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第42話 過去の話は地雷だらけ
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3ゲームほど遊んでボーリング場を後にした一行。次の場所へ向かう道のり、花音はスコア表を眺めながらご機嫌に鼻歌を歌っていた。
「知らない間にストライクがついてます! 人生初です!」
そんな彼女を横目で見ていると、前にいた3人が意味深にちらりと振り返った。唯斗はそれだけでその意図を理解する。
「お互い1つずつだね」
「はい!お揃いです♪」
出来れば一生気付かないでいて欲しい。そのストライクが、本当はG判定だったということに。
「これなんかどうだ?」
ふと立ち止まった瑞希がそんなことを聞く。指を差している先にあるのは……ダーツだ。
「中学の時に少しやった事があるんだ。上手くなると面白いぞ?」
彼女にそう説明されるも、やはりダーツは大人の遊びというイメージが強い。他の4人があまり乗り気でない表情をすると、「それならあっちにするか」と受付の方を見る。
「卓球なら私もできます!」
「いいチョイスだね~♪」
「それな」
唯斗も「いいと思う」も答えて満場一致。一行は受付に並び、卓球台を借りることにした。……しかし。
「何名様でしょうか?」
「5人で……いや、えっと……」
人数を聞かれた瞬間、瑞希の様子がおかしくなった。どうしたのかと不思議そうに見ていると、風花が彼女の肩にポンと手を置く。
「やっぱりダーツがいいんだよね~?」
「……ああ、久しぶりに見るとな」
「4人で行ってくるから、瑞希はダーツしときなよ~」
「いいのか?」
その質問に他のみんなも首を縦に振る。映画は一緒にこだわっていたけど、こっちはバラバラでいいんだね。
唯斗は女の子ってよく分からないなぁと心の中で呟いた。まあ、一番わからないというか分かりたくない人が今日はいないわけだけど。
「それじゃあ卓球4人、ダーツ1人で」
「かしこまりました」
受付を済ませると、瑞希とは「30分後に集合な」と別れ、残りの4人は卓球エリアである上の階へと向かった。
==================================
「マルちゃん、卓球が上手なんですよ!」
花音がそういうので、とりあえず唯斗が打ち合いをしてみることになった。
体育の授業ではやったことがあるから、唯斗も早くない球なら何とか打ち返せる程度の実力はある。
「いくよ」
そう声をかけてからサーブを打つと、ツーバウンドしてからレシーブされた球が戻ってくる。それをまた打ち返して……としているうちに、唯斗はとあることに気がついた。
こまるはじっと前を見つめたまま、一度も首を動かしていないのだ。それどころか、よく見てみれば視線さえ微動だにしていない。
唯斗が「どうやって返してるの?」と聞くと、彼女は「感覚」とだけ答えた。おそらく常人には分からない領域にいるのだろう。
「マルちゃんは中学で卓球部だったんだよ~」
「エースだったそうです!」
2人がそう言うと、こまるがどこか不機嫌そうな顔をした。もしかして、思い出したくない話だったのかな。
「あれ、どうして高校では続けなかったの?」
唯斗は彼女が卓球部のクラブバッグを持っているところを見た事がない。
こまるへ向けた興味がゼロから1になったのが最近とは言え、所属していたなら一度くらいは持っているところを見ていてもおかしくないはずだ。
「飽きた」
こまるはそう言うが、飽きただけならさっきのような表情はしないだろう。
単なるクラスメイトの立場で気にすることでもないのかもしれないが、唯斗にはどうも引っかかって仕方がなかった。
が、言いたくないことを無理に聞き出すのは体力と根気がいる。唯斗にはその両方が足りないのだ。
「ラリー開始です!」
花音が突然全力サーブを打ったことで、話はそこで途切れた。風花もそれに便乗して、残っているボール3つをポンポンと花音に向かって投げる。
彼女はそれを「くらえです!」とベシベシ台に叩きつけるように打ち、ボールたちはネットの向こうでもうワンバウンドする。
昔の癖が残っているのか、飛んでくるボールに一瞬で構え直したこまる。しかし……。
「……あっ」
ボールは全て高くバウンドして、彼女の頭の上を抜けていった。ぴょんぴょんとジャンプをしてみるもラケットは空を切るだけ。
最後に唯斗が軽く打った球は、ネットのギリギリのところでバウンドする。こまるはこれだけは逃さないとばかりに腕を伸ばすが、ラケットが届くことは無かった。
「……」
しゅんと落ち込んだ姿を見て、唯斗は先程の疑問の答えを理解してしまう。
「こまるが卓球をやめたのって……」
「ひみつ」
「もしかして届かないボールが……」
「ひ・み・つ!」
「……そっか」
彼女はどうしても認めたくないらしい、身長のせいでその才能を活かせなかったという事実を。
だから身長にあそこまでこだわってたんだね。
「うう、悲しいお話ですぅ……」
その後、しばらくの間こまるは落ち込み、花音は彼女の隣で静かに泣いていた。
