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第37話 夏への決意
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テストが終わった数日後。今日だけで全ての教科が担任によって返却された。
いつも通り全教科85点以上をキープした唯斗は、手元にあるテストを眺めながら鼻歌を歌っている。
これから訪れる夏休みという名の長い睡眠期間に、キャラに似合わず心を躍らせているのだ。
「唯斗君はお気楽でいいねー」
隣の住人が何かを言っているが、そんなことは気にしない。夏休みは課題を前半に終わらせて、後半はたっぷりベッドくんに甘えるのだから。
「私なんて補習三昧よ。高二の夏休み、思い出作れるのかねぇ」
「へえ、赤点あったんだ?」
「ちょっと嬉しそうだなおい」
夕奈に肩パンされてジンジンと痛いが、今の唯斗はそんなことでさえ許せてしまう。
なぜなら、夏休みは夕奈に会わなくて済むから。
「赤点があった人は個数×7日間、山に監禁されるらしいわよ~?」
ヘラヘラと笑いながら担任がそんなことを言うと、教室中がザワついた。単なる噂だと思っていたことが、まさか本当だとは思っていなかったのだろう。
ぐるりと見回して、机に突っ伏している人は監禁される人達で間違いない。机くんと戯れている唯斗を除いて。
「ちょっと待ってください!」
そんな中、ここぞとばかりに夕奈が立ち上がる。彼女が赤点持ちであるという確信がある同志たちは、期待を込めてじっと見守った。
「私、山より海がいいんですけど!」
その言葉に、数人がイスごと倒れ、数人が「そうやないやろ!」とツッコミ、残りは再度項垂れる。
担任は「私もビーチでナンパされてみたいけど……」としばらく妄想に耽った後、「遊びじゃないのよ?」と優しく叱っていた。
「みんなも山より海が好きだよね?!」
しかし、夕奈はお叱りを無視して仲間を集う作戦に出る。その声に奮起するかのように、点数最弱の精鋭たちが次々と立ち上がり始めた。
「海が好きかー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
「山は嫌かー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
「海に行きたいかー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
あまりの熱量に、多数派であるはずの赤点不保持者たちが若干引いている。特に大きな音が嫌いな花音は、耳を塞いでプルプルと震えていた。
その様子をちらりと視界に入れた担任は、コツコツと足音を立てながら彼女に近付くと、そっと背中を撫でながら教室を見回す。
「あまり騒ぐと、先生怒っちゃうわよ?」
にっこり笑顔から一瞬だけ覗いた無の表情。それを見た山反乱軍は、まるで魂を抜かれたようにストンとイスに腰を下ろしていった。
「ぐぬぬ……なかなかのやり手じゃ……」
仲間を失った夕奈は為す術こそないが、心はまだ折れていない。何か策が思いつけば、沈静化された仲間をもう一度立ち上がらせることも……。
「こーら、逆らっちゃダメよ?」
いつの間にか夕奈の目の前に来ていた先生は、「めっ」と人差し指を立てて注意する。
その指先でツンと額に触れられた彼女は、驚いた表情のまま腰を下ろしてしまった。そして。
「私も監視役として一緒に行くから、頑張りましょうね♪」
「「「「「「ボク、がんばる!」」」」」」
山反乱軍の過半数を占めていた男子が寝返ったことによって、夕奈は山へ行くことを余儀なくされるのであった。
「唯斗君、助けて!」
「勉強しないのが悪いよ」
「ぐふっ……」
縋った藁にすら見捨てられた彼女は、力無く机に突っ伏して動かなくなる。
あの女教師、今年で38だとは思えないほどピチピチ。男子生徒を虜にするほどの色気まで持ち合わせているのだから、夕奈ちゃんが勝てなくても当然なのだ。
(でも、悔しい……!)
