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私達はようやくここまで辿りついた。必ずや魔王を倒し父と兄の仇をとってみせる。
女剣士の私カトリーヌは勇者アレックス、魔法師ヌーンとともに凶暴な魔獣達を倒しながら、瘴気の森をくぐり抜けついに魔王城らしき扉の前に立った。
巨大な城を想像していたが、中流貴族の屋敷ほどの大きさだ。
「本当にここが魔王城か?」
アレックスが言うと、
「間違いないでしょう。中から凄まじい魔力の流出を感じます。」
とヌーンが言った。
私は魔力を感知することはできないが、ごくりとつばを飲み込んだ。
そして私達は、扉を押し開けた。
魔王城の中は薄暗くがらんとしていた。周囲には魔獣の気配もない。ロビーのような広い空間の中に2階へ上がる螺旋階段が見えた。
「2階中央から強い魔力を感じます。」
ヌーンが言った。私達は迷わず2階ヘ上がると、目の前に大きな扉があった。
「行くぞ」
アレックスが言った。私は
「ああ」
と言いながら改めて気合いをいれる。
大きな扉を開くと、天井が高くて広い部屋だった。
薄暗いのは1階と変わらなかったが、真ん中に禍々しい球体があるのが目に入った。直径は人1人位の大きさで、黒紫の瘴気をまとった黒っぽい水晶みたいである。見ているだけで気分が悪くなってくる。
そしてその球体を挟んで両脇に魔族らしき者が2人立っていた。向かって右にいる者は全身黒いフード付きのローブをまとっている。左にいる者は黒のワンピースに白いエプロンのメイド服だった。髪は暗くても分かる金色でツインテールに結ばれている。
ローブの者が口を開く。
「おや魔王様、人間がやって来ましたよ。」
緊張感なく、後ろを見て言った。
アレックスが1歩前に進み叫んだ。
「魔王よ、出てこい!数々の悪行、これ以上は許さない。」
すると球体の後ろから、長い黒髪と黒いマントをなびかせた者が出てきた。
そしてどんどん近ずいてくる。魔力が感知できない私にすら威圧感が迫ってくる。
これはまさに魔王に違いない。私は剣に手をかけた。
アレックスはすでに大剣を前に構えている。
ヌーンは両手で杖を持ち口のなかでぶつぶつと呪文の詠唱を始めた。
魔王は顔がはっきり分かる位の距離で立ち止まった。
長い黒髪に黒い目、色白の肌にすっと通った鼻筋と高い鼻、唇は薄く血の気がない。
今までに見たことがない美しい顔だちだ。しかし、その美しい顔を台無しにするように眉間には深いしわが刻まれていた。
魔王は眉間にしわを寄せたまま口を開いた。
「悪行とは、よく言ったものだ。」
私は叫ぶ。
「お前が化け物に村を襲わせたせいで、私の父と兄は...」
私は剣を抜きながら、斜め下から魔王に切りかかった。魔王は自身の剣を抜き弾き返した。
「ほお、女剣士か。頑丈そうだな。」
そう言う魔王の目が紅く光ったように見えた。
私は1度剣を引き次々と切りかかるが、軽くいなされてしまう。そこにタイミングをはかっていたアレックスが跳んだ。上から大剣で魔王に切りつける。切りつける直前ヌーンの魔法で大剣が光を帯びて輝いた。
輝く大剣が魔王に届くその瞬間、魔王から
瘴気の渦が発せられた。
私達は吹き飛ばされ床に叩きつけられた。
どうにか起き上がろうと試みるが、身体が言うことをきかない。それに瞬間的に大量の瘴気を浴びすぎて、吐き気もする。
これが魔王の力なのか。奥歯をかみしめた。
魔王を睨みつけると、魔王の目が今度ははっきりと紅く光った。そして紅い光に吸い込まれるかのように、私の意識は薄れていった。
女剣士の私カトリーヌは勇者アレックス、魔法師ヌーンとともに凶暴な魔獣達を倒しながら、瘴気の森をくぐり抜けついに魔王城らしき扉の前に立った。
巨大な城を想像していたが、中流貴族の屋敷ほどの大きさだ。
「本当にここが魔王城か?」
アレックスが言うと、
「間違いないでしょう。中から凄まじい魔力の流出を感じます。」
とヌーンが言った。
私は魔力を感知することはできないが、ごくりとつばを飲み込んだ。
そして私達は、扉を押し開けた。
魔王城の中は薄暗くがらんとしていた。周囲には魔獣の気配もない。ロビーのような広い空間の中に2階へ上がる螺旋階段が見えた。
「2階中央から強い魔力を感じます。」
ヌーンが言った。私達は迷わず2階ヘ上がると、目の前に大きな扉があった。
「行くぞ」
アレックスが言った。私は
「ああ」
と言いながら改めて気合いをいれる。
大きな扉を開くと、天井が高くて広い部屋だった。
薄暗いのは1階と変わらなかったが、真ん中に禍々しい球体があるのが目に入った。直径は人1人位の大きさで、黒紫の瘴気をまとった黒っぽい水晶みたいである。見ているだけで気分が悪くなってくる。
そしてその球体を挟んで両脇に魔族らしき者が2人立っていた。向かって右にいる者は全身黒いフード付きのローブをまとっている。左にいる者は黒のワンピースに白いエプロンのメイド服だった。髪は暗くても分かる金色でツインテールに結ばれている。
ローブの者が口を開く。
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緊張感なく、後ろを見て言った。
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「魔王よ、出てこい!数々の悪行、これ以上は許さない。」
すると球体の後ろから、長い黒髪と黒いマントをなびかせた者が出てきた。
そしてどんどん近ずいてくる。魔力が感知できない私にすら威圧感が迫ってくる。
これはまさに魔王に違いない。私は剣に手をかけた。
アレックスはすでに大剣を前に構えている。
ヌーンは両手で杖を持ち口のなかでぶつぶつと呪文の詠唱を始めた。
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長い黒髪に黒い目、色白の肌にすっと通った鼻筋と高い鼻、唇は薄く血の気がない。
今までに見たことがない美しい顔だちだ。しかし、その美しい顔を台無しにするように眉間には深いしわが刻まれていた。
魔王は眉間にしわを寄せたまま口を開いた。
「悪行とは、よく言ったものだ。」
私は叫ぶ。
「お前が化け物に村を襲わせたせいで、私の父と兄は...」
私は剣を抜きながら、斜め下から魔王に切りかかった。魔王は自身の剣を抜き弾き返した。
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輝く大剣が魔王に届くその瞬間、魔王から
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私達は吹き飛ばされ床に叩きつけられた。
どうにか起き上がろうと試みるが、身体が言うことをきかない。それに瞬間的に大量の瘴気を浴びすぎて、吐き気もする。
これが魔王の力なのか。奥歯をかみしめた。
魔王を睨みつけると、魔王の目が今度ははっきりと紅く光った。そして紅い光に吸い込まれるかのように、私の意識は薄れていった。
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