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第119話 東岸諸国を攻める前に
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ようやくの事で、コンザウ大陸西岸の国々を制圧して支配下に置く事ができた。特に『ツヴォーラ国』は苦労したなあ……。これからしばらくは、また侵攻を休止して支配地域の安定化に勤しむ予定だ。
「魔王様、旧『ツヴォーラ国』地域への移民、数が揃ったので送り出す許可を出してもいいかな」
「うん、頼んだよアオイ。……ふうん、報告書ではあのザルク少年も、他のほとんどの国民と一緒に旧『ツヴォーラ国』を出て行ったか。子供だし、残って国営孤児院にでも入ってもらおうかと思っていたんだが」
「全部は救えない。相手側からも、両親を奪ったわたしたちの情けなんて受けたくないだろうし」
うん、理屈はわかるんだけどね。ザルク少年の父親はそれでも、兵士としてこちらの軍と戦ったあげくの死であるんだが、母親はなあ……。母親は、暴動を起こすきっかけにするため、息子の我々に対する憎悪を煽って、ガウルグルクに無礼を働かせようとしたんだ。衆目の中で、子供が魔王の軍勢に無残に殺された、って形を取るために。
しかも母親は息子を犠牲にする報酬として、『リューム・ナアド神聖国』へと脱出する手はずを整えてたんだよね。ザルク少年、救われないよな……。
「全部は救えない、か。うん、気持ちを切り替えよう。さて、第1、第2艦隊は今現在コンザウ大陸へと出撃中だけど……。次はコンザウ大陸東海岸の国々を攻撃予定だ。そちらには先頃訓練完了した第3艦隊を派遣するつもりだけどね」
「バルゾラ大陸やアーカル大陸の西岸から、大洋を渡らせてコンザウ大陸東岸へ向かわせるのね」
「西方大洋と東方大洋は、結局は1つの巨大な大洋だからね。コンザウ大陸の奴らは理解してないけれど。調査隊によれば、大洋の間には中小の島々はあるけれど大陸は無いんだよね。」
ちなみにコンザウ大陸東岸諸国は、以前のアーカル大陸への派兵にあんまり多くの船や兵を出してない。コンザウ大陸の奴らは、アーカル大陸西の西方大洋と、コンザウ大陸東の東方大洋が1つの海だなんて思ってないからね。と言うか、この大地が球体の惑星だなんて考えてないらしい。
それで依然のアーカル大陸へ派兵した船団は、多くはコンザウ大陸西岸の諸国から、一部は南岸諸国や北岸諸国から出た。東岸諸国からは、アーカル大陸が遠すぎると言う事で、ちょっとお義理程度に出ただけなんだよね。
ちょっと冒険して東方の大洋を渡れば、すぐにアーカル大陸の西岸に到着するのに。ま、それをやられると、こちら側も面倒だから良いんだが。
「この場合、最初はまず海戦からになるかな? やっぱり東岸の諸国はまだ船舶もかなり抱えてるし。それを殲滅しないといけないだろう」
「コンザウ大陸南岸を押さえてる第1艦隊にも、手伝わせた方がいいと思う。南岸を押さえる任務があるから、全力では出撃できないだろうけれど、東方大洋を渡って来る第3艦隊を支援する程度は」
「そうだね。そして第3艦隊が制海権を取ったら、ガウルグルクの率いる侵攻軍本隊と鉄之丞たち死霊軍団、後詰の魔像軍団と改造人間兵団なんかを輸送艦や強襲揚陸艦で運んで、揚陸作戦を行わなきゃ」
占領地域の防衛と治安維持は、基本的にゼロ率いる魔像軍団が主力となってやっている。そして今現在、魔像軍団はその役割を増援として送り込まれた一般兵部隊……豚鬼、人食い鬼、大犬妖などに、段階的に任せて後方配置にしているところだ。
