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第1章<鋼の体>編
33話「迎え撃つ戦士達」
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血の匂いがする。
鼻を刺すようなとても嫌な匂いだ。
俺は朦朧とする意識の中、自分の目の前
にある「何か」に目をやった。
「林檎ちゃん……?」
それは、俺の友達、野原林檎だった。
彼女の身体は赤く染まっており、腹部から鮮血をドクドクと垂れ流していた。
そうだ、俺がこの子を……。
「そう、貴方がやったの。」
振り返ると、そこにも野原林檎はいた。
そっちの彼女は俺と同い年くらいの年齢の姿で、血を流して倒れていたのは、あの時の……あの事件が起こった時の、幼い林檎の姿をしていた。
「私と貴方は一緒にいてはいけないの。さようなら……。」
そう言って俺の目の前に立っていた林檎は闇の中へと姿を消した。
俺はそれを必死で追いかける。
今目の前から彼女が消えると、もう二度と彼女に会えなくなる気がして必死で追いかけた。
嫌だ、行かないでくれ、俺を1人にしないでくれ、林檎ちゃん______
「待って……!」
目が覚めると、俺の目の前にはにはマリーネがいた。
彼女はいつもと変わらず笑顔で俺に挨拶
を……すると思ったのだが……。
「リョータロー君……?」
「あ……。」
俺の手は、なんと彼女の胸に触れていたのだ。
夢を見ていたからだろうか、俺の手は不意に動き、彼女の胸を触っていた……。
「マ、マリーネ!?ごごごめんなさい!!」
俺は咄嗟に謝る。
これで許してくれるといいんだけど……日本じゃ女の子の胸を触るのは犯罪だし、
もしかして俺、逮捕される!?
「別にいいわよ、ゴーレムなんだから、胸を触った感触は無いでしょ?」
だがマリーネは俺を許してくれた。
その理由は「ゴーレムには触覚が無く、胸を触っても何も感じないだろうから」だそうだ。
確かにマリーネの胸に触れても、柔らかさのようなものは感じられなかった。
俺、ゴーレムだもんな。
それはそうと、昨日東の王国ミズノエの漁村、カノト村に来た俺達は、村長さんにシーグール討伐を誓った後、作戦会議をして、その後で宿に来て身体を休めたんだったな。
そして今日はシーグール討伐を決行
する日だ。
一緒にこの村に来た特級冒険者のセリエと共にモンスターを退治するんだ。
俺はそう考えながらマリーネと共に宿を出ると、そこでセリエと村人達が俺とマリーネを待っていた。
「来たわね……それじゃあ……行くわよ……。」
セリエはそう呟き、村の先にある砂浜に続く道の前へ俺達を連れてきた。
ところで、セリエって目が見えないんだよね?どうやって生活してるんだろうか……杖のようなものは持ってないし……マリーネは魔道具のお陰で普通に生活できてるって言ってたような気がするけど、あの右腕に巻いてる赤い布はなんだろう?かしてあれが……?
俺が色々と考察しているうちに俺達は海へ続く道と村を隔てる扉の前にたどり着き、村人の1人が扉の鍵を開ける。
「さぁ、行くわよリョータロー君。」
「あ、うん。」
俺はマリーネに行くよと言われて考え事を止め、彼女らと共に砂浜へと続く道を歩いていく。セリエは俺達の前を歩き、俺とマリーネがその後ろを、村人達は俺達の後ろをいている。
そして歩くこと2~3分で砂浜に到着した俺達。
そこには大きな砂浜が広がっていた。
俺の住んでた街は海に面していなかった
から、海に行く事は滅多に無かったな。
高校の頃友達と一緒に海に行った事はあるけど。
「それでは皆さん、しばらく待機しててください。」
「おう、任せな冒険者さんよぉ!」
「俺達にできる事はこれぐらいだが、囮役を全うするぜ!」
「シ、シーグールが来たら逃げてもいいって話だったよな……?」
セリエの言葉に村人達は活気よくそう返す。
ここにいる村人達は魔術が使える人達……というか、魔力を持っている人達だ。
シーグールは魔力を察知して獲物を狙う習性を持つ。
それを利用するのが今回の作戦だ。もち
ろん、村人達を危険に晒す訳にはいかないので、セリエさんが近づいてくるモンスターを察知すると村人達には逃げてもらう
事になっている。
そして、今回俺は腕を新たな装備に換装している。
それが、この村の武器屋で購入した腕装備、カットスラッシャーだ!
