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第4章 シャルマ帝国編
第59話 シリウス薬局
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公爵邸でララさんと合流し、大通りの新居を譲り受けてからの日々は鬼のように忙しく、あっという間に過ぎていった。
現代の日本でこんなこと言うと男女差別だとかって怒られそうだけど、昔の言葉に「女三人寄れば姦しい」なんてのがあるわけで、俺は今まさにそれを痛感している……
リノベーションの終わった新居に上がるなり、
「ここには料理がたくさん乗せられる大きなテーブルを置くのよ!シリウス、作って!」
「シリウス……私はこんなベッドがほしいわ」
「シリウス君、君なら家の中にお風呂……作れるんでしょ?」
……何この人たち?俺のこと大工かなんかだと思ってる?
断ろうにも3対1は明らかな劣勢、俺は渋々皆の要望通り家具やらバスタブやらを連日作り続けた。
さらに合間の時間に製薬用のキットも作成し、加熱・冷却装置や乾燥機まで作ったもんだからもうヘトヘトだ。
【スキル『日進月歩』の効果により特技『工作』を獲得しました】
【スキル『日進月歩』と特技『工作』の効果によりスキル『クラフトマン』を獲得しました】
おかげでまた趣味スキルが増えてしまった。しかしこのスキル……作業速度が段違いに早くなった。
そして最終的には、大きなベッドすら材木を切るところから初めて30分で至高の逸品レベルに仕上げられるようになった俺は、1階の店舗部分の内装もサクサクっと作りきったのだった。
っていうか肉もさばけて、薬も作れて、工芸までできちゃうとなると、俺ってこの世界なら絶対に食いっぱぐれ無いんじゃないか?
「……よし、出来た!」
全ての準備が完了し、店の棚にはポーション、解毒薬、鎮痛剤などが既にきれいに並べられている。
そこにシエナたち3人が2階からぞろぞろと降りてきた。
「おぉ~!お店っぽいわね!いいじゃない」
「シエナ……ぽいじゃなくてお店なんだよ。それから、ララさんはこれから1週間ソニアからの薬の調合レッスンと俺からの店舗経営トレーニングを受けてもらいます」
そして俺はかばんから実家でも使っている店舗運営マニュアルを薬屋用に改稿した冊子を取り出しララさんに手渡した。
「こ、こんなにぃ~!?シ、シリウスくん……お姉さんに何か恨みでもあるのかな?」
「恨みなんかありませんよ、賢者様!」
ララさんは冊子の厚みに圧倒されていたが、きっとこの人なら大丈夫だ。俺は満面の笑みでララさんにエールを送った。
「うぅぅ……シリウスくんが意地悪になった」
「ララさん、こっちは製薬のマニュアルです。1週間で、ということなので一日20ページくらいで進めれば大丈夫です……よ?」
「ソニア!?今「無理じゃない?」みたいな顔したわよね!?」
「まぁまぁララさん、要望通りゆっくり疲れの取れる風呂も作りましたし、きっと1週間頑張れますって!」
「うぅぅ……分かったわよ」
ララさんは2冊のマニュアルを受け取ると、力なくガクリとうなだれた。
「プクク……ララ、残念だったわね!」
シエナは他人事だと思って笑いをこらえるのに必死なようだ。
「……シエナにも仕事があるからね?ちょっと森に入ってこのメモにある植物を必要数集めてきてほしいんだ。夜には戻ってきていいから、集まるまでお願いね!」
俺は分厚いメモ帳をシエナに手渡した。
「……え?……えぇぇぇぇ!?しかも、こんなに???」
シエナはまさか自分に面倒ごとが振られるなんて思ってなかったんだろう、目をまんまるに見開いて驚いている。
「仕方ないんだよ、俺以外に鑑定できるのシエナしか居ないし!それに『働かざるもの食うべからず』でしょ?」
「うぅぅ……ご飯は食べたい……」
そしてシエナも打ちのめされたような顔で肩を落とした。
「あ、あの……シリウス?私はララさんに製薬を教えるだけ?」
「あ、そうだった!ソニアには講義の合間にこれを作っておいてほしいんだ!」
俺はメモの切れ端をソニアに渡した。
「えっと……ハイポーションが1、ポーションが2、解毒薬が1……これだけでいいの?」
自分だけやけに仕事が少なく、訝しむような表情のソニア……
「あ、ゴメン、単位付けてなかった!それぞれ「箱」でお願いね!あと、粉末にしておいて!」
「……やっぱり……それ、どれだけ作らせるのよ」
そしてソニアも固まってしまった。なんか、悪いことをしてしまったかな……?
