異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第1章<鋼の体>編

32話「見えぬ瞳」

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    俺とマリーネは、セリエと共に東の王国ミズノエのカノト村にやって来た。
    この村の近くに現れた人喰いモンスター、シーグールを退治する為に。

「あ……言い忘れてたけど……私……目が……見えないの……。」

    カノト村へ向かって歩いている俺達は、セリエから突然そう言われた。
    唐突にそう言われたので、一瞬困惑しまけど……この人盲目なのか……でも、アニメや漫画だと盲目のキャラってかなり強いんだよね?もしかしてセリエも……?


「そ、そうなんだ……初めて知った。」

「生まれた時から……盲目なの……マリーネには……以前……教えたわよね……?」

「うん。確か感覚を強化する魔道具を持ってるのよね?」

「マリーネとセリエは知り合いなの?」

「うん。何年も前に会ってるのよ。」

    俺達はそんなやり取りをしている内にカノト村の出入口である門の前に来た。
    門の前には門番の男性が2人いるけど、門番さんはセリエの顔を見るなり俺達に声を掛けてきた。

「セリエちゃんじゃねぇか!その2人は?」

    門番さんのうちの、老けてる方の男性がセリエにそう聞いたので、俺とマリーネは自分の名前を名乗る。

「俺、ゴーレムのリョータローです!よろしくお願いします!」

「マリーネ・エリダヌスです。セリエの友人です。」

    と、手短に自己紹介をした。

「あんたらもしかして冒険者かい?」

「はい。このゴーレムは私が使役するゴーレムで……。」

「そうかそうか!もしかしてシーグールを討伐しに来たのかい?」

「そうです。」

「そうか!ありがとよ!」

「さぁ、入りな3人とも!村長さんに会いに行くといい!」

    老けた方の門番さんはそう言うと、木で作られた門の扉をギイーッと音を立てて開けてくれた。  

「ここがカノト村か……。」

    初めて来る村を前にして、俺は思わずそう呟いた。
    石造りの建物が何件も並んでいる並んでいる……王国アストレアのサータニャ村よりは大きい村だけど、王都レガーと比べたら流石に後者の方が多いよな。

「さぁ……村長の所へ……行きましょう……。」

「村長さんには挨拶しておかないといけないからね。」

「それも……そうだけど……村長は……私の……義理の父親……でもある……。」



     村長さんとセリエは義理の親子なの
か。
    そりゃセリエはティアマトの子だから、本当の親はいないんだ……。
    そうして俺とマリーネはセリエに案内され、村長さんの家にたどり着いた。

    セリエが玄関のベルを鳴らすと中から30代ぐらいの女性が出てきて、セリエの顔を見るなり嬉しそうな表情を浮かべた。

「セリエ!久しぶりね!」

    と女性が言って、セリエの元に駆け寄って彼女に抱きついた。

「アリアお姉ちゃん…… 人前なんだよ……。」

    それに対してセリエは恥ずかしげな表情を浮かべている。
    この人はアリアさんって言うのか。

「あら?この人達は?」

「私の友達の……マリーネと……ゴーレムの……リョータロー……。」

    アリアさんは俺達の事をセリエに聞き、彼女は俺達の名前をアリアさんに教えてあげた。

「シーグール討伐クエストを受けて来ました。よろしくお願いします。」

    マリーネはアリアさんに自分達の目的を話して挨拶をしたので、俺からもそうしようとする。

「マリーネの相棒のリョータローです!よ、よろしくお願いします!」

「マリーネちゃんにリョータロー君って言うのね。よろしくね。」

「アリアお姉ちゃん……村長に……カイさんに……挨拶しに来た……。」

    そしてセリエがアリアさんにそう言うと、アリアさんは俺達を家にあげてくれた。
    ゴーレムを家にあげてくれるなんて……ゴーレムってこの世界では割と普通の存在なのかな?  
    アリアさんは俺達を村長さんのいる部屋に案内してくれた。

「貴方、セリエと、それからシーグール討伐をしに来た人達が来たわよ。」

    アリアさんは村長の部屋の扉を開けて村長にそう伝える。
    貴方って呼び方……アリアさんは村長の、カイさんの奥さんって事かな?

「入りなさい。」

    と、部屋の中から村長の声と思しい声が聞こえたので、セリエから先に部屋に入りその後でマリーネ、俺の順で部屋に入っていった。
    村長さんの部屋には本が沢山ある。何をしてる人なんだろうか。
    村長さん本人は椅子に座って机の上の書類を眺めていた。
    着てるのは白衣……医者っぽい見た目だな。

「シーグール討伐依頼、引き受けてくれてありがとう。」

    村長さんは俺達の顔を見てそう言い、俺達をソファーに座らせ自分もソファーに座った。

「今、お茶沸かしていますからね。」

    アリアさんはそう言うと、部屋を後にした。
    その後、マリーネが気になっていた事を村長さんに質問した。

「教えてください村長さん。何故ミズノエのクエスト依頼書がアストレアにあったんですか?」

    とマリーネは村長さんに聞き、それに対して彼はこう答える。

「それは……ミズノエの冒険者は謎の敵にやられてしまって、シーグールを倒せる冒険者がいなくなってしまったからだよ。」

    との事だ。
    謎の敵に……冒険者が?まさか……影の一味?ミズノエにも、影の一味の魔の手が……?

「シーグールが現れたのが1週間前。その時直ぐに私は王都にクエスト依頼書を送ったのだが、クエストを引き受ける冒険者は
来なかった。冒険者が来ない理由が気になった私は王都へ向かった。その時既に……王都のギルドが謎の敵の手によって瓦礫の山と化していたのだ。」

    と村長さんは説明して、アリアさんが持ってきたお茶を1口飲んだ。

「だからアストレアにクエスト依頼書を送ったのですね。」

「そうだ。」

「だったら……シーグールは俺達に任せてください!一匹残らずこの村には手出しさせません!」

    気づいた時には俺は立ち上がり、村長さんにそう宣言していた。
    つい勢い余ってこんな事をしてしまったんだけど……。

「そうか、なら冒険者である君たちに任せるとしよう。」

    村長さんは俺の手を握ってそう言ってくれた。
    俺はこの時思った……この人の期待に答えたい、と。

「私も頑張ります!シーグール討伐、任せてください。」

「私も……最善を……尽くす……。」

    マリーネとセリエも、俺に続いてそう宣言してくれた。
    この3人で、この村を守るんだ……!



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