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第15話 炬燵
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ダッフルコートを羽織りマフラーを巻いて、急いで外に出た俺。
遼太がどこに逃げるのかも分からないけど、差し出された手を握り、駆け出すままについて行く。
数日前から降り続けている雪は街を白く染め上げて、街灯に照らされた雪は微かに光を放っている。
家の前の車道は雪で踏み固められていて、黒いアスファルトは一片も見えない。
俺の手を引くダウンジャケットを着た遼太の後ろ姿は何故か楽しそうで、俺の心も浮き立ってきた。
どこに行くのだろう?
何処でもいいけど…。
走った先に赤色のテールランプが点灯している自動車があり、遼太が運転席側のサイドガラスをノックした。ウィンドウが開き、自動車の中から顔を出したのは遼太のお母さんだった。
俺が身支度をしている時に連絡したのか俺の姿を見て「こんばんわ、色々と大変みたいね。」と優しく言われ、遼太にと共に後部座席に座ることになった。
助手席にも誰か乗っており、遼太を小さくした感じの男の子が後ろを振り向き愛想よく「こんばんわ」と言ってきた。
「こんばんわ」と返したが、どうも状況が分からない。
…あれ?遼太の家族の自動車に乗せられている?
逃げるって遼太の家族に保護されること?
隣に座る遼太のジャケットの袖を引っ張ると、いつもの人懐っこい笑顔で言う。
「とりあえず俺んち行こうよ、母さんもいいって言ってるしさ。」
俺の想像していた「逃げる」とは少し違うけど、自分の家には居たくはないのでお言葉に甘えることにした。
雪道の中、自動車に揺られて10数分、暫くぶりに遼太の家に着いた。
道すがらの会話で、クラスメイトとのクリスマスパーティに参加していた遼太の送り迎えを遼太のお母さんが自動車でしていたらしい。その帰りに俺にプレゼントを渡そうと俺の家に寄ったそうだ。
この雪の中、遼太の家から遥か遠くのバイパス通り沿いのファミレスなんてとても徒歩では行けない。送り迎えをしてくれるなんて遼太のお母さんは優しい、でもこれが普通なのかな?ウチの母がおかしいだけで…。
玄関先で「入って」と言われ入ろうと思ったが、今日はクリスマスイブ、遼太の家族団らんに混じっていいのだろうか。
足を止め「迷惑じゃ…」と遼太に言うと「今は父さんもいないし、大丈夫、入ってよ」と、「遼太のお父さんは?」と聞くと「病院に入院してる」と答えた。
…そんな話は一度も聞いたことがなかった。いつもニコニコしているだけで暗い話はしてこない。遼太は遼太で俺とは違う悩みを抱えているのかもしれない。
「寒いから入って、早く入って!」と背中を押された。遼太のお母さんに「ご飯は食べてるの?」と聞かれ「はい」と答えたら、「ウチも外で済ませてきてるからちょうど良かった、ケーキは一緒に食べましょう。」と誘われた。
リビングに通されてクリスマスケーキが出てきた、遼太の弟が無邪気に喜びカラフルな蝋燭に火を灯す。
照明を消した部屋にクリスマスケーキの蝋燭が煌めいて「メリークリスマス!!」と嬉しそうに言い、頬を膨らませた小学生とみられる遼太の弟が吹き消す。
俺の家も昔はこんな時もあったなと少し懐かしくなった。今は殺伐としてるけど…。
ホントいい人達、適当に髪を切られた俺なんかを優しく扱ってくれるし、ケーキまでご馳走になってしまった。