「ま、まぁ……じゃぁみんな1週間頑張ろう!」
そしてそれぞれの苛酷な1週間が幕をあけた。
俺は午前中にララさんの講義をすると、昼間はクレーや公爵を手伝い、夕方からは大通りの店主たちの会合に参加した。
ちなみに、会合では俺以外の全参加者の総意によって、俺がこの町の商店組合長のようなポジションに就くことに決まった。
もちろん、海賊討伐の功績はあると思うが、店はまだ開いてもいないような新参者なわけだし……という俺の反論は見事にスルーされた。
しかし、そのおかげで非常に有意義な話もできた。実現はまだ先になりそうだけど、きっとこの町の経済はもっと大きくなる。
---1週間後---
「はぁ~、疲れた……」
講義と試験を終えたララさんが、そのままテーブルに突っ伏した。
「ララさん、お疲れ様でした。しかし、やっぱりなんだかんだで満点取っちゃうんだから流石ですね」
俺は試験に手心を加えたりはしていないし、むしろララさんの知力を信じて父ガラクの時より難しくした。
「製薬の方もバッチリでしたよ!1週間でほんとにあれだけの内容を覚えちゃうなんてすごいですね!」
ソニアもマルしかついていない答案用紙を片手にこちらにやってきた。
「うぅ……こんなに頭使ったのは王都の学校でお師匠の授業を受けてたとき以来だよ……」
アルフレドさん、学生相手にどれだけスパルタな授業やってたんだろう……?
「あ、シリウス、私も頼まれてた薬の調合終わったわよ!全部地下の倉庫に保管してあるわ」
「ソニアも流石だね!ありがとう!」
「フフフ……いいえ、大変だったけどシリウスの作った器具がすごかったからちょっと楽しくなっちゃった」
ソニアはニコリと微笑むとキッチンにハーブティを淹れに向かった。
「これで後はシエナか……確かもう少しだって言ってたけど……」
恐らく3人の中でシエナのミッションが一番大変だ。まず、一番体力を使う。さらに、植物の位置もソニアに聞いた「ありそうな場所」でしか無く、確実な正解がない中で答えを探してこなきゃいけないわけだから……
しかし、その時リビングの扉が開いてシエナが帰ってきた。
「はぁっはぁっ……シリウス!全部見つけたわよ!」
一応、毎日夜には帰ってきていたけど、今日ほど泥だらけのシエナを見たことはなかった。
「お疲れ様、シエナ。頑張ったね!」
「え?……ま、まぁぼちぼちね!私にかかれば余裕よ、余裕!」
なぜ強がる、と思いつつもその様子が可笑しかったので特に触れず、シエナによく冷えたおしぼりを出してあげた。
「これで、皆ミッションクリアです。というわけで、明日は一日オフにするから皆しっかり休んでもらって、明後日から薬屋をオープンさせたいと思います」
「「「休み!?やったー!!」」」
3人は息ぴったりに歓声を上げ、互いに手を取り合って喜んでいた。
翌日のオフは、結局みんなで過ごすことになり、日中は買い物に繰り出して夜は通りで買い集めた食材でソニアがディナーを作ってくれた。
ソニアの『料理人』スキルは一般スキルだが天性の彼女のセンスと相まって非常にレベルが高い。そして、肉の調理についても最近は慣れたようでシエナの好みの味付けをしっかりと押さえていた。
ララさんは昼間に買った葡萄酒を何本も空けて目がとろんとしている。
「シリウス君、ちょっとここに座りなしゃい!」
……前世の俺の勘がコレは120%めんどくさいことになる、と告げている。しかし同時に、ここで行かないともっとめんどくさいことになるとも……
俺は自分のグラスを持って速やかにララさんの隣に移動した。こういう時の対処法は……
①早々に1杯目を受ける
②すぐに返杯し、そのままおだてて飲ませて飲ませて飲ませる
③潰す
