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次に目覚めた時は布団の中だった。ここに来てからの短い間に私は一体何回気を失っているのか...。これからどうなってしまうのか考えに沈みそうになった時、
『ぐぅごごごごご......』
突然得体のしれない音が聞こえた。いやこの音は...私は思わず腹を抑えた。そういえばここに来てから何も食べていない。はっきりとした時間が分からないが、もう2日くらいは経っている気がする。
「フッ、なんだ今の音は。」
横向きに寝ていたが、後ろからだれかの手が腹に伸びてきた。この状況は...ちらっと振り返れば、やはり魔王が隣で横になっていて、私の背中側から腹に手をまわしていた。散々あんなことをされ、魔王への緊張感が薄れてしまいつつある。腕を払うのも面倒に感じ、なすがままになってしまった。
「腹が減った...」
「ほぅ...しばしまて。」
魔王が腹から手を離し起き上がった。ベッドからおりると言った。
「逃げようとしても無駄だ。この部屋のあたりは瘴気が入ってこないよう結界をはっている。だが結界から一歩でれば瘴気が満ちているからな。」
確かにここまでたどり着く間、私は魔法士ヌーンの魔法で瘴気を払ってもらっていた。直接瘴気が満ちたところへでれば、どうなるのか。それに身体のだるさから考えるとまだ身体に魔王の放った瘴気が残っている。これ以上浴びるのはよくないだろう。
「それに貴様がいなくなったら、人間の住む所には魔獣が溢れるかもしれぬな。」
「脅しているのか?」
「さてな。だが覚えておくがいい。貴様はすでに我のものだ。」
そういうと魔王は布団の上にあったらしいマントを羽織り突然消えた。
部屋を観察してみたところ、中央に大きいベッドがあり隣にサイドテーブルが置いてあるだけの広めだが簡素な部屋だった。壁は濃い灰色でベッドは黒っぽい寝具でまとめられていた。ドアは1つで、窓も1つ。脱出も考えたが、先程の魔王の言葉に踏みとどまった。瘴気への耐性もないが、何よりこれ以上魔獣に村を襲わせるわけにはいかない。
私は身体にシーツをまとって、服がないか部屋の中を探してみた。
だがこの部屋にはないようで、身体にシーツを巻いたまま再び布団の中で身体を休めた。
少しして、何かいい匂いが鼻をかすめた。これはシチューか。
「食事というものが必要だとは、人間とは面倒なものだ。まあ食べるがよい。」
声が聞こえた方を見ると、魔王が立っていた。手に何か盆のようなものを持っている。
魔王はベッド横のサイドテーブルに盆を置いた。そこには焼きたてらしきパンと具が入ったスープとスプーンがのせられていた。
腹が減っては戦はできぬ。とどこかで聞いた言葉を思い出した。魔王に出された食べ物でも、拒絶して餓死するよりはいいだろう。というか、かなりそそられる匂いだ...。
私はシーツを被って、起き上がった。
不便な格好であるがいたし方あるまい。
私はスプーンを手にスープをすくって口に運んだ。
「うまっ」
思わずつぶやいた。
濃厚なミルクと野菜の旨みがとけこんでいるようで絶妙な美味しさだった。
魔王を見るとにやりと片側の口角が上がっていた。
『ぐぅごごごごご......』
突然得体のしれない音が聞こえた。いやこの音は...私は思わず腹を抑えた。そういえばここに来てから何も食べていない。はっきりとした時間が分からないが、もう2日くらいは経っている気がする。
「フッ、なんだ今の音は。」
横向きに寝ていたが、後ろからだれかの手が腹に伸びてきた。この状況は...ちらっと振り返れば、やはり魔王が隣で横になっていて、私の背中側から腹に手をまわしていた。散々あんなことをされ、魔王への緊張感が薄れてしまいつつある。腕を払うのも面倒に感じ、なすがままになってしまった。
「腹が減った...」
「ほぅ...しばしまて。」
魔王が腹から手を離し起き上がった。ベッドからおりると言った。
「逃げようとしても無駄だ。この部屋のあたりは瘴気が入ってこないよう結界をはっている。だが結界から一歩でれば瘴気が満ちているからな。」
確かにここまでたどり着く間、私は魔法士ヌーンの魔法で瘴気を払ってもらっていた。直接瘴気が満ちたところへでれば、どうなるのか。それに身体のだるさから考えるとまだ身体に魔王の放った瘴気が残っている。これ以上浴びるのはよくないだろう。
「それに貴様がいなくなったら、人間の住む所には魔獣が溢れるかもしれぬな。」
「脅しているのか?」
「さてな。だが覚えておくがいい。貴様はすでに我のものだ。」
そういうと魔王は布団の上にあったらしいマントを羽織り突然消えた。
部屋を観察してみたところ、中央に大きいベッドがあり隣にサイドテーブルが置いてあるだけの広めだが簡素な部屋だった。壁は濃い灰色でベッドは黒っぽい寝具でまとめられていた。ドアは1つで、窓も1つ。脱出も考えたが、先程の魔王の言葉に踏みとどまった。瘴気への耐性もないが、何よりこれ以上魔獣に村を襲わせるわけにはいかない。
私は身体にシーツをまとって、服がないか部屋の中を探してみた。
だがこの部屋にはないようで、身体にシーツを巻いたまま再び布団の中で身体を休めた。
少しして、何かいい匂いが鼻をかすめた。これはシチューか。
「食事というものが必要だとは、人間とは面倒なものだ。まあ食べるがよい。」
声が聞こえた方を見ると、魔王が立っていた。手に何か盆のようなものを持っている。
魔王はベッド横のサイドテーブルに盆を置いた。そこには焼きたてらしきパンと具が入ったスープとスプーンがのせられていた。
腹が減っては戦はできぬ。とどこかで聞いた言葉を思い出した。魔王に出された食べ物でも、拒絶して餓死するよりはいいだろう。というか、かなりそそられる匂いだ...。
私はシーツを被って、起き上がった。
不便な格好であるがいたし方あるまい。
私はスプーンを手にスープをすくって口に運んだ。
「うまっ」
思わずつぶやいた。
濃厚なミルクと野菜の旨みがとけこんでいるようで絶妙な美味しさだった。
魔王を見るとにやりと片側の口角が上がっていた。
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