時刻は夜の11時近くになろうとしていて、親切にしてもらったので俺の心もだいぶ落ち着いたので家に帰ろうかと思った。
遼太を突っついて「今日はありがとう、家に帰るよ。」と言ったら、「泊ってけば、いいじゃん。」と返された。
「迷惑になるからいい」と言うと台所にいる遼太のお母さんに「泊めていいよねー」と大声て叫んで「いいわよー」という返事が軽く返ってきて、泊まることになった。
遼太の弟も俺に子犬の様にじゃれてくるし「ゲームしようよ」とか言うから炬燵に入ってテレビゲームしたりして、久々に普通の家庭を堪能してしまった。
いいな、遼太の家は愛に満ちている…。
遼太は優しくて良いヤツなのも頷ける。
さすが、俺がつき合っている男…。
なんか言い回しが変だな、違和感を感じる。
隣に座る遼太は垂れた目を細めて、無邪気にゲームをしている弟を眺めている。
あのまま家にいたら、どうなってたのかな俺は…、最悪なままクリスマスを終わっていただろう。
ここは暖かで気持ちがいい。
リビングのドアが開けられて、客用布団を抱えた遼太のお母さんが「友也君のお布団、どこに敷く?客間でいいかしら」と聞いてきて遼太が「俺の部屋にしてよ」と即答し2階にある遼太の部屋向かうパタパタと階段を登る音。
遼太の部屋にあるはずのSМ小道具の首輪が見つかってないだろうかと少し心配になった。
ぬくぬくと人の家の炬燵で丸くなるなんて、布団まで用意してもらって…。
「迷惑かけて、ごめん。」と俺の横で炬燵に入っている遼太に言うと「全然、オッケー!!」といい笑顔。
炬燵テーブルに頭をのせて俺の方を見ながらしみじみと呟く。
「友也の家行って良かった。友也のお母さんにもある意味感謝したいわ俺。」
…俺んちの鬼ババアに感謝?
どういう意味?
ゲームをしている遼太の弟に「もう、寝るぞ、お前も早く寝ろよっ」と言って俺の背中を叩き席を立つように促した。
俺、遼太の部屋で寝るんだよね?
いやいやいや、、このイイ感じの流れで何かしようなんて思ってないよね。
自室のへ向かう階段を登る遼太に恐る恐る声を掛けた。
「…あのさ、一応聞くけどさ、さすがに今日はなにもしないよね。家族とかいるしさ。」
「クリスマスイブって全国的にエロいことする日じゃないの?」
すごく平然とした顔で言うから、一瞬納得しかかった。
遼太がどこに逃げるのかも分からないけど、差し出された手を握り、駆け出すままについて行く。
数日前から降り続けている雪は街を白く染め上げて、街灯に照らされた雪は微かに光を放っている。
家の前の車道は雪で踏み固められていて、黒いアスファルトは一片も見えない。
俺の手を引くダウンジャケットを着た遼太の後ろ姿は何故か楽しそうで、俺の心も浮き立ってきた。
どこに行くのだろう?
何処でもいいけど…。
走った先に赤色のテールランプが点灯している自動車があり、遼太が運転席側のサイドガラスをノックした。ウィンドウが開き、自動車の中から顔を出したのは遼太のお母さんだった。
俺が身支度をしている時に連絡したのか俺の姿を見て「こんばんわ、色々と大変みたいね。」と優しく言われ、遼太にと共に後部座席に座ることになった。
助手席にも誰か乗っており、遼太を小さくした感じの男の子が後ろを振り向き愛想よく「こんばんわ」と言ってきた。
「こんばんわ」と返したが、どうも状況が分からない。
…あれ?遼太の家族の自動車に乗せられている?
逃げるって遼太の家族に保護されること?
