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それからというもの、魔王は私のことを四六時中近くにいさせるようになった。
それまで日中は自由に鍛錬など行っていたが、懐妊が分かってからは最初に魔王と対峙した黒い水晶のような球体のある部屋へ連れて行かれるようになった。魔王はこの球体を魔水晶と呼んでいた。
禍々しい黒紫の瘴気を発する球体は、気分が悪くなる気がしたが、魔水晶の周りには瘴気を払う結界が張られ、実際に瘴気で体調をくずすことはなかった。
ただ妊娠の症状らしく、時々腹痛や気持ち悪さにおそわれることはあり、腹痛におそわれると、魔王が腹をさすり微量に魔力をそそぐようになった。
私は日中魔水晶の間に新たに置かれたソファーやテーブルとその周辺で過ごすのが日課となった。
魔王はたいてい最初に見た黒いローブを着た男とメイド服を着た金髪の女の部下とその部屋にいる。
最初にこの部屋に連れて来られたときに、自己紹介されたが、男はゾイド、女はレイチェルという名だそうだ。
魔王はこの部屋に来ると、ほとんどの時間はひたすら球体に両手をかざし魔力を注ぎこんでいた。
「あの魔王様がこんなに過保護になられるとは」
ゾイドが言った。
「後継に何かあったら、困るであろう。」
魔王が答えた。
「奥様が心配でしょうがないんですね。」
レイチェルがニヤニヤしながら言うと、魔王は眉間に皺を寄せ、レイチェルをにらみつけた。
ふと聞き慣れない言葉に引っかかった。奥様?誰の話だ?まさか私のことか?
魔王は私のことをたまたま繁殖期にあらわれた都合のいい雌、くらいにしか思っていないだろう。
ふと一抹の不安が頭をよぎった。なるようになるだろうと、あまり考えないようにしていたが、子が生まれたらどうなるのか。私は用無しになる。だが自分の腹が大きくなるのとともに、子への情がわいてしまった。もし子が生まれ引き離されたら......私だけ人間の国へ戻されたら......
思考が暗闇に落ちていった。
それまで日中は自由に鍛錬など行っていたが、懐妊が分かってからは最初に魔王と対峙した黒い水晶のような球体のある部屋へ連れて行かれるようになった。魔王はこの球体を魔水晶と呼んでいた。
禍々しい黒紫の瘴気を発する球体は、気分が悪くなる気がしたが、魔水晶の周りには瘴気を払う結界が張られ、実際に瘴気で体調をくずすことはなかった。
ただ妊娠の症状らしく、時々腹痛や気持ち悪さにおそわれることはあり、腹痛におそわれると、魔王が腹をさすり微量に魔力をそそぐようになった。
私は日中魔水晶の間に新たに置かれたソファーやテーブルとその周辺で過ごすのが日課となった。
魔王はたいてい最初に見た黒いローブを着た男とメイド服を着た金髪の女の部下とその部屋にいる。
最初にこの部屋に連れて来られたときに、自己紹介されたが、男はゾイド、女はレイチェルという名だそうだ。
魔王はこの部屋に来ると、ほとんどの時間はひたすら球体に両手をかざし魔力を注ぎこんでいた。
「あの魔王様がこんなに過保護になられるとは」
ゾイドが言った。
「後継に何かあったら、困るであろう。」
魔王が答えた。
「奥様が心配でしょうがないんですね。」
レイチェルがニヤニヤしながら言うと、魔王は眉間に皺を寄せ、レイチェルをにらみつけた。
ふと聞き慣れない言葉に引っかかった。奥様?誰の話だ?まさか私のことか?
魔王は私のことをたまたま繁殖期にあらわれた都合のいい雌、くらいにしか思っていないだろう。
ふと一抹の不安が頭をよぎった。なるようになるだろうと、あまり考えないようにしていたが、子が生まれたらどうなるのか。私は用無しになる。だが自分の腹が大きくなるのとともに、子への情がわいてしまった。もし子が生まれ引き離されたら......私だけ人間の国へ戻されたら......
思考が暗闇に落ちていった。
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