ちなみに犬妖たちの部隊は、あれは銃を使わせれば他の種族よりも戦力になる。そのため、当初より魔像軍団と共に動かしているので、今回も魔像軍団の配置を後方に移しているのに合わせ、犬妖らも後方に回している。無論、魔像軍団の手伝いに送り込んだ、ミズホ率いる改造人間兵団も同じくだ。
後方に回した魔像軍団、改造人間兵団、犬妖などの一部一般兵部隊は、先程言った様に主力部隊の後詰として東岸の諸国に送り込む予定なのだが……。
「うん、ミズホと改造人間兵団は、いったん呼び戻すか」
「どうして?」
「いや、改造人間兵団は現地に置いといてもいいんだけどね。ミズホは呼び戻さないといけないからね。だったら一度、改造人間兵団を全部呼び戻すかと。新たに完成した改造人間たちも加えて、再編制しないといけないし」
ミズホを呼び戻すとの言葉に、アオイは合点が行った模様だ。うん、わたしの時間も空いたし、ミズホをそろそろ改造手術しようかと思ってね。これで彼女は名実ともに、改造人間兵団の長となる。
いや、改造人間兵団も今回の拡張で、軍団に昇格しても良いかもしれないな。改造人間軍団軍団長、元帥改造人間大将ミズホ、か。
「ああ、そう言えばアオイ。君の改造はまだもうちょっと先だけれど、ミズホの昇進に先んじて君にも元帥号を贈るからね」
「え?」
「え? じゃなくて。流石に先輩で実力も上の君が元帥号貰ってないのに、ミズホにばかり元帥号贈るわけにもいかないよ。ミズホを改造したら、彼女を昇進させて元帥号贈るから、その前に」
「あ、うん」
アオイは一瞬きょとんとしていたが、すぐに顔を引き締めた。わたしの見立てでは、ミズホは改造によって、今現在のアオイとほぼ同程度の能力を身に着ける事になるな。改造前の素の段階で、ミズホとアオイにはそれだけの能力差があるわけだが。
何にせよ、ミズホでデータを取ったら、今度はアオイの改造プランにそれをフィードバックしないとな。やれやれ、また忙しくなるぞ。
「魔王様、旧『ツヴォーラ国』地域への移民、数が揃ったので送り出す許可を出してもいいかな」
「うん、頼んだよアオイ。……ふうん、報告書ではあのザルク少年も、他のほとんどの国民と一緒に旧『ツヴォーラ国』を出て行ったか。子供だし、残って国営孤児院にでも入ってもらおうかと思っていたんだが」
「全部は救えない。相手側からも、両親を奪ったわたしたちの情けなんて受けたくないだろうし」
うん、理屈はわかるんだけどね。ザルク少年の父親はそれでも、兵士としてこちらの軍と戦ったあげくの死であるんだが、母親はなあ……。母親は、暴動を起こすきっかけにするため、息子の我々に対する憎悪を煽って、ガウルグルクに無礼を働かせようとしたんだ。衆目の中で、子供が魔王の軍勢に無残に殺された、って形を取るために。
しかも母親は息子を犠牲にする報酬として、『リューム・ナアド神聖国』へと脱出する手はずを整えてたんだよね。ザルク少年、救われないよな……。
「全部は救えない、か。うん、気持ちを切り替えよう。さて、第1、第2艦隊は今現在コンザウ大陸へと出撃中だけど……。次はコンザウ大陸東海岸の国々を攻撃予定だ。そちらには先頃訓練完了した第3艦隊を派遣するつもりだけどね」
「バルゾラ大陸やアーカル大陸の西岸から、大洋を渡らせてコンザウ大陸東岸へ向かわせるのね」
「西方大洋と東方大洋は、結局は1つの巨大な大洋だからね。コンザウ大陸の奴らは理解してないけれど。調査隊によれば、大洋の間には中小の島々はあるけれど大陸は無いんだよね。」
