異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第1章<鋼の体>編

37話「折れない心」

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    私はお師匠様に拾われてから2年前にお師匠様がいなくなるまでの11年間、お師匠私に魔術と生きる術を叩き込まれた。
    お師匠様は魔術を教えるのが得意で、王都レガーが復興した後は私だけじゃなくレガーに住む子供達に魔術や剣術を教えていたそうだ。
  
「お師匠様見て!!フレイムバレットが使えるようになったわ!!」

「やるなぁマリーネ。お前は魔術の才能がある。将来は良い魔術師になれるだろう。」

    私が魔術を1つ覚える度に、私はお師匠様に……イブ様に褒められた。

「……お師匠様は……いなくならないでね……。」

「あぁ。」

    ある時私はお師匠様にそう言ってぐずった事がある。    
    寝てる時に王都が壊滅した日の悪夢を見た日の朝だったかしら。
    私のわがままに対してお師匠様は「もちろんだ。」と返してくれた。
    だけどお師匠様は……。

    今私の目の前には影の一味がいて、そいつらの操るモンスターが私達を襲おうと臨戦態勢に入っている。
    私も戦いに集中しなくちゃいけない。
    でも一時は忘れていても……記憶は消す事なんかできない。
    お師匠様が本当に死んだというのなら、私はその真実を受け入れたくない……受け入れるのが怖いから……。




    カノト村に現れた影の一味、リュウカとシャナは、リュウカに操られ、さらにリュウカによって強化された凶悪なモンスター、シャドーロードでマリーネとセリエを襲った。

「ゴァァァァァァ!!」

「パワーブースト!!」 

    向かってくる敵に対してセリエは自身の身体を魔術で強化、そしてシャドーロードの口に杖を咥えさせて敵の動きを止めた。
 
「マリーネ……リョータローを守って……!」

「うん!」 

    セリエはマリーネに、良太郎を守るよう指示し、彼の前に立ち塞がる。 
    良太郎は先程、過去のトラウマを思い出し戦意を喪失して動けなくなっていた。

「グォォ!!」

    シャドーロードはセリエの杖から口を離し、前足の爪で彼女を攻撃しようとする。    
    それを右に跳んで回避するセリエ。
    そんな彼女に、シャドーロードは尻尾を振って攻撃しようとする。

「ロックバレット!!」

    それに対してセリエは岩の弾丸、ロックバレットを杖から放ち、それをシャドーロードの尻尾にぶつけて、敵の尻尾攻撃を止めた。 

「グォォォ!!」

    セリエの攻撃を食らって一瞬怯むシャドーロード。その隙を見逃さずセリエは攻撃を続けようとする。

「フレイムランス!!」

    彼女は杖の先端から炎の槍、フレイムランスを撃ちそれをシャドーロードの顔面に喰らわせようとした。
    だが相手は、魔術ストライクシールドによって顔を守り、フレイムランスから身を守る。

    そしてストライクシールドは攻防一体の魔術である。
    シャドーロードはストライクシールドをセリエに向かって発射し、それによって彼女を攻撃しようとした。
    それに対してセリエは……

「魔杖ムルムル、変形……!!魔槍コキュートス・スピア……!!」

    彼女の持つ杖には、普段は使わない奥の手である変形機能を搭載していたのだ。
    杖の先から透明な水色の刃が展開され、魔杖は魔槍へと姿を変えた。
    それを振りかざしてシャドーロードの撃ったストライクシールドを真っ二つに切り裂くセリエ。

「凄い……!」

    その様子を見てそう呟く良太郎とマリーネ。
     
「ゴァァァァァァ!!」

    シャドーロードは雄叫びを上げ、翼を広げて空に飛び上がった。
    そして滞空した状態で口から紫色のブレスを放つシャドーロード。
    敵はセリエの槍が届かない空からセリエを攻撃して倒そうとしてるようだ。

