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第2章<鋼の心>編
45話「鍛える姉弟」
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良太郎とマリーネがミズノエに行き、帰ってきてから、王国アストレアに竜嵐が接近しているという報告を受けるまでの5日の間に、冒険者姉弟のリコとトーゴは、ある冒険者と共に特訓をしていた。
2人は以前センジュとの戦いで敗北し、自分の無力さを思い知らされた。
なので、2人は強くなる為に、リコとトーゴはそれぞれ別々の冒険者に自分を鍛えてほしいと志願したのだ。
「俺の特訓は厳しいぞ?それでもいいのか?」
「あぁ。俺は強くならなくちゃならないんだ。強くなくちゃ、守れるものも守れねぇ。だから、よろしく頼む。ガオレオ!」
「……いいぜ。俺がお前を強くしてやる! 」
トーゴが特訓の相手に選んだのは、ガオレオだった。
彼は特級冒険者であり、自分を鍛えてくれるのに打って付けだと見込んだトーゴは、彼を選んだのだ。
一方、リコが選んだ特訓の相手は……。
「攻撃魔術の威力を向上させたい?それで私を選んだのか。」
「はい。私は色んな属性の魔術が使えますが、その分1つ1つの攻撃力が甘くて……それで、1つ1つの攻撃魔術を必殺級の一撃にまで昇華できないかと思って、高い威力の攻撃魔術を使える貴方に、私を鍛えて欲しいんです!」
「なるほど、分かった。私でよければ相手になろう。」
リコは、冒険者ギルドにいたソレイユに、特訓相手になってもらう事に決めた。
自分の魔術を受けてもなんともなかった敵を前にして、彼女は自分の無力さを知った。
なのでリコは、攻撃魔術の威力を上げる為に、高い威力の攻撃魔術を得意とするソレイユに、自分を鍛えてもらう事に決めた。
そうと決まれば、さっそく2組は特訓をする場所へと向かった。
リコとソレイユは、王国アストレアの西方の山岳地帯へと向かい、トーゴとガオレオは、東方の草原地帯へと向かった。
トーゴは、速度の早い相手に対応する為に、自身の反応速度を鍛える訓練をしたいと、ガオレオに伝え、彼はそれに同意した。
「俺は以前、ある敵と戦ったんだが、そいつの速すぎるスピードについていけなかった。だから、俺は反応速度を鍛えたい。」
「へぇー。そいつはそんなに速かったのか?俺よりも?」
「多分、ガオレオと同じぐらいだと……」
トーゴがそう呟いた瞬間、彼の眼前にはガオレオの拳があった。ガオレオは高速で拳を突き出し、そして寸止めしていた。
その時の彼の前髪は逆立っており、瞳は緑色に輝いていた。これは彼の本気の状態、「大風雲猛怒(タイフーンモード)」である。
この状態のガオレオの動きを捉えられる冒険者は、この国にはいないと噂されている程の強力な状態だ。
「これよりも速いのか?その敵はよぉ。」
「……流石だな。お前ならそいつとも渡り合えるかもしれん。」
「ならまずは俺の動きに反応できるようになるこったな。話はそれからだ。」
「おう。」
そうしてガオレオによるトーゴの特訓が始まった。その一方で、山岳地帯の方でも、リコとソレイユの特訓が始まろうとしていた。
「人には魔術属性適正があるというのは知ってるな?」
「はい。その属性適正の度合いで、人は火、水、風、土、雷、氷、無属性の攻撃魔術が使えるかどうかが決まるんですよね。」
「そうだ。君は噂によると、全属性に適正があるそうだな。全属性の攻撃魔術が使えるという事はそれだけでも大きなステータスとなる。」
ソレイユはリコにそう説明した。属性の適正を知る為には、冒険者ギルドの鑑定具を使用する事でそれを知る事ができる。
「ソレイユさんは確か……。」
「私は火属性以外の適正が全く無い。ギルドにある属性適正鑑定具でそれを知った時はギルド職員にも驚かれたよ。大抵の人間は2~3属性は使えるというのにな。」
「でも、1つの属性を極めて完璧に使いこなすなんて凄いですよ。そんな貴方だからこそ、私の特訓相手に選んだんです。」