コレに尽きる。あ、ちなみにこの国では15歳は成人なので飲酒は問題ない。そう言えば、そもそも年齢制限があるのかもよく知らないけど。
「ラ、ララさん、どうしたんですか?」
俺は酒瓶を持って既に待ち構えているララさんの前にスッとグラスを差し出した。
「ん?よくわかってんじゃない……ほら飲みなさい」
「……では、いただきます」
俺は注がれた酒を一気に口に含んだ。
「……で、君はどっち狙いなの?やっぱ幼馴染のシエナ?それとも乙女系のソニア?」
ララさんは俺にだけ聞こえる声でつぶやくとニヤリと俺の方を見た。
「……ブッ!」
結局全ての酒を吹き出した俺、この人いきなりなんてこと言うんだ。
「何!?シリウスどうしたの!?」
「大丈夫!?」
騒ぎに気づいて近づいてくる2人……
「な、な、なんでも無い!いつもみたいにララさんにからかわれただけだから!」
「そうなの?」
「あまり飲みすぎると体に毒だよ?」
「あぁ、今日はもう飲まないよ!ララさんも今日はもうやめときまし……」
ララさんは机に突っ伏して寝ていた……
「………」
翌朝、俺はもちろんだがララさんもケロッとした表情で一階の店舗にやってきた。
「おはよう、シリウス君。魔法使えると便利よね~、二日酔いに苦しむことなんか無いわけだし。魔法使えてよかったぁ~!」
「おはようございます。そうですね、そこの解毒薬でも治せますが、安くはないですから普通は二日酔いなんかに使いませんもんね」
賢者こんなんでいいの?……そしてこの人昨日のことを覚えてるのだろうか?聞くとやぶ蛇になりそうだから聞けないけど。
「じゃぁ、今日からララさんがこの店の店長です。しばらくは俺も一緒に店に出ますが、将来的には1人で切り盛りできるように頑張ってください!」
「え、あたしが店長なの?じゃぁシリウス君は?」
ちょっとした手伝いのつもりでやってきたララさんだが、俺はこの人を店長しにしたいと思っていた。何か賢者の仕事が入ったときにはそっちを優先してもらってもちろんOK!
「俺は、結局この先も世界を見て回りたいので……魔族とかまだいっぱいいそうですし。それとも……ララさんも来ます?」
「い……いやよ!魔族なんか何回見ても死ぬほど怖いんだから!」
「じゃぁ、そういう訳なんでお願いします!売上が上がればララさんのお給料も上がりますから!」
「は~い、社長さん」
そして俺の1号店「シリウス薬局」はこの日無事オープンした。
現代の日本でこんなこと言うと男女差別だとかって怒られそうだけど、昔の言葉に「女三人寄れば姦しい」なんてのがあるわけで、俺は今まさにそれを痛感している……
リノベーションの終わった新居に上がるなり、
「ここには料理がたくさん乗せられる大きなテーブルを置くのよ!シリウス、作って!」
「シリウス……私はこんなベッドがほしいわ」
「シリウス君、君なら家の中にお風呂……作れるんでしょ?」
……何この人たち?俺のこと大工かなんかだと思ってる?
断ろうにも3対1は明らかな劣勢、俺は渋々皆の要望通り家具やらバスタブやらを連日作り続けた。
さらに合間の時間に製薬用のキットも作成し、加熱・冷却装置や乾燥機まで作ったもんだからもうヘトヘトだ。
【スキル『日進月歩』の効果により特技『工作』を獲得しました】
【スキル『日進月歩』と特技『工作』の効果によりスキル『クラフトマン』を獲得しました】
おかげでまた趣味スキルが増えてしまった。しかしこのスキル……作業速度が段違いに早くなった。
そして最終的には、大きなベッドすら材木を切るところから初めて30分で至高の逸品レベルに仕上げられるようになった俺は、1階の店舗部分の内装もサクサクっと作りきったのだった。
っていうか肉もさばけて、薬も作れて、工芸までできちゃうとなると、俺ってこの世界なら絶対に食いっぱぐれ無いんじゃないか?