腕に収納された刃、アームブレードを展開しての格闘を目的としているこの腕は、近接戦に特化している。
これでシーグール達を切り裂くのだ。
本当は一昨日グルさんから買った武装の方を使いたかったけど、敵との相性の都合で使えなかった……そっちはまた別の機会に、という事で。
と俺が考えながらシーグールが浜辺に現れるのを待つこと十数分、ついにその時が来た。
「……来る……!」
セリエが海の向こうから来るシーグールの気配を感じ取り、マリーネは村人達に逃げるよう指示を出す。
「皆さん!すぐに村へ逃げてください!」
「おう!後は任せたぜ冒険者様!」
シーグールをおびき寄せてくれた村人に達村に逃げるよう促すマリーネ。
その言葉を聞いた村人達はすぐに村へと逃げていった。
後は俺達冒険者の仕事だ!
そしてついに、シーグールが海から飛び出してきた。
「ギャギャギャギャギャギャ!!」
不気味な鳴き声をあげて浜に上がってきた3匹のシーグール。
その姿は、人のような体型の身体に、魚のような顔を持つ容姿をしていた。
爪や牙は鋭く、とても危ないモンスター
なのは俺でも即座に察知できた。
「行くぞ!」
俺は前衛でシーグール達を引き受け、俺が取り逃したモンスターは後衛のセリエとマリーネが魔術で掃討するという手筈だ。
ゴーレムの俺、魔術師のマリーネ、同じく魔術師のセリエ
vs水棲食人モンスター、シーグール。
カノト村の攻防戦が、今始まった。
鼻を刺すようなとても嫌な匂いだ。
俺は朦朧とする意識の中、自分の目の前
にある「何か」に目をやった。
「林檎ちゃん……?」
それは、俺の友達、野原林檎だった。
彼女の身体は赤く染まっており、腹部から鮮血をドクドクと垂れ流していた。
そうだ、俺がこの子を……。
「そう、貴方がやったの。」
振り返ると、そこにも野原林檎はいた。
そっちの彼女は俺と同い年くらいの年齢の姿で、血を流して倒れていたのは、あの時の……あの事件が起こった時の、幼い林檎の姿をしていた。
「私と貴方は一緒にいてはいけないの。さようなら……。」
そう言って俺の目の前に立っていた林檎は闇の中へと姿を消した。
俺はそれを必死で追いかける。
今目の前から彼女が消えると、もう二度と彼女に会えなくなる気がして必死で追いかけた。
嫌だ、行かないでくれ、俺を1人にしないでくれ、林檎ちゃん______
「待って……!」
目が覚めると、俺の目の前にはにはマリーネがいた。
彼女はいつもと変わらず笑顔で俺に挨拶
を……すると思ったのだが……。
「リョータロー君……?」
「あ……。」
俺の手は、なんと彼女の胸に触れていたのだ。
夢を見ていたからだろうか、俺の手は不意に動き、彼女の胸を触っていた……。
「マ、マリーネ!?ごごごめんなさい!!」
俺は咄嗟に謝る。
これで許してくれるといいんだけど……日本じゃ女の子の胸を触るのは犯罪だし、
もしかして俺、逮捕される!?