「ありがとう。攻撃魔術の威力を向上させるには、ひたすら魔術を磨くしかない。何度も何度も魔術を使い、それを自由自在に使いこなせるようになれば、その威力や、攻撃の形すら変えられる事ができる。」
ソレイユはそう言うと、手元に炎の球を形成し、それを遠くにある大岩目掛けて発射し、その大岩を炎の球によって粉砕してみせた。
「まずは初歩的な事を磨く事だな。」
「はい!」
そうして、リコとソレイユの方では、魔術の訓練が始まり、2組の過酷な特訓は幕を開けた。
トーゴの方はガオレオの高速の動きについて行けず、ただひたすら彼に打ちのめされるだけで、この特訓は過酷すぎる……だが、俺がガオレオの動きについて行けるようになるまでは終われない、とトーゴは内心思った。
リコは攻撃魔術の基本である、各属性のバレット、ブレス、ランス系の攻撃魔術を魔力が尽きるまで撃ち続けた。
その最中にそれらの魔術を発展させた魔術のイメージも脳内で思い浮かべながら特訓しているので、心も身体も疲れ果てる一方だ。
だがこうでもしないと、あのセンジュや、いつか目の前に現れるかもしれない、それと同等の力を持つ敵には勝てないと理解したリコは、なんとかその特訓をこなす事を決めた。
2組が特訓を始めてから2日が経過した。
トーゴはまだガオレオの動きにはついていけないが、なんとか彼の動きを目で追う事はできていた。
雷神具猛怒のセンジュの動きは目で追う事すらできなかったが、それと比べると、2日である程度は高速で動く敵の動きは、なんとか目で追える程度にはなっていた。
「はっ!!とうっ!どうした!?こんなもんか!?」
「くそ……目では追えるが反応できねぇ……!!」
一方リコの方は、2つのフレイムバレットを同時に撃つ、ダブルフレイムバレットを習得していた。
更にその他の魔術も威力が向上しており、それまではアドバイスをするだけだったソレイユはこれからは自分が特訓の相手をする事にした。
ソレイユが攻撃魔術をリコに向かって放ち、それをリコが魔術で相殺する、といった訓練だ。
「防いでみろ!!フレイムバレット!!」
「はい!!ダブルフレイムバレット!!」
そうして、リコとソレイユ、トーゴとガオレオの特訓は5日間続いた。その特訓の果てに、2人はそれまでよりも成長できたのだろうか……。
2人は以前センジュとの戦いで敗北し、自分の無力さを思い知らされた。
なので、2人は強くなる為に、リコとトーゴはそれぞれ別々の冒険者に自分を鍛えてほしいと志願したのだ。
「俺の特訓は厳しいぞ?それでもいいのか?」
「あぁ。俺は強くならなくちゃならないんだ。強くなくちゃ、守れるものも守れねぇ。だから、よろしく頼む。ガオレオ!」
「……いいぜ。俺がお前を強くしてやる! 」
トーゴが特訓の相手に選んだのは、ガオレオだった。
彼は特級冒険者であり、自分を鍛えてくれるのに打って付けだと見込んだトーゴは、彼を選んだのだ。
一方、リコが選んだ特訓の相手は……。
「攻撃魔術の威力を向上させたい?それで私を選んだのか。」
「はい。私は色んな属性の魔術が使えますが、その分1つ1つの攻撃力が甘くて……それで、1つ1つの攻撃魔術を必殺級の一撃にまで昇華できないかと思って、高い威力の攻撃魔術を使える貴方に、私を鍛えて欲しいんです!」
「なるほど、分かった。私でよければ相手になろう。」
リコは、冒険者ギルドにいたソレイユに、特訓相手になってもらう事に決めた。
自分の魔術を受けてもなんともなかった敵を前にして、彼女は自分の無力さを知った。
なのでリコは、攻撃魔術の威力を上げる為に、高い威力の攻撃魔術を得意とするソレイユに、自分を鍛えてもらう事に決めた。
そうと決まれば、さっそく2組は特訓をする場所へと向かった。
リコとソレイユは、王国アストレアの西方の山岳地帯へと向かい、トーゴとガオレオは、東方の草原地帯へと向かった。
トーゴは、速度の早い相手に対応する為に、自身の反応速度を鍛える訓練をしたいと、ガオレオに伝え、彼はそれに同意した。
「俺は以前、ある敵と戦ったんだが、そいつの速すぎるスピードについていけなかった。だから、俺は反応速度を鍛えたい。」