唯斗は、自分は踏み込んではいけないところへ踏み込んでしまったのだろうかと悩みながら、淡々と風花とのラリーをし続けたのだった。
「知らない間にストライクがついてます! 人生初です!」
そんな彼女を横目で見ていると、前にいた3人が意味深にちらりと振り返った。唯斗はそれだけでその意図を理解する。
「お互い1つずつだね」
「はい!お揃いです♪」
出来れば一生気付かないでいて欲しい。そのストライクが、本当はG判定だったということに。
「これなんかどうだ?」
ふと立ち止まった瑞希がそんなことを聞く。指を差している先にあるのは……ダーツだ。
「中学の時に少しやった事があるんだ。上手くなると面白いぞ?」
彼女にそう説明されるも、やはりダーツは大人の遊びというイメージが強い。他の4人があまり乗り気でない表情をすると、「それならあっちにするか」と受付の方を見る。
「卓球なら私もできます!」
「いいチョイスだね~♪」
「それな」
唯斗も「いいと思う」も答えて満場一致。一行は受付に並び、卓球台を借りることにした。……しかし。
「何名様でしょうか?」
「5人で……いや、えっと……」
人数を聞かれた瞬間、瑞希の様子がおかしくなった。どうしたのかと不思議そうに見ていると、風花が彼女の肩にポンと手を置く。
「やっぱりダーツがいいんだよね~?」
「……ああ、久しぶりに見るとな」
「4人で行ってくるから、瑞希はダーツしときなよ~」
「いいのか?」
その質問に他のみんなも首を縦に振る。映画は一緒にこだわっていたけど、こっちはバラバラでいいんだね。
唯斗は女の子ってよく分からないなぁと心の中で呟いた。まあ、一番わからないというか分かりたくない人が今日はいないわけだけど。
「それじゃあ卓球4人、ダーツ1人で」
「かしこまりました」
受付を済ませると、瑞希とは「30分後に集合な」と別れ、残りの4人は卓球エリアである上の階へと向かった。
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「マルちゃん、卓球が上手なんですよ!」
花音がそういうので、とりあえず唯斗が打ち合いをしてみることになった。
体育の授業ではやったことがあるから、唯斗も早くない球なら何とか打ち返せる程度の実力はある。
「いくよ」
そう声をかけてからサーブを打つと、ツーバウンドしてからレシーブされた球が戻ってくる。それをまた打ち返して……としているうちに、唯斗はとあることに気がついた。
こまるはじっと前を見つめたまま、一度も首を動かしていないのだ。それどころか、よく見てみれば視線さえ微動だにしていない。
唯斗が「どうやって返してるの?」と聞くと、彼女は「感覚」とだけ答えた。おそらく常人には分からない領域にいるのだろう。
「マルちゃんは中学で卓球部だったんだよ~」
「エースだったそうです!」
2人がそう言うと、こまるがどこか不機嫌そうな顔をした。もしかして、思い出したくない話だったのかな。
「あれ、どうして高校では続けなかったの?」
唯斗は彼女が卓球部のクラブバッグを持っているところを見た事がない。
こまるへ向けた興味がゼロから1になったのが最近とは言え、所属していたなら一度くらいは持っているところを見ていてもおかしくないはずだ。
「飽きた」
こまるはそう言うが、飽きただけならさっきのような表情はしないだろう。
単なるクラスメイトの立場で気にすることでもないのかもしれないが、唯斗にはどうも引っかかって仕方がなかった。
が、言いたくないことを無理に聞き出すのは体力と根気がいる。唯斗にはその両方が足りないのだ。
「ラリー開始です!」
花音が突然全力サーブを打ったことで、話はそこで途切れた。風花もそれに便乗して、残っているボール3つをポンポンと花音に向かって投げる。
彼女はそれを「くらえです!」とベシベシ台に叩きつけるように打ち、ボールたちはネットの向こうでもうワンバウンドする。
昔の癖が残っているのか、飛んでくるボールに一瞬で構え直したこまる。しかし……。
「……あっ」
ボールは全て高くバウンドして、彼女の頭の上を抜けていった。ぴょんぴょんとジャンプをしてみるもラケットは空を切るだけ。
最後に唯斗が軽く打った球は、ネットのギリギリのところでバウンドする。こまるはこれだけは逃さないとばかりに腕を伸ばすが、ラケットが届くことは無かった。
「……」
しゅんと落ち込んだ姿を見て、唯斗は先程の疑問の答えを理解してしまう。
「こまるが卓球をやめたのって……」
「ひみつ」
「もしかして届かないボールが……」
「ひ・み・つ!」
「……そっか」
彼女はどうしても認めたくないらしい、身長のせいでその才能を活かせなかったという事実を。
だから身長にあそこまでこだわってたんだね。
「うう、悲しいお話ですぅ……」
その後、しばらくの間こまるは落ち込み、花音は彼女の隣で静かに泣いていた。
唯斗は、自分は踏み込んではいけないところへ踏み込んでしまったのだろうかと悩みながら、淡々と風花とのラリーをし続けたのだった。
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