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第1章 幼少期編

第6話 こども店長

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 俺はガラクの店で働くことになった。まずは父の一日の仕事の流れを観察してみよう。

朝:開店・店の掃除
  客の対応①
昼:休憩
  客の対応②③
夕:閉店  

 今日来た客は3人。一人は雑談して帰っただけ、あとの一人は質の悪いポーションや、古びたフライパンなんかを購入。最後の一人は売却希望の客で、陶器の皿を売りに来た。

 なるほど、この店は中古品の買取もやってるのか。手頃な価格で品物を流せれば、所得の低いこの村の住人にも一定のニーズはありそうだな。
 ただ問題はガラクに品物の良し悪しを見分けられていないということだ。

 さっきの皿は俺の鑑定では30R(ルーツ)だったが、ガラクは50Rで買い取った。それじゃぁ転売しても客がつかない…

 結果、この日の収支は+200Rくらいだった。この調子だとガラクの収入じゃ生活がままならない。きっとローラの内職が家計を支えているのだろう。

 ……なんか、ビーフシチュー食べたのがすごく申し訳なく思えてきた……

 ちゃんと働いて恩返ししよう!


 ◇◆◇◆◇

 翌日から、俺は本格的に営業活動をやっていくことにした。

 まずはあいさつ回り!この間色々と世話になった八百屋や酒屋や飲食店から顔を出し、関係を温めておくことにした。

「こんにちは!ガラク商店のシリウスです!こないだはどうもありがとうございました!また、何か足りない物があったら教えて下さいね!」

「あらあら、小さいのにえらいねえ!分かったよ、また何かあったらよろしく頼むよ!」
「おう、この間は助かった!また頼むぞ!」

「はい!ありがとうございます!!」

 うんうん、前回いい具合にお互いに旨味があるような取引をしたからどこの店もウチの印象が良さそうだ。
 そして子供の見た目ってのはなかなか便利だ。大人たちが全く警戒しない。

 ただ、このあいだの転売なんかは別に誰でもできるし、リンゴなんか酒屋が直接八百屋に買いに行けば済んだ話だ。

 このやり方だけでずっと稼いでいくのは無理があるから、早めに商品の定期配達や専売の契約まで持っていきたい。

 ある程度いろんな店にあいさつ回りしたあと、俺は村の外れの裏山に来ていた。

「エアカッター!」

 風魔法Lv3『エアカッター』これはめちゃくちゃ便利な魔法だ。ノコギリを使っても切るのが大変な丸太がきれいにスパッと切れていく。

 俺は丸太を一本、まるでハムでもスライスするかのように薄く真っ平らな板に変えた。出来るだけ薄く切ったとはいえ、ざっと100枚以上はあるし、やはり紙に比べるとはるかに重たい。それを何往復もして自宅の庭に持ち帰った。

 庭には山積みの木の板、そしてそれに向かって黙々と筆を走らせる俺。
 気づけば日もくれかけていて、ガラクは店を閉めて自宅に戻ってきた。そして、庭先で黙々となにやら書き続けている俺を見て、どうやら店の仕事に飽きてお絵描きでも始めたんだと思ったらしい。

「シリウス、今日は昼から店にも顔を出さずに……まぁ飽きちまったんなら仕方ねえからやっぱり勉強して官僚に……ってなんだこりゃ!?」

「あ、父さん!お店に行けなくてごめんなさい、もうこんな時間になっちゃったのか!」

「いや…まぁもともと一人でやってた店だしそりゃいいんだが、これは一体何だ?」

「あぁ!これは広告って言ってね」

「広告ぅ?なんだそれは?」

「うーんと…うちの店のことをいろんな人に知ってもらうためのアイテムだよ!」

「うちの店のことを、ねぇ……ほんとにそんなの効果あるのか?」

「まぁ見ててって!」

 そして俺は会話を終了してまた筆を走らせた。

--------------------
『あ!しまった!アレがない!』
困ったときにはガラク商店をよろしくお願いします!
・生活雑貨品揃え多数!
・在庫のないものも仕入れてきます!
・お店でも個人のお宅でも仕入れ&配達承ります!

