異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第2章<鋼の心>編

41話「考える兵器」

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    決めた!ティアマトに会いに行こう!
    カノト村から帰ってきたその日、唐突ながら俺はそう決意した。
    ティアマトに会いに行くには死ぬしか無いし、俺は誰かにそんな事をして欲しくない。死ぬなんてダメだ。
    だったら俺が死ねばいいんだ。
    俺はゴーレムだから、人が死ぬのとは訳が違う。
    そう考えた俺は早速家の中で本を読んでいたマリーネにそれを打ち明けようとする。
    俺はマリーネを椅子に座らせ、その話を始めた。

「マリーネ、俺が死んでティアマトに会いに行くよ。俺はゴーレムだから死んでも問題無いでしょ?」

「!!……リョータロー君、それ本気で言ってるの?」

「え?そうだけど……。」

    次の瞬間、マリーネは椅子から立ち上がって俺の傍に来た。

「そんなのダメに決まってるじゃない。貴方はゴーレムでも、中身は人間なんでしょ?だったら自分の命は大切にしないと。」

「でも、人が死ぬよりは俺が死んだ方が……。」

「自己犠牲の精神って奴?そんなの綺麗事でしかないわ。リョータロー君には、そんな事言わないで欲しかった……。」

    マリーネはそう言って俺の提案を否定するけど、じゃあどんな策が……そう言おうと思ったけど、マリーネは俺を人として扱ってくれてる……のか?
    死んじゃいけないというのは正しい。
    彼女に言われて初めて気づいた。

「リョータロー君にはそんな事を言った罰としてお仕置が必要ね。その考えを悔い改めるまで家に帰って来ない事!どこかで頭を冷やして来なさい!」

「う……うん。」

    マリーネにそう言われたので、俺は家を追い出された。
    どこへ行こうかと考えた俺はとりあえず安全な場所に行こうと決めた。
    この辺で安全な場所と言えば王都ぐらいしかない……という訳で俺は王都へと向かった。

    マリーネが俺に冒険者カードを貸してくれたので無事王都に入る事ができた。
    王都の景色にも慣れてきた気がする。獣人や亜人のいる日常風景というのは前世では考えられなかった。

「ゴーレムじゃないか。はぐれゴーレムか?」

「でもあれマリーネさんのゴーレムだよな?」

「元気かい?ゴーレムさんよぉ!」

「あ、はい、まぁ。」

    王都の中で俺は何人かの人達に声をかけられた。
    だけど俺に悪口を言ってくるような人はいなかった。皆優しくて良い人だな。
    俺みたいな奴でも、こんなに優しくされるなんて……。

    そう考えながら歩いていると、以前来たことのある病院の前を通り過ぎた。
    ここはシャナに住人の殆どの命を奪われたサータニャ村の少年が入院していた病院だ。
    彼は元気だろうか……。
    俺はあの頃から少しでも強くなってたら良いんだけど……。

    そしてしばらく歩いていると、「孤児院」と書かれた看板が立っている建物の前に来た。
    孤児院の敷地には大きな建物と広い庭が
あり、庭では子供達が楽しそうにボールを蹴って遊んでいる。
    俺にもあんな時期があったな……としみじみしたりして。

    俺はマリーネから言われた事を思い出した……俺は反省する為にここにいるんだった。
    俺が言った事は確かに悪かった気がする。
    なんで俺はあんな事を口走ってしまった
んだろう……今になってみれば、自分の命を蔑ろにするような発言……俺の心は本当に鉄の兵器になってしまったのか……?

    いや、俺は______

「だーんなっ!」

「あっ……ガオレオ?」
   
    その時、俺の背後から俺に声をかけてきた男がいた。
    特級冒険者会議で出会った彼は確か……ガオレオ、という名前だったかな。

「ガオレオ?どうしてここに?」

「俺ァ今日は非番だ。ちょっとそこに用があってよ。」

    彼はそう言って孤児院を指さした。
    一体孤児院になんの用が……?そう思っていると、孤児院の子供達がこちらの存在に気づき、嬉しそうな表情を浮かべた。

「よう皆!ガオレオお兄ちゃんが来てやったぞ!」

「ガオレオお兄ちゃんだ!」

「ガオレオお兄ちゃんが来てくれた~!」

「ゴーレムも一緒だぞ!すっげー!」

    子供達の方にガオレオが向かっていくと、彼の周りに大勢の人だかり……いや、子供だかり?があっという間に作られた。
   ガオレオは子供達にとても人気なようだ。
    彼は孤児院の子達とどういう関係なん
だろうか。

「皆!今日はゴーレムのお兄さんが来てくれたぞ!皆と一緒に遊んでくれるんだとよ!」

「ホント!?」

「ヤッター!」

    ガオレオがそう言うと、子供達は俺の方を振り向いた。皆瞳を輝かせて俺の方を見てる……ちょっとガオレオ何言ってるの……?
    でも……子供達と遊んで気分をリフレッシュさせるのも良いかも。

「皆!僕はゴーレムのリョータローって言うんだ!仲良くしようね!」

「わーい!」

    子供と戯れるのがあまり得意ではない俺はその場のノリで子供達と遊ぶ事になってしまった。
    俺は孤児院の中に入ると、彼らは皆俺を受け入れてくれた。

「何して遊ぶ?」

「鬼ごっこしよー!」

「隠れんぼがいいな!」

「お絵描きしたいわ!」

    子供達はそれぞれがやりたい事を声高らかに挙げていき、皆が俺に自分の遊びに付き合って欲しいというような眼差しで俺を見つめていた。
    こういうのは慣れてないけど……1度やると決めた事は最後まで貫き通す!そう特撮で学んだからな。
    俺がそれらしい魔術を使えれば、日本の素晴らしい特撮番組を彼らに見せてあげたかった……。
    そこに、孤児院の院長と思しき40代ぐらいの女性が来て、ある物を俺に渡した。

「子供達はこれが好きなんです。ゴーレムの核を入れれば動くのですが、どうか貴方がこの中に入ってくれませんか?」

「あ……良いですよ。ガオレオ、俺の胸の核を取ってこの中に入れてくれない?」

「良いぜ!」

    俺は孤児院の院長、クローザさんに渡された着ぐるみのようなものに自分の核を入れられた。
    俺の身体は鉄の身体から一変、モフモフの愛くるしい動物のような見た目に変わった。

「モフモフ君だー!」

「モフモフ君かわいー!」

「ぎゅってしていい?」

    どうやらこのキャラクターはモフモフ君というらしい……ネーミングが直球すぎる。
    子供達は俺の姿を見るなりギュッと抱きついてきた。
    このモフモフ君はとても抱き心地が良いみたいだ。
    女の子にも抱きつかれた。
    子供ってのは可愛いな……いやロリコンとかショタコン的な意味じゃなくて。

    その時、孤児院の建物の中から俺を見つめる気配が1つ。
    俺はその気配を察知し、その方を見てみると、1人の女児が物陰から俺を……というか俺達を見つめていた。

   その子は普通の女児ではなかった。 
   髪色は透き通るような純白で、瞳はルビーのように煌びやかな赤色、そしておでこから2本の角が伸びていた。
    獣人……いや亜人か?どっちにせよ彼女は孤立しているのだろうか……なんとかできないものかと、俺は思考を巡らせた。

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