「……よし、出来た!」
全ての準備が完了し、店の棚にはポーション、解毒薬、鎮痛剤などが既にきれいに並べられている。
そこにシエナたち3人が2階からぞろぞろと降りてきた。
「おぉ~!お店っぽいわね!いいじゃない」
「シエナ……ぽいじゃなくてお店なんだよ。それから、ララさんはこれから1週間ソニアからの薬の調合レッスンと俺からの店舗経営トレーニングを受けてもらいます」
そして俺はかばんから実家でも使っている店舗運営マニュアルを薬屋用に改稿した冊子を取り出しララさんに手渡した。
「こ、こんなにぃ~!?シ、シリウスくん……お姉さんに何か恨みでもあるのかな?」
「恨みなんかありませんよ、賢者様!」
ララさんは冊子の厚みに圧倒されていたが、きっとこの人なら大丈夫だ。俺は満面の笑みでララさんにエールを送った。
「うぅぅ……シリウスくんが意地悪になった」
「ララさん、こっちは製薬のマニュアルです。1週間で、ということなので一日20ページくらいで進めれば大丈夫です……よ?」
「ソニア!?今「無理じゃない?」みたいな顔したわよね!?」
「まぁまぁララさん、要望通りゆっくり疲れの取れる風呂も作りましたし、きっと1週間頑張れますって!」
「うぅぅ……分かったわよ」
ララさんは2冊のマニュアルを受け取ると、力なくガクリとうなだれた。
「プクク……ララ、残念だったわね!」
シエナは他人事だと思って笑いをこらえるのに必死なようだ。
「……シエナにも仕事があるからね?ちょっと森に入ってこのメモにある植物を必要数集めてきてほしいんだ。夜には戻ってきていいから、集まるまでお願いね!」
俺は分厚いメモ帳をシエナに手渡した。
「……え?……えぇぇぇぇ!?しかも、こんなに???」
シエナはまさか自分に面倒ごとが振られるなんて思ってなかったんだろう、目をまんまるに見開いて驚いている。
「仕方ないんだよ、俺以外に鑑定できるのシエナしか居ないし!それに『働かざるもの食うべからず』でしょ?」
「うぅぅ……ご飯は食べたい……」
そしてシエナも打ちのめされたような顔で肩を落とした。
「あ、あの……シリウス?私はララさんに製薬を教えるだけ?」
「あ、そうだった!ソニアには講義の合間にこれを作っておいてほしいんだ!」
俺はメモの切れ端をソニアに渡した。
「えっと……ハイポーションが1、ポーションが2、解毒薬が1……これだけでいいの?」
自分だけやけに仕事が少なく、訝しむような表情のソニア……
「あ、ゴメン、単位付けてなかった!それぞれ「箱」でお願いね!あと、粉末にしておいて!」
「……やっぱり……それ、どれだけ作らせるのよ」
そしてソニアも固まってしまった。なんか、悪いことをしてしまったかな……?
「ま、まぁ……じゃぁみんな1週間頑張ろう!」
そしてそれぞれの苛酷な1週間が幕をあけた。
俺は午前中にララさんの講義をすると、昼間はクレーや公爵を手伝い、夕方からは大通りの店主たちの会合に参加した。
ちなみに、会合では俺以外の全参加者の総意によって、俺がこの町の商店組合長のようなポジションに就くことに決まった。
もちろん、海賊討伐の功績はあると思うが、店はまだ開いてもいないような新参者なわけだし……という俺の反論は見事にスルーされた。
しかし、そのおかげで非常に有意義な話もできた。実現はまだ先になりそうだけど、きっとこの町の経済はもっと大きくなる。
---1週間後---
「はぁ~、疲れた……」
講義と試験を終えたララさんが、そのままテーブルに突っ伏した。
「ララさん、お疲れ様でした。しかし、やっぱりなんだかんだで満点取っちゃうんだから流石ですね」
俺は試験に手心を加えたりはしていないし、むしろララさんの知力を信じて父ガラクの時より難しくした。
「製薬の方もバッチリでしたよ!1週間でほんとにあれだけの内容を覚えちゃうなんてすごいですね!」
ソニアもマルしかついていない答案用紙を片手にこちらにやってきた。
「うぅ……こんなに頭使ったのは王都の学校でお師匠の授業を受けてたとき以来だよ……」
アルフレドさん、学生相手にどれだけスパルタな授業やってたんだろう……?