信頼第一のガラク商店!
まずはお気軽にお越しください!
住所:×××通り 2つ目の角を左!
※この板は鍋敷きとしてお使いいただけますよ!
--------------------

 広告作成なんて素人だけど、まぁこんなもんかな?ないよりはマシだろう!まずは認知してもらうところから始めなきゃね!

 最後の工夫は自己満だけど割といいと思った!
 紙は高いし、要らなくなったらすぐ捨てられるけど、木だとクシャクシャにしづらい。おまけに鍋敷きにしてもらえれば常に食卓で人の目につく。

 さぁ明日が楽しみだ!

 ◇◆◇◆◇

 翌朝、俺は朝食を終えると約100枚の鍋敷き(DM)を3回に分けて店舗や家庭に配って回った。
 まずは店舗優先だ!特に仲良くなった八百屋や酒屋には何枚か渡して常連に配ってもらうようお願いしておいた。
 残りは家庭へのポスティング!まずは子供のいそうな家庭を狙った。ママ友ネットワークはきっとこの世界にも存在するはずだ!


 全部配り終わった頃には太陽は真上に上っていた。ちょっと昼飯でも食べようかなと、自宅に戻ると……

「おいシリウス!ちょっと来い!」

  父に店の倉庫へと呼び出された。

「父さん、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもない!ちょっと前からすごい数の客が来てさばききれないんだ!」

 お!すでに反応ありか!

「じゃぁちょっと交代しよう!父さんは倉庫のチェックをお願い!何がいくつあるかできるだけ正確にまとめてくれる?」

「お、おう…わかった!」

 そして僕は店舗へと向かった!そこにいたのは主婦が数名、この間の酒屋の店主もいた。なんだ、千客万来かと思ったらそうでもないな……

 まぁいつもは一日で数名しか客が来ないんだからこれでも多いほうか。

「いらっしゃいませ!父は別のお客様の対応で手が離せなくなってしまったので、僕の方でお話を伺いますね!まずは順番に並んでください!」

 まずは酒屋の店主から…

「酒屋さん、今朝ぶりですね!」

そう言って俺はペコリこ頭を下げた。

「おう!ところでさっきの板に書いてあったことなんだけど……こないだみたいに傷物になった果物や酒の原料になるいろんな穀物をこれからも安く回してもらいたいんだが、出来るか?」

「もちろんです!少しお待ちいただければ父も戻りますので何がどれだけ必要か改めて整理させてもらっても良いですか?」

「お!出来るか!それは助かるよ!じゃぁ少し待たせてもらうぜ」

 よし、いきなり定期配達の契約に持っていけそうなのはありがたい!とりあえず、待ってもらって、次はせっかちそうな主婦の皆さんだ。

「すみません、お待たせいたしました!皆さんは何かお探しのものがありますか?」

「うちは傷薬がなくて!」
「うちは一番大きなお皿が割れちゃって!」
「うちは子供のおもちゃになりそうなものがあればなぁと思って見に来たんだけど……」

 主婦の皆さんのパワフルさは日本でもこっちでも大して違わないようだ。

「なるほどなるほど、かしこまりました!では在庫を確認しますので少しお待ちくださいね!」

 そしてガラクがメモ書きを持って戻ってきた。俺はそれをひょいと奪うと上から下へとざっと目を通した。

「お!ちょうど大皿がありましたよ!結構使い込まれてますが、まだまだものはキレイです。あとで持ってくるので確認してみてくださいね」

「まぁ!良かったわ!」

「それから……子供用のおもちゃ……っと!ありました!小さめのくまのぬいぐるみなんですがいかがです?ほつれてたところも直してあるのですぐにでもお子さんに渡してあげられますよ!」

