異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第1章<鋼の体>編

14話「届かない手」

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   謎の少女シャナの作り出したゴーレムは、グレイザーが2体にそれよりも大きなゴーレムが1体。
    計3体のゴーレムをタウラスが倒せば、俺達は勝てるはずなのだけど……。

「いけいけ~!!」

    ここでシャナはある作戦を思いついた
ようだ。
    それは、ただひたすら遠距離からレーザー光線で攻撃する事。
    2体のグレイザーと大きなゴーレムはシャナの後ろからレーザー光線を乱射し、タウラスを攻撃してくる。
    姑息だけど、効率的な作戦ではあると思う……

「ぐっ……ッ!」

    それに対してタウラスは魔術、百獣変化でゴリラ型モンスター、ゴルドコングの剛腕に変化させた腕で身を守るしか無かった。
    さっきまで優勢だったタウラスが防戦一方だなんて……。

「アニキ!何守りに徹してるんだよ!あんな奴らさっさとやっちまえよ!」

    タウラスの仲間の少年ドラコは防戦一方のタウラスを見て、防御ではなく攻撃する事を彼に促そうとしていたが……。
 
「何言ってんの。タウラスがあの光線を一身に受けてるから私達や村の人達があれにやられないで済んでるんでしょ?」

    ドラコの言葉を隣で聞いてた、同じくタウラスの仲間のベルは彼がレーザー光線をただ受けるしかない理由を手短に説明し、ドラコはそれに納得した。
    確かに、タウラスがいなかったら俺もマリーネもあの光線でやられてるはず……。

「リョータロー君!私達でゴーレムをなんとかしましょう!」

「……うん!」

    俺はマリーネにグレイザーからタウラスを守るべく行動にうって出ようとする。
    トーゴが自由に動けるようになれば、この戦いの勝ち筋が見えるはずだと信じて。

「アイスバレット!」

「スラッシュショット!」

    俺は斬撃を飛ばす魔術、スラッシュショットを掌から放ち、マリーネは杖を構えてアイスバレットをグレイザー目掛けて撃った。

「C:!」

「:'-!」

    スラッシュショットとアイスバレットは見事に敵の核に命中した。
    マリ ーネのアイスバレットを受けたグレイザーの核は砕けて、そのゴーレムは動きを止める。
    一方、俺のスラッシュバレットの威力
は低かったのか、それをくらわせたグレイザーを仕留める事はできなかった。

「もう!またゴーレムがやられたわ!」

    3体目のゴーレムをやられてもシャナはますます焦った様子を浮かべる。
    その瞬間、敵からタウラスへ向けられていたレーザー光線の攻撃が止まった。
    タウラスをサポートするっていう俺達の目的は達成できた……!

「助かったぜ、リョータロー!マリーネちゃん!」

    ずっと防御に徹していたタウラスはこれで攻撃に転ずる事ができるようになって、
俺とマリーネに感謝する。

「こうなったら、グレイバスターちゃん!パワーアップよ!」

    その時シャナは、大きなゴーレム、グレイバスターにある命令を下す。
    シャナの命令を聞いたグレイバスターは背中から触手のような物を伸ばし、それを生き残ってるグレイザーに射し込んだ。

「な、何をするつもりだ……?」

    それを見て相手を警戒するタウラス。
    シャナはパワーアップって言ってたけど、あれは……グレイバスターがグレイザーから力を吸収しているように見えるな……。

「:111111111!!」

    どうやら俺の予想は当たったようだ。
    グレイバスターは雄叫びのような電子音を高々とあげ、力を抜かれたと思われるグレイザーは力尽きてその場に倒れ伏した。

「4iAb!!」

    そしてパワーアップしたグレイバスターは地を力強く蹴り、タウラスの元まで急接近する。

「ベヒーモスの剛角!!」

    それに負けじとタウラスは手の甲から伝説のモンスター、ベヒーモスの角を伸ばし、それを使って敵の振り降ろされた剛腕
を防いだ。
    しかし、力を得たグレイバスターはタウラスを徐々に押していってる様に見える。

「ぐっ……なんの!!」
 
    しかし、タウラスはグレイバスターの腕を無理やり振り払い、敵の核を剛角で貫こうとした。
    しかしグレイバスターはそれを許すまいと、敵はギリギリの所でベヒーモスの剛腕を右手で掴んですんでのところで攻撃を止めた。