もしも自分にあれほどの色気と大人っぽさがあれば、山反乱軍は勝利を手にすることが出来たのだろうか。
夕奈は考えに考え抜いて、ついにとある結論に至った。
「私、この夏で大人の女になる!」
教室中に響き渡るほどの声は、ほとんどのクラスメイトに「え?!」と驚きの声を漏らさせる。
約4名ほど、無理だろうなという諦観の目で見ているものもいたけど。
「その前に勉強しましょうね♪」
先生に優しく諭されてしまった。
いつも通り全教科85点以上をキープした唯斗は、手元にあるテストを眺めながら鼻歌を歌っている。
これから訪れる夏休みという名の長い睡眠期間に、キャラに似合わず心を躍らせているのだ。
「唯斗君はお気楽でいいねー」
隣の住人が何かを言っているが、そんなことは気にしない。夏休みは課題を前半に終わらせて、後半はたっぷりベッドくんに甘えるのだから。
「私なんて補習三昧よ。高二の夏休み、思い出作れるのかねぇ」
「へえ、赤点あったんだ?」
「ちょっと嬉しそうだなおい」
夕奈に肩パンされてジンジンと痛いが、今の唯斗はそんなことでさえ許せてしまう。
なぜなら、夏休みは夕奈に会わなくて済むから。
「赤点があった人は個数×7日間、山に監禁されるらしいわよ~?」
ヘラヘラと笑いながら担任がそんなことを言うと、教室中がザワついた。単なる噂だと思っていたことが、まさか本当だとは思っていなかったのだろう。
ぐるりと見回して、机に突っ伏している人は監禁される人達で間違いない。机くんと戯れている唯斗を除いて。
「ちょっと待ってください!」
そんな中、ここぞとばかりに夕奈が立ち上がる。彼女が赤点持ちであるという確信がある同志たちは、期待を込めてじっと見守った。
「私、山より海がいいんですけど!」
その言葉に、数人がイスごと倒れ、数人が「そうやないやろ!」とツッコミ、残りは再度項垂れる。
担任は「私もビーチでナンパされてみたいけど……」としばらく妄想に耽った後、「遊びじゃないのよ?」と優しく叱っていた。
「みんなも山より海が好きだよね?!」
しかし、夕奈はお叱りを無視して仲間を集う作戦に出る。その声に奮起するかのように、点数最弱の精鋭たちが次々と立ち上がり始めた。
「海が好きかー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
「山は嫌かー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
「海に行きたいかー!」
「「「「「「いえーい!」」」」」」
あまりの熱量に、多数派であるはずの赤点不保持者たちが若干引いている。特に大きな音が嫌いな花音は、耳を塞いでプルプルと震えていた。
その様子をちらりと視界に入れた担任は、コツコツと足音を立てながら彼女に近付くと、そっと背中を撫でながら教室を見回す。
「あまり騒ぐと、先生怒っちゃうわよ?」
にっこり笑顔から一瞬だけ覗いた無の表情。それを見た山反乱軍は、まるで魂を抜かれたようにストンとイスに腰を下ろしていった。
「ぐぬぬ……なかなかのやり手じゃ……」
仲間を失った夕奈は為す術こそないが、心はまだ折れていない。何か策が思いつけば、沈静化された仲間をもう一度立ち上がらせることも……。
「こーら、逆らっちゃダメよ?」
いつの間にか夕奈の目の前に来ていた先生は、「めっ」と人差し指を立てて注意する。
その指先でツンと額に触れられた彼女は、驚いた表情のまま腰を下ろしてしまった。そして。
「私も監視役として一緒に行くから、頑張りましょうね♪」
「「「「「「ボク、がんばる!」」」」」」
山反乱軍の過半数を占めていた男子が寝返ったことによって、夕奈は山へ行くことを余儀なくされるのであった。
「唯斗君、助けて!」
「勉強しないのが悪いよ」
「ぐふっ……」
縋った藁にすら見捨てられた彼女は、力無く机に突っ伏して動かなくなる。
あの女教師、今年で38だとは思えないほどピチピチ。男子生徒を虜にするほどの色気まで持ち合わせているのだから、夕奈ちゃんが勝てなくても当然なのだ。
(でも、悔しい……!)
もしも自分にあれほどの色気と大人っぽさがあれば、山反乱軍は勝利を手にすることが出来たのだろうか。
夕奈は考えに考え抜いて、ついにとある結論に至った。
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教室中に響き渡るほどの声は、ほとんどのクラスメイトに「え?!」と驚きの声を漏らさせる。
約4名ほど、無理だろうなという諦観の目で見ているものもいたけど。
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