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第2章<鋼の心>編
42話「走る兵器」
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「あの子いつも1人でいるんだ。」
「友達を作るのが苦手なんだって、先生は言ってるよ。」
「そうなんだ……。」
孤児院の子供達によると、あの白髪赤眼の子は遊ぶ時も、ご飯を食べる時も1人で、他の子と仲良くするのが苦手だそうだ。
やっぱり俺みたいな部外者が首を突っ込んでいい問題じゃないんじゃ……でも、ああいう子供は見逃せない。
「そこの君も一緒に遊ぼうよ!」
俺がその子に声をかけると、その子は一瞬ビクッとして、こちらを警戒するような様子を見せた。
俺に大した事は言えない。けど……。
「僕は君の笑顔が見たいんだ。皆と一緒に遊ぶときっと楽しいよ?だからお願い!」
俺は身振り手振りを交えながら彼女を説得しようとした。
するとその子はゆっくりと物陰から出てきて、こちらに歩み寄ってきた。
俺なんかの言葉でも、彼女を動かす事ができたのなら、それは良かったと思う。
「君の名前は?」
「……ソラン……。」
俺が彼女に名前を聞くと、ソランと名乗ってくれた。
「ソランちゃん。僕は君の笑顔が見たいんだ。だから一緒に遊ぼう。」
「……うん!」
俺はなんとか子供達の輪の中にソランちゃんを入れて、一緒に遊ぶ事ができた。
子供達と鬼ごっこをしたり、長い棒を使って地面に絵を描いたりして遊んだ俺達。
後でクローザさんに聞いたんだけど、ソランちゃんはモフモフくんが好きで、俺の言葉ではなく、この格好に興味を惹かれたようだ。
まぁ、彼女が子供達の輪に入れる切っ掛けを俺が作れたのならそれで良いか。
しばらく遊んだ後、子供達の昼食の時間が来たので、クローザ先生は子供達を孤児院の中に入れた。
俺は元の体に戻り、ガオレオ、そしてクローザさんと一緒に話をした。
「ガオレオ、ここにいる子供達は……。」
「ここにはな、モンスターに親を殺されたり、親に捨てられたりした子供達が集められてるんだ。その子達をクローザさんが1人で面倒を見ている。」
そうなんだ……こんな世界だし、そういう事もあるよな……。
「俺はな、ここで育ったんだ。」
「ここで……?」
「あぁ。俺がティアマトの子だってのは知ってるだろ?俺は森の中で生まれたんだが、それをクローザ先生が拾ってくれて、俺はここに連れてこられたんだ。孤児院の子供は、15歳になるとここを出て独り立ちする事になる。15歳から仕事できるようになるからな。
俺は当時、孤児院の中で1番足が早かった。その力を活かせる場所はどこかと考えた結果、俺は冒険者になると決めたんだ。冒険者は儲けられるからな。」
「この孤児院から冒険者になる子が出てくるというのは、珍しい事でした。私としては大切な子供には、安全な暮らしをして欲しかったのですが……それを私に止める資格はありません。だからガオレオが冒険者になりたいと言った時は……一瞬止めようかと考えましたが、彼の真剣な眼差しをみて、それを止めました。」
クローザさんは、ガオレオが冒険者になる事を後押ししたそうだ。
それがあの時の自分にできる精一杯の事だと、彼女は言った。
「小さい頃のガオレオは健康優良児でした。外を元気に駆け回り、食事は残さず、勉強もできる子でした。まぁ、イタズラと称して私のお尻を触ってきた事もありましたが。」
「そ、それは悪かったです……。」
クローザさんはガオレオの過去を俺に話してくれた。
ガオレオは今も明るい性格の好青年って感じだけど、昔はそんな少年だったのか。
「でも、私がガオレオに「女性のお尻を触るような事はしてはいけません。」と言うと、彼は反省してもう私のお尻を触る事は無くなりました。」
「そ、そうですね……あの頃の俺は子供だったというかなんと言うか……。」
ガオレオは、反省のできる聞き分けの良い子だったと、クローザさんは語った。
「ガオレオは私の誇りです。そして大切な存在なのです。ガオレオ、これからも冒険者として、頑張ってくださいね。でも、無理はしてはいけませんよ。」
「クローザ先生……誇りだなんて言ってもらえて嬉しいです。俺、冒険者活動もっと頑張ります!」
ガオレオは、自分の事を大切な存在だと言ってくれたクローザさんに感謝の言葉とこれからの決意を伝えた。
俺はマリーネと喧嘩して、家を追い出された。
それはマリーネが俺を想ってやった事なんじゃないか……?