「まだまだァ!!」

    しかしタウラスもそれに対抗し、自分の右手の角を掴んだ相手の腕を、左手の角で全力で切り落としてみせた。

「オラァ!!」

   敵の腕が切り落とされた事で切られた右手はタウラスの角を離し、それをチャンスだと見た彼はさらに続けて右手の角で敵の左手も切り落とそうとする。

「N-r!」

    だが敵も引かずに目からレーザー光線を撃ちタウラスの肩にそれを直撃させる。

「タウラス!!」

    思わず声をあげるベルとドラコ。マリーネも唾を飲みその戦いを静観している。

「……」 

    レーザー光線を受けた右肩から血を流すタウラス。
    このままではタウラスが……!

「aIgj!」  

    その隙を突いてトドメを刺そうと左手を突き出して魔術を使おうとするグレイバスター。
    マズイ、タウラスが……!そう思ったその時。

「……なんてな!」

    タウラスが目を見開きそう叫んだと思った次の瞬間、彼は勢いよく右手の角を突き出し、敵の核を刺し貫く事に成功した。

「M……Maj!」

   その予想だにしなかった攻撃を受けたグレイバスターは、最後の断末魔を上げて力尽きた。
    あの傷をものともせずに攻撃を繰り出し、まさかタウラス1人で全てのゴーレムを倒すなんて……これが特級冒険者
の実力か……!

「ウソ~!私のゴーレムちゃん達が
全滅するなんて~!」

    全てのゴーレムを倒されたシャナは、半泣きの表情で悔しそうにそう叫んだ。

「……どうだ!」

    タウラスは俺達の方を見て親指を立てて自信に満ちた表情を浮かべる。
    タウラスが勝った、つまり……これで俺達の勝ちだ!

「……な~んてね!」

……え?

「きゃあああああああ!!」

    その時、村人の女性の声が耳を劈いた。そちらを見てみると……女性の目の前の男性の村人が地面に映る女性の影から伸びる
黒い刃によって胸を刺し貫かれ
ていたのだった……。

「私の目的はこの村の人達を1度生かして希望を与えた所を再び襲撃して、皆殺しにする事だったのよ!私はその気になればこうやって簡単に村人を殺せるって事よ!あはは!」

    表情と態度を一変させてとても嬉しそうな顔で真実を明かすシャナ。
    そして村人達は次々に黒い刃によって胸を刺され、血を流しながら地面に倒れた。

「冒険者様!助け…………」

「オイ!早くこっちに……!」

    冒険者に……俺達に助けを求める村人もいた。その村人に手を指し出すタウラスやマリーネ……だがその手は届かず、あと一歩のところで村人達は影の刃に刺し貫かれて……。

「よくも!」

    俺は怒りのあまりシャナを止めようと走りだした。
    もう村人は助からないとしても、シャナは捕まえてやる……!

「シャナ!!こんな事やめ__」

    しかし、彼女の背後から伸びる黒い刃によって俺の脚は斬り裂かれ、俺の手はシャナに届かず地面に体を叩きつけられた。

「脚が……シャナ……どうしてこんな事を……!」

    俺の質問に対して、彼女は俺の元に近寄り、俺を見下しながら笑顔でこう答える。

「言ったでしょ?私は「カワイイ」ものが見たいの!苦しんで死んでいく村人達の顔は……とっても……カワイイわ!!」

    なんて事だ……こんな人間がこの世にいるなんて……それがただただ、現代社会でなんの驚異もなく生きてきた俺にとってとても恐ろしい事だった。

「じゃあやりたい事はやったから帰るわね!じゃ~ね~!」

    シャナがそう言うと、自分の足元から謎の黒いベールを作り出し、それに身を包み、黒いベールが弾け飛んだかと思うと、もうそこにはシャナはいなかった。 
    昨日見たものと同じだ。これが彼女の魔術か……?



    この日、俺達はシャナに負けた。
    守るべき村人を殺され、敵も逃がした。     
    その後新たに救助要請を受けた冒険者達が村にやって来て、村人の遺体を王都内の墓場までタウラス達と協力して運び、唯一生き残った少年は病院で保護した。
    その日の朝の出来事は、俺にとって忘れられない出来事となった……。





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