異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第1章<鋼の体>編

39話「乗り越えるべき壁」

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 セリエは力を解放し、強敵シャドーロードと5体のゴーレムを瞬く間に撃破した。   
 強力なモンスターと5体のゴーレム、これだけの戦力があればセリエとマリーネを無力化し、良太郎とティアマトへと至る道
 しるべを奪えるだろうと高を括っていたリュウカは、唖然とするしか無かった。

「やったねセリエ!」

「あんなモンスターを1人で倒すなんて凄いわ。」

 良太郎とマリーネはセリエの元に駆け寄り、2人で彼女を褒め讃えた。
 セリエの隠された実力を知った良太郎は特に彼女に対して驚きを隠せなかった。
 その傍らでハッとして目的を思い出すリュウカ。
 その隣のシャナは3人の隙を付いて鞭のように細長い影を地面から伸ばし、それを良太郎に向けて放った。

「!!」

 だがセリエが瞬時に危機を察知し、コキュートス・スピアによって影の鞭を弾いた。
 1度攻撃を仕掛けるもそれを防がれてしまったのでリョータロー達は警戒状態に入ってしまった。
 こうなったらもう良太郎は手に入れられそうに無い。

「諦めなさい……!!」

 リュウカとシャナを威嚇し、セリエは杖を構えて諦めろと2人に言い放つ。それを聞いた2人は、この場は撤退する事に決めた。

「そうですね……ではこうするとしましょう……!」

 その時、リュウカが指を鳴らすと、シャナのゴーレムの亡骸が爆発を起こし、周囲に粉塵が巻き散らされた。
    それによって視界を塞がれた良太郎達。

 彼らは相手が何をしてくるかと警戒したが、しばらくして煙が晴れた時には、シャナとリュウカの姿は無く、シャドーロードと敵ゴーレムの姿も無かった。

「シャナとリュウカは何処に……!?」

「もういないわ……気配が消えた……。」 

 警戒する良太郎とマリーネに対して、リュウカとシャナの気配を探った結果2人は近くにはいないと言って2人を安心させようとするセリエ。
    彼女の言葉を聞いて良太郎とマリーネは一安心した。

「ふぅ……これで一安心だな。」

「リョータロー……さっきは……大丈夫だった……?」

    良太郎にそう聞くセリエに対して、彼は先程自分が動けなくなった事の説明を頭の中で組み立てて、それをセリエとマリーネに説明する。

「あの、さっきはなんと言うか……過去の嫌な記憶を、トラウマを思い出しちゃって、それで動揺して動けなくなったんだ。俺は過去に、凄い残酷な光景を見た事があって……それを思い出して、体が竦んだというかなんというか……?」

    良太郎はこの説明でセリエとマリーネに伝わるだろうかと思いつつも彼女に動けなくなった理由を説明した。

「なるほど、過去の記憶とは厄介な物ね。払おうとしてもそう簡単に払えないものだもの。私は冒険者になりたての頃、モンスターに殺された人の遺体を見て、すごく怖かったっていう記憶が忘れれれないわ。」

    マリーネは自分の嫌な記憶を良太郎に話した。
    それを聞いた良太郎は、誰にでも怖い物はあるものであり、それは自分だけが抱える悩みではないのだと、なんだか安心したような気分になった。

「そう……誰にでも……怖いものはある……でも、それを乗り越えた時……人は強い心を……手に入れる事が……できるの……だから貴方も……どうか乗り越えて……。」

「セリエ……。」

 セリエは良太郎に、過去のトラウマを乗り越える事を提案した。
   トラウマを乗り越えた人の心は、強く真っ直ぐな物になる。
    セリエは良太郎にそうなって欲しいと願っているのだ。 

「セリエ……俺、頑張るよ!!相手がどんなに怖くても、俺は負けない……だから俺を応援してくれ!!」

「ええ……そうするわ……。」

    良太郎とセリエの絆は、この時僅かに、だが確かに硬くなっていた。
    生まれた世界は違っても、人は分かり合える。
    良太郎とセリエは、この時、ただの知り合いから、互いを思いやる仲間へと昇格したのだ。

「ところで……セリエ?」

「何?」

    そこにマリーネが割って入り、セリエに気になっていた事を質門した。

「私……ティアマトへと至る道しるべってものがどんな物か気になるんだけど……見せて貰えないのかしら……?」

 セリエは影の一味との戦いに必死になっていた事ですっかり忘れてしまっていた。
 2人に今まで隠していた秘密の存在「ティアマトへと至る道しるべ」が知れ渡ってしまったのだ。
    さてどうしようかと悩んだセリエは、答えを導き出す。

「そう……知られてしまったからには……ね……?」

 セリエは不気味な笑みを浮かべて魔杖を握って良太郎とマリーネを見つめた。

「まさか……知ってしまったからには、的な……!?」

「セリエ、おおお落ち着いて……?」

    知ってはいけない秘密を知ってしまったからには口封じをされる、その認識は、この異世界でも、良太郎の世界でも変わらないようで、良太郎とマリーネはセリエの視線に恐怖を覚えた。
    そしてセリエは次の瞬間……。

「なんて、冗談よ……。」

「え?」

    杖を下ろして2人に笑顔を見せた。
    それを見て驚いていいのやら喜んでいいのやらと戸惑う良太郎とマリーネ。

「仕方ないから……2人にだけは見せてあげる……ティアマトへと至る道しるべを……。」

 セリエは決意したのだ、2人にティアマトへと至る道しるべを見せる事を。
    良太郎とマリーネは果たしてどんな物を見せられるのだろうか……?

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