「へぇー。そいつはそんなに速かったのか?俺よりも?」
「多分、ガオレオと同じぐらいだと……」
トーゴがそう呟いた瞬間、彼の眼前にはガオレオの拳があった。ガオレオは高速で拳を突き出し、そして寸止めしていた。
その時の彼の前髪は逆立っており、瞳は緑色に輝いていた。これは彼の本気の状態、「大風雲猛怒(タイフーンモード)」である。
この状態のガオレオの動きを捉えられる冒険者は、この国にはいないと噂されている程の強力な状態だ。
「これよりも速いのか?その敵はよぉ。」
「……流石だな。お前ならそいつとも渡り合えるかもしれん。」
「ならまずは俺の動きに反応できるようになるこったな。話はそれからだ。」
「おう。」
そうしてガオレオによるトーゴの特訓が始まった。その一方で、山岳地帯の方でも、リコとソレイユの特訓が始まろうとしていた。
「人には魔術属性適正があるというのは知ってるな?」
「はい。その属性適正の度合いで、人は火、水、風、土、雷、氷、無属性の攻撃魔術が使えるかどうかが決まるんですよね。」
「そうだ。君は噂によると、全属性に適正があるそうだな。全属性の攻撃魔術が使えるという事はそれだけでも大きなステータスとなる。」
ソレイユはリコにそう説明した。属性の適正を知る為には、冒険者ギルドの鑑定具を使用する事でそれを知る事ができる。
「ソレイユさんは確か……。」
「私は火属性以外の適正が全く無い。ギルドにある属性適正鑑定具でそれを知った時はギルド職員にも驚かれたよ。大抵の人間は2~3属性は使えるというのにな。」
「でも、1つの属性を極めて完璧に使いこなすなんて凄いですよ。そんな貴方だからこそ、私の特訓相手に選んだんです。」
「ありがとう。攻撃魔術の威力を向上させるには、ひたすら魔術を磨くしかない。何度も何度も魔術を使い、それを自由自在に使いこなせるようになれば、その威力や、攻撃の形すら変えられる事ができる。」
ソレイユはそう言うと、手元に炎の球を形成し、それを遠くにある大岩目掛けて発射し、その大岩を炎の球によって粉砕してみせた。
「まずは初歩的な事を磨く事だな。」
「はい!」
そうして、リコとソレイユの方では、魔術の訓練が始まり、2組の過酷な特訓は幕を開けた。
トーゴの方はガオレオの高速の動きについて行けず、ただひたすら彼に打ちのめされるだけで、この特訓は過酷すぎる……だが、俺がガオレオの動きについて行けるようになるまでは終われない、とトーゴは内心思った。
リコは攻撃魔術の基本である、各属性のバレット、ブレス、ランス系の攻撃魔術を魔力が尽きるまで撃ち続けた。
その最中にそれらの魔術を発展させた魔術のイメージも脳内で思い浮かべながら特訓しているので、心も身体も疲れ果てる一方だ。
だがこうでもしないと、あのセンジュや、いつか目の前に現れるかもしれない、それと同等の力を持つ敵には勝てないと理解したリコは、なんとかその特訓をこなす事を決めた。
2組が特訓を始めてから2日が経過した。
トーゴはまだガオレオの動きにはついていけないが、なんとか彼の動きを目で追う事はできていた。
雷神具猛怒のセンジュの動きは目で追う事すらできなかったが、それと比べると、2日である程度は高速で動く敵の動きは、なんとか目で追える程度にはなっていた。
「はっ!!とうっ!どうした!?こんなもんか!?」
「くそ……目では追えるが反応できねぇ……!!」
一方リコの方は、2つのフレイムバレットを同時に撃つ、ダブルフレイムバレットを習得していた。
更にその他の魔術も威力が向上しており、それまではアドバイスをするだけだったソレイユはこれからは自分が特訓の相手をする事にした。
ソレイユが攻撃魔術をリコに向かって放ち、それをリコが魔術で相殺する、といった訓練だ。
「防いでみろ!!フレイムバレット!!」
「はい!!ダブルフレイムバレット!!」
そうして、リコとソレイユ、トーゴとガオレオの特訓は5日間続いた。その特訓の果てに、2人はそれまでよりも成長できたのだろうか……。
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