ちなみにコンザウ大陸東岸諸国は、以前のアーカル大陸への派兵にあんまり多くの船や兵を出してない。コンザウ大陸の奴らは、アーカル大陸西の西方大洋と、コンザウ大陸東の東方大洋が1つの海だなんて思ってないからね。と言うか、この大地が球体の惑星だなんて考えてないらしい。
それで依然のアーカル大陸へ派兵した船団は、多くはコンザウ大陸西岸の諸国から、一部は南岸諸国や北岸諸国から出た。東岸諸国からは、アーカル大陸が遠すぎると言う事で、ちょっとお義理程度に出ただけなんだよね。
ちょっと冒険して東方の大洋を渡れば、すぐにアーカル大陸の西岸に到着するのに。ま、それをやられると、こちら側も面倒だから良いんだが。
「この場合、最初はまず海戦からになるかな? やっぱり東岸の諸国はまだ船舶もかなり抱えてるし。それを殲滅しないといけないだろう」
「コンザウ大陸南岸を押さえてる第1艦隊にも、手伝わせた方がいいと思う。南岸を押さえる任務があるから、全力では出撃できないだろうけれど、東方大洋を渡って来る第3艦隊を支援する程度は」
「そうだね。そして第3艦隊が制海権を取ったら、ガウルグルクの率いる侵攻軍本隊と鉄之丞たち死霊軍団、後詰の魔像軍団と改造人間兵団なんかを輸送艦や強襲揚陸艦で運んで、揚陸作戦を行わなきゃ」
占領地域の防衛と治安維持は、基本的にゼロ率いる魔像軍団が主力となってやっている。そして今現在、魔像軍団はその役割を増援として送り込まれた一般兵部隊……豚鬼、人食い鬼、大犬妖などに、段階的に任せて後方配置にしているところだ。
ちなみに犬妖たちの部隊は、あれは銃を使わせれば他の種族よりも戦力になる。そのため、当初より魔像軍団と共に動かしているので、今回も魔像軍団の配置を後方に移しているのに合わせ、犬妖らも後方に回している。無論、魔像軍団の手伝いに送り込んだ、ミズホ率いる改造人間兵団も同じくだ。
後方に回した魔像軍団、改造人間兵団、犬妖などの一部一般兵部隊は、先程言った様に主力部隊の後詰として東岸の諸国に送り込む予定なのだが……。
「うん、ミズホと改造人間兵団は、いったん呼び戻すか」
「どうして?」
「いや、改造人間兵団は現地に置いといてもいいんだけどね。ミズホは呼び戻さないといけないからね。だったら一度、改造人間兵団を全部呼び戻すかと。新たに完成した改造人間たちも加えて、再編制しないといけないし」
ミズホを呼び戻すとの言葉に、アオイは合点が行った模様だ。うん、わたしの時間も空いたし、ミズホをそろそろ改造手術しようかと思ってね。これで彼女は名実ともに、改造人間兵団の長となる。
いや、改造人間兵団も今回の拡張で、軍団に昇格しても良いかもしれないな。改造人間軍団軍団長、元帥改造人間大将ミズホ、か。
「ああ、そう言えばアオイ。君の改造はまだもうちょっと先だけれど、ミズホの昇進に先んじて君にも元帥号を贈るからね」
「え?」
「え? じゃなくて。流石に先輩で実力も上の君が元帥号貰ってないのに、ミズホにばかり元帥号贈るわけにもいかないよ。ミズホを改造したら、彼女を昇進させて元帥号贈るから、その前に」
「あ、うん」
アオイは一瞬きょとんとしていたが、すぐに顔を引き締めた。わたしの見立てでは、ミズホは改造によって、今現在のアオイとほぼ同程度の能力を身に着ける事になるな。改造前の素の段階で、ミズホとアオイにはそれだけの能力差があるわけだが。
何にせよ、ミズホでデータを取ったら、今度はアオイの改造プランにそれをフィードバックしないとな。やれやれ、また忙しくなるぞ。
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