「ほんと!?ちょっと見せて!」

「それから……傷薬傷薬……すいません!今ちょっと品切れなんですが、今日の夜頃で良ければ調達してお届けにいけますがどうでしょう?」

「え!?届けてくれるの?助かるわぁ!」

「もちろんです!じゃぁこちらに必要な個数と住所を書いてもらっていいですか?」

 奥様たちはそのあと僕が持ってきた大皿をチェックしたりくまのぬいぐるみをみんなで眺めたりしてみんなでワイワイやっている。

「お値段もちょうど良いし、ほんとに便利なお店ね!」

 奥様の一人にそう言って褒めてもらえた。しかし、まだ俺のターンだ!

「ありがとうございます!ところで皆さん、普段のお料理に使う酒やソース類なんかって、わざわざ買いに行くと重くてかさばりませんか?」

「え?……確かに、月に一回くらいだから我慢してるけどやっぱり瓶詰めだし重たいのよねぇ…」

「ですよね?やっぱりいつも他の家事でも忙しいからなかなか買いに行けないですし、やっぱり持ち運ぶのが大変ですよねぇ?」

「うんうん!」

奥様たちが食いついてきた。一方酒屋の店主は商売を妨害されたと思ったのか少し表情を曇らせている。

「ところで酒屋さん!お店には調理用の酒やお酢、ソース類なんかも充実してましたよね?」

「ん?…おう!この辺の酒屋の中じゃ一番だと自負してるぜ!」

突然話を振られた酒屋さんは、一瞬戸惑うもすぐに俺が何をしようとしているかピンときたらしい。さすがはビジネスマンだね!

「奥さん、どうでしょう?実はガラク商店では定期配達もやっていまして。こちらで皆さんの必要な分だけこちらの酒屋さんから調達して、それを毎月決まった日にご自宅までお届けできるんですが?まぁ少しだけ手間賃は頂いていますけど、やはりいつもお忙しい皆さんの貴重な時間が確保できるのは嬉しいと思いませんか?」

「う、うれしいけど……手間賃ってどのくらいなの?」

「そうですね……運ぶものの量にもよりますが、お酒やお酢の瓶数本くらいならだいたいこのくらいでどうでしょう?」

「思ったより全然安いじゃない!それなら今月からお願いできるかしら?」
「ずるいわ!うちにもお願い!」
「うちもうちも!」

「よろこんで!酒屋さん、在庫は問題ないですよね?」

「お、おう!毎度あり!」

 そして奥様たちは大満足で帰っていった。店の外まで聞こえるような声で、良かったとか助かったとか話しながら通りを歩いている。これは最高の宣伝になりそうだ!

「さて、酒屋さんお待たせしました!それから急な要求に応えてくれてありがとうございました!」

「いやいや、こちらこそ客としてきたのにとんだ儲け話にありつけたぜ!」

「これからもどうぞ宜しくお願いします!じゃぁ早速例の定期配達の件ですが……」

 その後、俺は店主と話をまとめ契約を交わした。酒屋の店主はお互いに旨みたっぷりの今回の契約に、

「父ちゃんよりボウズの方がよっぽど店長らしいな!ガハハハハ」

 といって笑いながら帰っていった。ガラクは奥様たちが帰った辺りからキョトンとしている。

「さぁ父さん!僕は薬屋で傷薬を仕入れてさっきのお客さんのところに届けてくるから店じまいお願いね!」

「……ん?お、おう!」

 そして俺は約束通り傷薬を納品して家に帰った。

【スキル『日進月歩』の効果により特技『饒舌』を獲得しました】
【スキル『日進月歩』の効果により特技『商才』を獲得しました】

 今まで忙しくて気づかなかったけど、なんだかビジネスマンにはぴったりな特技も手に入っていた。 

 この日の契約と販売から生まれる利益は月間で5000Rはくだらないだろう。特に酒屋さんとの取引がでかい!まだまだ、序の口だけどこれを皮切りにもっといろんなお店と取引をはじめて、仕事を大きくしていけるといいな!
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