異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

文字の大きさ
上 下
39 / 170
第1章<鋼の体>編

39話「乗り越えるべき壁」

しおりを挟む
 セリエは力を解放し、強敵シャドーロードと5体のゴーレムを瞬く間に撃破した。   
 強力なモンスターと5体のゴーレム、これだけの戦力があればセリエとマリーネを無力化し、良太郎とティアマトへと至る道
 しるべを奪えるだろうと高を括っていたリュウカは、唖然とするしか無かった。

「やったねセリエ!」

「あんなモンスターを1人で倒すなんて凄いわ。」

 良太郎とマリーネはセリエの元に駆け寄り、2人で彼女を褒め讃えた。
 セリエの隠された実力を知った良太郎は特に彼女に対して驚きを隠せなかった。
 その傍らでハッとして目的を思い出すリュウカ。
 その隣のシャナは3人の隙を付いて鞭のように細長い影を地面から伸ばし、それを良太郎に向けて放った。

「!!」

 だがセリエが瞬時に危機を察知し、コキュートス・スピアによって影の鞭を弾いた。
 1度攻撃を仕掛けるもそれを防がれてしまったのでリョータロー達は警戒状態に入ってしまった。
 こうなったらもう良太郎は手に入れられそうに無い。

「諦めなさい……!!」

 リュウカとシャナを威嚇し、セリエは杖を構えて諦めろと2人に言い放つ。それを聞いた2人は、この場は撤退する事に決めた。

「そうですね……ではこうするとしましょう……!」

 その時、リュウカが指を鳴らすと、シャナのゴーレムの亡骸が爆発を起こし、周囲に粉塵が巻き散らされた。
    それによって視界を塞がれた良太郎達。

 彼らは相手が何をしてくるかと警戒したが、しばらくして煙が晴れた時には、シャナとリュウカの姿は無く、シャドーロードと敵ゴーレムの姿も無かった。

「シャナとリュウカは何処に……!?」

「もういないわ……気配が消えた……。」 

 警戒する良太郎とマリーネに対して、リュウカとシャナの気配を探った結果2人は近くにはいないと言って2人を安心させようとするセリエ。
    彼女の言葉を聞いて良太郎とマリーネは一安心した。

「ふぅ……これで一安心だな。」

「リョータロー……さっきは……大丈夫だった……?」

    良太郎にそう聞くセリエに対して、彼は先程自分が動けなくなった事の説明を頭の中で組み立てて、それをセリエとマリーネに説明する。

「あの、さっきはなんと言うか……過去の嫌な記憶を、トラウマを思い出しちゃって、それで動揺して動けなくなったんだ。俺は過去に、凄い残酷な光景を見た事があって……それを思い出して、体が竦んだというかなんというか……?」

    良太郎はこの説明でセリエとマリーネに伝わるだろうかと思いつつも彼女に動けなくなった理由を説明した。

「なるほど、過去の記憶とは厄介な物ね。払おうとしてもそう簡単に払えないものだもの。私は冒険者になりたての頃、モンスターに殺された人の遺体を見て、すごく怖かったっていう記憶が忘れれれないわ。」

    マリーネは自分の嫌な記憶を良太郎に話した。
    それを聞いた良太郎は、誰にでも怖い物はあるものであり、それは自分だけが抱える悩みではないのだと、なんだか安心したような気分になった。

「そう……誰にでも……怖いものはある……でも、それを乗り越えた時……人は強い心を……手に入れる事が……できるの……だから貴方も……どうか乗り越えて……。」

「セリエ……。」

 セリエは良太郎に、過去のトラウマを乗り越える事を提案した。
   トラウマを乗り越えた人の心は、強く真っ直ぐな物になる。
    セリエは良太郎にそうなって欲しいと願っているのだ。 

「セリエ……俺、頑張るよ!!相手がどんなに怖くても、俺は負けない……だから俺を応援してくれ!!」

「ええ……そうするわ……。」

    良太郎とセリエの絆は、この時僅かに、だが確かに硬くなっていた。
    生まれた世界は違っても、人は分かり合える。
    良太郎とセリエは、この時、ただの知り合いから、互いを思いやる仲間へと昇格したのだ。

「ところで……セリエ?」

「何?」

    そこにマリーネが割って入り、セリエに気になっていた事を質門した。

「私……ティアマトへと至る道しるべってものがどんな物か気になるんだけど……見せて貰えないのかしら……?」

 セリエは影の一味との戦いに必死になっていた事ですっかり忘れてしまっていた。
 2人に今まで隠していた秘密の存在「ティアマトへと至る道しるべ」が知れ渡ってしまったのだ。
    さてどうしようかと悩んだセリエは、答えを導き出す。

「そう……知られてしまったからには……ね……?」

 セリエは不気味な笑みを浮かべて魔杖を握って良太郎とマリーネを見つめた。

「まさか……知ってしまったからには、的な……!?」

「セリエ、おおお落ち着いて……?」

    知ってはいけない秘密を知ってしまったからには口封じをされる、その認識は、この異世界でも、良太郎の世界でも変わらないようで、良太郎とマリーネはセリエの視線に恐怖を覚えた。
    そしてセリエは次の瞬間……。

「なんて、冗談よ……。」

「え?」

    杖を下ろして2人に笑顔を見せた。
    それを見て驚いていいのやら喜んでいいのやらと戸惑う良太郎とマリーネ。

「仕方ないから……2人にだけは見せてあげる……ティアマトへと至る道しるべを……。」

 セリエは決意したのだ、2人にティアマトへと至る道しるべを見せる事を。
    良太郎とマリーネは果たしてどんな物を見せられるのだろうか……?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士
ファンタジー
 生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。  冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...