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第2話 平穏を脅かす声

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 今日もいい天気だ。
 ありがとう、太陽。机くんを温めてくれる君への感謝も忘れないよ。

「おはよう、唯斗ゆいと君♪」

 鳥のさえずりも聞こえてくる。君たちのおかげで心が安らぐよ。

「もしもーし? 聞こえてますー?」

 こんな日はお昼寝に限るね。まだ朝だけど。
 僕にとっての休み時間はお昼寝タイムだし、授業時間はお休みタイムだし、放課後は就寝時間だから、実質人生の8分の7くらい寝てるけどね。

「あのー? 死んでるんですかー?」

 まあ、自由に過ごせる時間が学生の間だけだとしたら、これは間違いなく有意義な時間の使い方だよ。

「机くんもそう思うかい?そりゃよかった」
「起きとるんやないかい!」

 なんだろう、隣が騒がしい。僕の睡眠の邪魔をする人は、たとえ先生であっても許さないよ。
 そのために、テスト前だけ睡眠時間を削って勉強して、学年2位の成績を維持してるんだから。

「起きてるなら返事してくれても良くないですかー?」
「……なに?」
「お? やっと反応した!」

 あまりにうるさいからと、唯斗は返事をしてあげることにした。声の主は……やはり隣の席か。

「唯斗君、おはよう♪」
「……なんだ、スーパーパリピか」
「ちょ、返事は?! てか、スーパーパリピって何?!」

 話は聞いてあげた。これ以上、僕からのレスポンスの必要は無いはず。
 唯斗はそう判断して再度眠りの体制に入ったと言うのに、隣の彼女はまだ話しかけてくる。
 もしかすると、これが噂に聞いた『近くの席になったらみんな友達』と思ってるタイプの人間なのだろうか。
 そうだとしたら、これは唯斗にとって幸せとまどろみを脅かされかねない一大事である。

「ねぇねぇ、話聞いてよー!」
「…………」
「ふむふむ、呼吸は正常、脈アリ……さては夕奈ゆうなちゃんに話しかけられて照れてるのだね!」
「……すぅ……すぅ……」
「あ、あれ? 寝てる?」

 その後も隣の席のスーパーパリピこと、佐々木ささき 夕奈ゆうなは「面白いことがあったんだけど、聞いてくれない?」と話しかけ続けたが、放課後になるまで反応が返ってくることは無かったと言う。
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