を殺したキョーシローとセンジュはそんなやり取りをする。
    キョーシロー……よくもリョータロー君を……!

「そうね……大人しく……捕まっておくとしましょう……この拘束も……破れそうにないし……。」

    セリエさんも諦めたような態度でそう言っている。特級冒険者のセリエさんがそう言うなんて、私達はこのままここで……

[5秒後に目をつぶって、私が名前を呼んだら石碑に向かって走り出す]

「!?」

   ……何今の……セリエさんの声が脳内に?これはセリエさんの魔術……?

「スパーク!!」

     その瞬間、セリエさんがそう唱え、右手の平から眩い光を放つ。

「何……ッ!?」

    それによって目くらましされる影の一味達。私はセリエさんの指示通り目をつぶっていたのでスパークの影響を受けずに済んだ。

「マリーネ!!」

「!!」

    そして、セリエさんの声が聞こえたので、私は石碑の方に走り出す。
     最初は「影の触手で拘束された状態でどうやってここから逃げるの……?」と思ってたけど、一か八か駆け出した時、私は影の紐がセリエさんの魔術で切り落とされていた事に気づく。
     さっきの諦めたような態度は影の一味を騙す為の嘘だったのね……!

    そうして、石碑の方に走っていった私とセリエさんは……。

「ここは……!!」

     私はいつの間にか王国アストレアの王都外壁のすぐ側にいた。セリエさんも隣にいる。
     セリエさんがワープゲートを発動して、私をここに転移させたのね!

「おぉマリーネ!?それにセリエ!?どうしたんだ!?」

「タウラス!」

「それが……」

    そこにはタウラスがおり、いきなり
目の前に現れた私に困惑していたけど、私は彼に、センジュに連れ去られた時にあった事と、セリエさんの事も話した。

「そうか、敵のリーダーに会ったのか。それで、リョータローは?」

「それが……リョータロー君は……!」



「……ここは……?」

    俺はゆっくりと目を覚ます。確か俺は狂死郎にやられて……マリーネは?セリエさんは?いやそれよりも……ここはどこなんだ……?
    俺は無限に広がる宇宙の中にいるような感覚だった。無数の星や、月、太陽が見える空間だ。呼吸はできるし、本当の宇宙空間じゃないのか?
    そしてこの白い髪……俺は人、いや……鬼人だった頃の姿をしていた。
服は死んだ時に着てたのを着ている。
    そして、その宇宙空間的な所でおかしい所が一つだけある。

「地球が……2つ……?」

    そう、その宇宙空間的な所には、地球が2つあったのだ。俺の足元に一つ、頭の上に一つ。
    ますます訳が分からい……誰かいないのか?そう考えていた時……。

「いるぞ。ここにな。」

「こんにちは、良太郎さん。」

    そう言われて俺は後ろに振り向くと、そこには2人の女性がいた。この人達は一体……?

   


     
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士
ファンタジー
 生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。  冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...