「ハッ!!」

    セリエはそのブレスを喰らいそうになる直前で左に回避し、それをなんとか避ける事ができた。
    だがシャドーロードの攻撃は止まらない。
    敵の周りに2つの魔法陣が展開され、その1つからフレイムバレットが放たれた。

「フッ!!」

    それを回避するセリエ。そんな彼女の行動を予測してたかのように、シャドーロードはもう1つの魔法陣からアイスバレットをセリエ目掛けて発射した。
    魔杖ムルムルは魔槍の状態でも魔術は難なく使うことが可能なのだ。

「スラッシュバレット!!」

    セリエは負けじと三日月状の斬撃、スラッシュバレットを魔槍から放ち、それによってアイスバレットを相殺した。

「グォォォ!!」 

    その後、シャドーロードは空中から地上のセリエに向かって急降下して突進を仕掛ける。
    だがセリエはそれを回避し、敵はそのまま地上に降り立った。

「ハイアクセル!!」

    セリエは自身に速度強化魔術、ハイアクセルを施し、スピードを上昇させた。
    その状態でシャドーロードに向かって駆け出し、敵の背後に回るセリエ。
    そのままシャドーロードの背中に魔術で攻撃しようとする。しかし……。

「アイスス……!?」

    だが次の瞬間、敵の背中に生えてる無数の黒い短い棘がゴムのように伸び、それがセリエを襲おうとした。

「アイススラッシュ!!」

    しかし、セリエは魔槍に氷のオーラを纏わせ標的を切り裂く魔術、アイススラッシュを咄嗟に発動し、それによって自分に向かって伸びてくる棘を切り裂く。
    だが、セリエがシャドーロードの棘に気を取られた一瞬が命取りだった。

「ゴァァァァァァ!!」

ドゴォッ!!

    シャドーロードは魔術で自身の筋力を強化、その状態で尻尾をセリエに振りかざし、それによって彼女の身体を打ち付け、その身体を吹き飛ばした。
    セリエの細い身体は、地面に3回ほど打ち付けられ、そのまま彼女は動かなくなった。

「セリエさん……!!」

    勢いよく吹き飛ばされたセリエを見て、彼女の名前を叫ぶマリーネと良太郎。
    あのセリエが、特級冒険者のセリエがダメージを受けた。
    そのショックはこの2人には大きかった。

「さぁシャドーロード、セリエにトドメを刺しなさい!!」

    リュウカはシャドーロードに、セリエ
にトドメを刺すよう促し、それを聞いたシャドーロードは地面に転がるセリエに向かって歩いていった。

「ぐ……っ!」

    良太郎はセリエと出会ったばかりで、マリーネも彼女と友好的な関係を築いたのはつい最近の事だ。
    セリエがこのままシャドーロードにやられてしまったら……2人はせっかく出会った仲間を失ってしまう。 
    その思いが2人を動かした。

「セリエ!!今助ける……!!」 
 
「リョータロー君!!行くわよ!!」

    相手は特級冒険者と同等の強さのモンスターで、今動けるのは2級冒険者のマリーネと、戦いの経験の浅い良太郎、それでも2人は立ち上がった。
    良太郎の方は、先程過去のトラウマがフラッシュバックし戦意を喪失してたが、そんな自分に鞭を打ち、動かない身体を無理やり動かそうとした。


    シャドーロードはそんな2人を睨みつける。
    その眼光に射すくめられ、自分達にこの強敵を倒せるのか、そう思ったそ時……。

「……!!」

    その場にいた良太郎、マリーネ、リュウカ、そして戦いを静観してたシャナの目に写ったのは立ち上がるセリエの姿だった。
    身体から血を垂らし、立つのもやっとの事だが、それでもセリエは立ち上がった。
    そして、彼女は右腕に巻かれた赤い布を解き、それを自身の目を隠すように顔に巻き付けた。

「反撃……開始……!!」

    セリエがそう呟くと、布に怪しく光る紋様が浮き上がる。
    セリエは、自身の真の力を解き放つつもりだ……この戦いを終わらせる為に……。





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