「あ、シリウス、私も頼まれてた薬の調合終わったわよ!全部地下の倉庫に保管してあるわ」
「ソニアも流石だね!ありがとう!」
「フフフ……いいえ、大変だったけどシリウスの作った器具がすごかったからちょっと楽しくなっちゃった」
ソニアはニコリと微笑むとキッチンにハーブティを淹れに向かった。
「これで後はシエナか……確かもう少しだって言ってたけど……」
恐らく3人の中でシエナのミッションが一番大変だ。まず、一番体力を使う。さらに、植物の位置もソニアに聞いた「ありそうな場所」でしか無く、確実な正解がない中で答えを探してこなきゃいけないわけだから……
しかし、その時リビングの扉が開いてシエナが帰ってきた。
「はぁっはぁっ……シリウス!全部見つけたわよ!」
一応、毎日夜には帰ってきていたけど、今日ほど泥だらけのシエナを見たことはなかった。
「お疲れ様、シエナ。頑張ったね!」
「え?……ま、まぁぼちぼちね!私にかかれば余裕よ、余裕!」
なぜ強がる、と思いつつもその様子が可笑しかったので特に触れず、シエナによく冷えたおしぼりを出してあげた。
「これで、皆ミッションクリアです。というわけで、明日は一日オフにするから皆しっかり休んでもらって、明後日から薬屋をオープンさせたいと思います」
「「「休み!?やったー!!」」」
3人は息ぴったりに歓声を上げ、互いに手を取り合って喜んでいた。
翌日のオフは、結局みんなで過ごすことになり、日中は買い物に繰り出して夜は通りで買い集めた食材でソニアがディナーを作ってくれた。
ソニアの『料理人』スキルは一般スキルだが天性の彼女のセンスと相まって非常にレベルが高い。そして、肉の調理についても最近は慣れたようでシエナの好みの味付けをしっかりと押さえていた。
ララさんは昼間に買った葡萄酒を何本も空けて目がとろんとしている。
「シリウス君、ちょっとここに座りなしゃい!」
……前世の俺の勘がコレは120%めんどくさいことになる、と告げている。しかし同時に、ここで行かないともっとめんどくさいことになるとも……
俺は自分のグラスを持って速やかにララさんの隣に移動した。こういう時の対処法は……
①早々に1杯目を受ける
②すぐに返杯し、そのままおだてて飲ませて飲ませて飲ませる
③潰す
コレに尽きる。あ、ちなみにこの国では15歳は成人なので飲酒は問題ない。そう言えば、そもそも年齢制限があるのかもよく知らないけど。
「ラ、ララさん、どうしたんですか?」
俺は酒瓶を持って既に待ち構えているララさんの前にスッとグラスを差し出した。
「ん?よくわかってんじゃない……ほら飲みなさい」
「……では、いただきます」
俺は注がれた酒を一気に口に含んだ。
「……で、君はどっち狙いなの?やっぱ幼馴染のシエナ?それとも乙女系のソニア?」
ララさんは俺にだけ聞こえる声でつぶやくとニヤリと俺の方を見た。
「……ブッ!」
結局全ての酒を吹き出した俺、この人いきなりなんてこと言うんだ。
「何!?シリウスどうしたの!?」
「大丈夫!?」
騒ぎに気づいて近づいてくる2人……
「な、な、なんでも無い!いつもみたいにララさんにからかわれただけだから!」
「そうなの?」
「あまり飲みすぎると体に毒だよ?」
「あぁ、今日はもう飲まないよ!ララさんも今日はもうやめときまし……」
ララさんは机に突っ伏して寝ていた……
「………」
翌朝、俺はもちろんだがララさんもケロッとした表情で一階の店舗にやってきた。
「おはよう、シリウス君。魔法使えると便利よね~、二日酔いに苦しむことなんか無いわけだし。魔法使えてよかったぁ~!」
「おはようございます。そうですね、そこの解毒薬でも治せますが、安くはないですから普通は二日酔いなんかに使いませんもんね」
賢者こんなんでいいの?……そしてこの人昨日のことを覚えてるのだろうか?聞くとやぶ蛇になりそうだから聞けないけど。
「じゃぁ、今日からララさんがこの店の店長です。しばらくは俺も一緒に店に出ますが、将来的には1人で切り盛りできるように頑張ってください!」
「え、あたしが店長なの?じゃぁシリウス君は?」
ちょっとした手伝いのつもりでやってきたララさんだが、俺はこの人を店長しにしたいと思っていた。何か賢者の仕事が入ったときにはそっちを優先してもらってもちろんOK!
「俺は、結局この先も世界を見て回りたいので……魔族とかまだいっぱいいそうですし。それとも……ララさんも来ます?」
「い……いやよ!魔族なんか何回見ても死ぬほど怖いんだから!」
「じゃぁ、そういう訳なんでお願いします!売上が上がればララさんのお給料も上がりますから!」
「は~い、社長さん」
そして俺の1号店「シリウス薬局」はこの日無事オープンした。
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