マリーネが俺の事を大切に思っているのなら、自分の命を軽く見た俺の発言にマリーネが怒るのも納得がいく。
俺は……その言葉を取り消して、マリーネと仲直りしたい……!
「ガオレオ!クローザさん!俺、用事を思い出しました!すみませんが今日はここで失礼します!」
「おう!行ってこい!」
「また会いましょう。リョータローさん。」
「はい。またどこかで!」
俺は手短にガオレオとクローザさんに別れの挨拶を済ませて、家へと戻ろうと走っていった。
鉄の身体をガシャガシャと鳴らしながら俺はマリーネの待つあの家へと帰っていく。
今の俺にやるべき事は、マリーネと仲直りする事、それだけだ!
________________
「リョータロー君、今頃何処で何してるのかしら……追い出したのはやりすぎだった気がするわ……。」
その頃、マリーネは椅子に座って、良太郎が帰ってくるのを待っていた。
彼女は良太郎を追い出した後、追い出すのは酷かったのでは無いかと思い、その行いを悔いていた。
マリーネが良太郎の帰りを待っていると、マリーネの家の扉を開ける音が聞こえた。
きっと良太郎が帰ってきたんだ。そう確信したマリーネは足早に玄関へと向かった。
「リョータロー君!」
________________
ある男は、暗がりの中1人、黙々とステーキを食べていた。
ナイフで肉を切り、フォークで小さくした肉を口に運び、その美味しさから悦に浸っていた。そして彼はボソリと呟いた。
「会いたいなぁ……良太郎君。」
「……ッ!」
そこに現れた影の一味の1人、リュウカは、彼が食べている肉の匂いに拒絶反応を起こしていた。
彼女には、それほどまでにそのステーキが醜悪な程の臭みを発していたからだ。
彼は影の一味を統べる者であり、そして良太郎の……。
「友達を作るのが苦手なんだって、先生は言ってるよ。」
「そうなんだ……。」
孤児院の子供達によると、あの白髪赤眼の子は遊ぶ時も、ご飯を食べる時も1人で、他の子と仲良くするのが苦手だそうだ。
やっぱり俺みたいな部外者が首を突っ込んでいい問題じゃないんじゃ……でも、ああいう子供は見逃せない。
「そこの君も一緒に遊ぼうよ!」
俺がその子に声をかけると、その子は一瞬ビクッとして、こちらを警戒するような様子を見せた。
俺に大した事は言えない。けど……。
「僕は君の笑顔が見たいんだ。皆と一緒に遊ぶときっと楽しいよ?だからお願い!」
俺は身振り手振りを交えながら彼女を説得しようとした。
するとその子はゆっくりと物陰から出てきて、こちらに歩み寄ってきた。
俺なんかの言葉でも、彼女を動かす事ができたのなら、それは良かったと思う。
「君の名前は?」
「……ソラン……。」
俺が彼女に名前を聞くと、ソランと名乗ってくれた。
「ソランちゃん。僕は君の笑顔が見たいんだ。だから一緒に遊ぼう。」
「……うん!」
俺はなんとか子供達の輪の中にソランちゃんを入れて、一緒に遊ぶ事ができた。
子供達と鬼ごっこをしたり、長い棒を使って地面に絵を描いたりして遊んだ俺達。
後でクローザさんに聞いたんだけど、ソランちゃんはモフモフくんが好きで、俺の言葉ではなく、この格好に興味を惹かれたようだ。
まぁ、彼女が子供達の輪に入れる切っ掛けを俺が作れたのならそれで良いか。
しばらく遊んだ後、子供達の昼食の時間が来たので、クローザ先生は子供達を孤児院の中に入れた。
俺は元の体に戻り、ガオレオ、そしてクローザさんと一緒に話をした。
「ガオレオ、ここにいる子供達は……。」
「ここにはな、モンスターに親を殺されたり、親に捨てられたりした子供達が集められてるんだ。その子達をクローザさんが1人で面倒を見ている。」
そうなんだ……こんな世界だし、そういう事もあるよな……。
「俺はな、ここで育ったんだ。」
「ここで……?」