隣に座る遼太のジャケットの袖を引っ張ると、いつもの人懐っこい笑顔で言う。
「とりあえず俺んち行こうよ、母さんもいいって言ってるしさ。」
俺の想像していた「逃げる」とは少し違うけど、自分の家には居たくはないのでお言葉に甘えることにした。
雪道の中、自動車に揺られて10数分、暫くぶりに遼太の家に着いた。
道すがらの会話で、クラスメイトとのクリスマスパーティに参加していた遼太の送り迎えを遼太のお母さんが自動車でしていたらしい。その帰りに俺にプレゼントを渡そうと俺の家に寄ったそうだ。
この雪の中、遼太の家から遥か遠くのバイパス通り沿いのファミレスなんてとても徒歩では行けない。送り迎えをしてくれるなんて遼太のお母さんは優しい、でもこれが普通なのかな?ウチの母がおかしいだけで…。
玄関先で「入って」と言われ入ろうと思ったが、今日はクリスマスイブ、遼太の家族団らんに混じっていいのだろうか。
足を止め「迷惑じゃ…」と遼太に言うと「今は父さんもいないし、大丈夫、入ってよ」と、「遼太のお父さんは?」と聞くと「病院に入院してる」と答えた。
…そんな話は一度も聞いたことがなかった。いつもニコニコしているだけで暗い話はしてこない。遼太は遼太で俺とは違う悩みを抱えているのかもしれない。
「寒いから入って、早く入って!」と背中を押された。遼太のお母さんに「ご飯は食べてるの?」と聞かれ「はい」と答えたら、「ウチも外で済ませてきてるからちょうど良かった、ケーキは一緒に食べましょう。」と誘われた。
リビングに通されてクリスマスケーキが出てきた、遼太の弟が無邪気に喜びカラフルな蝋燭に火を灯す。
照明を消した部屋にクリスマスケーキの蝋燭が煌めいて「メリークリスマス!!」と嬉しそうに言い、頬を膨らませた小学生とみられる遼太の弟が吹き消す。
俺の家も昔はこんな時もあったなと少し懐かしくなった。今は殺伐としてるけど…。
ホントいい人達、適当に髪を切られた俺なんかを優しく扱ってくれるし、ケーキまでご馳走になってしまった。
時刻は夜の11時近くになろうとしていて、親切にしてもらったので俺の心もだいぶ落ち着いたので家に帰ろうかと思った。
遼太を突っついて「今日はありがとう、家に帰るよ。」と言ったら、「泊ってけば、いいじゃん。」と返された。
「迷惑になるからいい」と言うと台所にいる遼太のお母さんに「泊めていいよねー」と大声て叫んで「いいわよー」という返事が軽く返ってきて、泊まることになった。
遼太の弟も俺に子犬の様にじゃれてくるし「ゲームしようよ」とか言うから炬燵に入ってテレビゲームしたりして、久々に普通の家庭を堪能してしまった。
いいな、遼太の家は愛に満ちている…。
遼太は優しくて良いヤツなのも頷ける。
さすが、俺がつき合っている男…。
なんか言い回しが変だな、違和感を感じる。
隣に座る遼太は垂れた目を細めて、無邪気にゲームをしている弟を眺めている。
あのまま家にいたら、どうなってたのかな俺は…、最悪なままクリスマスを終わっていただろう。
ここは暖かで気持ちがいい。
リビングのドアが開けられて、客用布団を抱えた遼太のお母さんが「友也君のお布団、どこに敷く?客間でいいかしら」と聞いてきて遼太が「俺の部屋にしてよ」と即答し2階にある遼太の部屋向かうパタパタと階段を登る音。
遼太の部屋にあるはずのSМ小道具の首輪が見つかってないだろうかと少し心配になった。
ぬくぬくと人の家の炬燵で丸くなるなんて、布団まで用意してもらって…。
「迷惑かけて、ごめん。」と俺の横で炬燵に入っている遼太に言うと「全然、オッケー!!」といい笑顔。
炬燵テーブルに頭をのせて俺の方を見ながらしみじみと呟く。
「友也の家行って良かった。友也のお母さんにもある意味感謝したいわ俺。」
…俺んちの鬼ババアに感謝?
どういう意味?
ゲームをしている遼太の弟に「もう、寝るぞ、お前も早く寝ろよっ」と言って俺の背中を叩き席を立つように促した。
俺、遼太の部屋で寝るんだよね?
いやいやいや、、このイイ感じの流れで何かしようなんて思ってないよね。
自室のへ向かう階段を登る遼太に恐る恐る声を掛けた。
「…あのさ、一応聞くけどさ、さすがに今日はなにもしないよね。家族とかいるしさ。」
「クリスマスイブって全国的にエロいことする日じゃないの?」
すごく平然とした顔で言うから、一瞬納得しかかった。
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