「別にいいわよ、ゴーレムなんだから、胸を触った感触は無いでしょ?」
だがマリーネは俺を許してくれた。
その理由は「ゴーレムには触覚が無く、胸を触っても何も感じないだろうから」だそうだ。
確かにマリーネの胸に触れても、柔らかさのようなものは感じられなかった。
俺、ゴーレムだもんな。
それはそうと、昨日東の王国ミズノエの漁村、カノト村に来た俺達は、村長さんにシーグール討伐を誓った後、作戦会議をして、その後で宿に来て身体を休めたんだったな。
そして今日はシーグール討伐を決行
する日だ。
一緒にこの村に来た特級冒険者のセリエと共にモンスターを退治するんだ。
俺はそう考えながらマリーネと共に宿を出ると、そこでセリエと村人達が俺とマリーネを待っていた。
「来たわね……それじゃあ……行くわよ……。」
セリエはそう呟き、村の先にある砂浜に続く道の前へ俺達を連れてきた。
ところで、セリエって目が見えないんだよね?どうやって生活してるんだろうか……杖のようなものは持ってないし……マリーネは魔道具のお陰で普通に生活できてるって言ってたような気がするけど、あの右腕に巻いてる赤い布はなんだろう?かしてあれが……?
俺が色々と考察しているうちに俺達は海へ続く道と村を隔てる扉の前にたどり着き、村人の1人が扉の鍵を開ける。
「さぁ、行くわよリョータロー君。」
「あ、うん。」
俺はマリーネに行くよと言われて考え事を止め、彼女らと共に砂浜へと続く道を歩いていく。セリエは俺達の前を歩き、俺とマリーネがその後ろを、村人達は俺達の後ろをいている。
そして歩くこと2~3分で砂浜に到着した俺達。
そこには大きな砂浜が広がっていた。
俺の住んでた街は海に面していなかった
から、海に行く事は滅多に無かったな。
高校の頃友達と一緒に海に行った事はあるけど。
「それでは皆さん、しばらく待機しててください。」
「おう、任せな冒険者さんよぉ!」
「俺達にできる事はこれぐらいだが、囮役を全うするぜ!」
「シ、シーグールが来たら逃げてもいいって話だったよな……?」
セリエの言葉に村人達は活気よくそう返す。
ここにいる村人達は魔術が使える人達……というか、魔力を持っている人達だ。
シーグールは魔力を察知して獲物を狙う習性を持つ。
それを利用するのが今回の作戦だ。もち
ろん、村人達を危険に晒す訳にはいかないので、セリエさんが近づいてくるモンスターを察知すると村人達には逃げてもらう
事になっている。
そして、今回俺は腕を新たな装備に換装している。
それが、この村の武器屋で購入した腕装備、カットスラッシャーだ!
腕に収納された刃、アームブレードを展開しての格闘を目的としているこの腕は、近接戦に特化している。
これでシーグール達を切り裂くのだ。
本当は一昨日グルさんから買った武装の方を使いたかったけど、敵との相性の都合で使えなかった……そっちはまた別の機会に、という事で。
と俺が考えながらシーグールが浜辺に現れるのを待つこと十数分、ついにその時が来た。
「……来る……!」
セリエが海の向こうから来るシーグールの気配を感じ取り、マリーネは村人達に逃げるよう指示を出す。
「皆さん!すぐに村へ逃げてください!」
「おう!後は任せたぜ冒険者様!」
シーグールをおびき寄せてくれた村人に達村に逃げるよう促すマリーネ。
その言葉を聞いた村人達はすぐに村へと逃げていった。
後は俺達冒険者の仕事だ!
そしてついに、シーグールが海から飛び出してきた。
「ギャギャギャギャギャギャ!!」
不気味な鳴き声をあげて浜に上がってきた3匹のシーグール。
その姿は、人のような体型の身体に、魚のような顔を持つ容姿をしていた。
爪や牙は鋭く、とても危ないモンスター
なのは俺でも即座に察知できた。
「行くぞ!」
俺は前衛でシーグール達を引き受け、俺が取り逃したモンスターは後衛のセリエとマリーネが魔術で掃討するという手筈だ。
ゴーレムの俺、魔術師のマリーネ、同じく魔術師のセリエ
vs水棲食人モンスター、シーグール。
カノト村の攻防戦が、今始まった。
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