「あぁ。俺がティアマトの子だってのは知ってるだろ?俺は森の中で生まれたんだが、それをクローザ先生が拾ってくれて、俺はここに連れてこられたんだ。孤児院の子供は、15歳になるとここを出て独り立ちする事になる。15歳から仕事できるようになるからな。
俺は当時、孤児院の中で1番足が早かった。その力を活かせる場所はどこかと考えた結果、俺は冒険者になると決めたんだ。冒険者は儲けられるからな。」
「この孤児院から冒険者になる子が出てくるというのは、珍しい事でした。私としては大切な子供には、安全な暮らしをして欲しかったのですが……それを私に止める資格はありません。だからガオレオが冒険者になりたいと言った時は……一瞬止めようかと考えましたが、彼の真剣な眼差しをみて、それを止めました。」
クローザさんは、ガオレオが冒険者になる事を後押ししたそうだ。
それがあの時の自分にできる精一杯の事だと、彼女は言った。
「小さい頃のガオレオは健康優良児でした。外を元気に駆け回り、食事は残さず、勉強もできる子でした。まぁ、イタズラと称して私のお尻を触ってきた事もありましたが。」
「そ、それは悪かったです……。」
クローザさんはガオレオの過去を俺に話してくれた。
ガオレオは今も明るい性格の好青年って感じだけど、昔はそんな少年だったのか。
「でも、私がガオレオに「女性のお尻を触るような事はしてはいけません。」と言うと、彼は反省してもう私のお尻を触る事は無くなりました。」
「そ、そうですね……あの頃の俺は子供だったというかなんと言うか……。」
ガオレオは、反省のできる聞き分けの良い子だったと、クローザさんは語った。
「ガオレオは私の誇りです。そして大切な存在なのです。ガオレオ、これからも冒険者として、頑張ってくださいね。でも、無理はしてはいけませんよ。」
「クローザ先生……誇りだなんて言ってもらえて嬉しいです。俺、冒険者活動もっと頑張ります!」
ガオレオは、自分の事を大切な存在だと言ってくれたクローザさんに感謝の言葉とこれからの決意を伝えた。
俺はマリーネと喧嘩して、家を追い出された。
それはマリーネが俺を想ってやった事なんじゃないか……?
マリーネが俺の事を大切に思っているのなら、自分の命を軽く見た俺の発言にマリーネが怒るのも納得がいく。
俺は……その言葉を取り消して、マリーネと仲直りしたい……!
「ガオレオ!クローザさん!俺、用事を思い出しました!すみませんが今日はここで失礼します!」
「おう!行ってこい!」
「また会いましょう。リョータローさん。」
「はい。またどこかで!」
俺は手短にガオレオとクローザさんに別れの挨拶を済ませて、家へと戻ろうと走っていった。
鉄の身体をガシャガシャと鳴らしながら俺はマリーネの待つあの家へと帰っていく。
今の俺にやるべき事は、マリーネと仲直りする事、それだけだ!
________________
「リョータロー君、今頃何処で何してるのかしら……追い出したのはやりすぎだった気がするわ……。」
その頃、マリーネは椅子に座って、良太郎が帰ってくるのを待っていた。
彼女は良太郎を追い出した後、追い出すのは酷かったのでは無いかと思い、その行いを悔いていた。
マリーネが良太郎の帰りを待っていると、マリーネの家の扉を開ける音が聞こえた。
きっと良太郎が帰ってきたんだ。そう確信したマリーネは足早に玄関へと向かった。
「リョータロー君!」
________________
ある男は、暗がりの中1人、黙々とステーキを食べていた。
ナイフで肉を切り、フォークで小さくした肉を口に運び、その美味しさから悦に浸っていた。そして彼はボソリと呟いた。
「会いたいなぁ……良太郎君。」
「……ッ!」
そこに現れた影の一味の1人、リュウカは、彼が食べている肉の匂いに拒絶反応を起こしていた。
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