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第1部 入校編
第1部1話 入校式
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第1部1話 入校式
「お兄ちゃん早く起きないと入校式遅刻しちゃうよー!」
朝7時、いつもと同じく妹に起こされた。
本日は待ちに待った異能警察学校の入校式だ。
俺は高校を卒業したこの春、兼ねてから希望してきた進路へと進むことができる期待感に、少々胸を膨らませ過ぎて、昨夜はあまり眠れなかった。
「おはようぉ……」
欠伸をしながら妹に朝の挨拶をする。
「ご飯できてるから先に食べててー!」
「あぁ、いただきます」
俺が少し焦げた食パンを食べながらテレビを観ていると、思い出したように妹が口を開く。
「そう言えば、かりん今日部活で遅くなるから、夕飯は適当に済ませちゃって?」
「分かった」
「かりんの手作り晩ごはんが食べられなくて残念だねお兄ちゃん?」
そう言って妹は、俺が見つめるテレビとの間に、ぐいっと体を捩り割り込んできた。
「あぁ、とても残念だから今日は仕方なぁく、前から気になっていた駅前のラーメン屋にでも行ってくるよ」
「あの先月オープンしたお店? ずるいよお兄ちゃん! かりんも連れてけ!」
妹の夏鈴は、バスケで鍛えられた体幹を無駄遣いして、斜めった体のまま不満を漏らした。
「許せ夏鈴、また今度だ……」
「もうご飯作ってあげないからねー!!」
「じゃあそろそろいくよ、ご馳走様」
俺が憎まれ口を華麗にスルーすると、妹はいつもの可愛らしい表情に戻った。
「いってらっしゃい、気を付けてね!」
まだ少し眠いが、外は快晴で良い入校式日和だ。通学路には、ところどころに桜が咲いていて、とても清々しい。
今日から通う学校が見えてくる位置には桜並木が広がっていて、そこには綺麗な長い金色の髪をした少女が俯きながら歩いている後ろ姿があった。後ろ姿を見ただけで気品のようなものが滲み出ていて、ついつい見惚れてしまう。
桜とその少女のコントラストに目を奪われていると、その少女は真っ直ぐ桜の木に向かっていき、声を掛けようとしたのも束の間、木に額を"ゴチンッ"とぶつけてしまったのだ。
少女がその衝撃で尻餅をついてしまったため、慌てて駆け寄って「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「痛ぅぅ……」
ぶつけた頭を押さえながら痛がっているが、見たところ怪我はしていないようだ。
「災難でしたね」
そう言って彼女の顔を見ると、後ろ姿からの期待を裏切るどころか、それを越えてくる紛れもない美少女だった。
「すみません、ボーッとしてて……もう大丈夫です」
「じゃ、じゃあお気をつけて」
「ありがとうございました」
俺は入校式前早々の美少女との出会いに、今日はとてもいい日になると確信して意気揚々と歩を進めた。
入校式の会場に入ると、間もなく式が始まり校長先生が挨拶をする。
「入校生の諸君、入校おめでとう。私は学校長のエマ・サリヴァンだ。この学校で学ぶ2年間が君達の異能警察になる未来への礎となることを期待している。君たちが異能特殊警察になろうと決意した動機は様々あると思うが、存分に能力向上に励んでくれ――以上」
エマ校長が挨拶を終えると、入校生代表挨拶に移る。
「では入校生代表ソフィ・ヨハネス、前へ」
「はい」
呼びかけを受けて立ち上がったのは、先ほど頭をぶつけていた金髪碧眼の美少女だった。
周りがざわつく。
「あの子超かわいくない?」
「オレ超タイプだわ」
「あれで学年主席だなんてスペック高すぎでしょ」
司会の先生が「静粛に」と言うまでの間、入校生たちのざわめきがおさまらなかった。俺は皆の反応に賛同して思わず「うんうん」と頷いてしまっていた。
入校式が無事終わると、入校生はそれぞれのクラスに集まってホームルームとなった。
「私が君たちの担任の村上智だ。警察内での階級は警部に当たる」
先生が黒板に心地よいチョークの音を響かせると、すぐにこちらを向き直して続ける。
「ちなみに私は無能力者だが、この中の殆どがラグラスを持つ能力者だと思う。皆も知っていると思うが、ラグラスには生まれつきのものと、その人間の成長過程で後天的に授かるものの2種類ある――」
村上先生は再度黒板に向かう。
「前者と後者を見分ける方法は簡単だ。異能を発動する前から、または異能を発動した際、使用者の外見や身体構造に変化が見られるのが前者、それ以外が後者だ。これを『先天異能』と『後天異能』と呼ぶ」
先生が前置きを終えると、近年ニュースなどで話題になっている件について、俺たちに忠告する。
「そして主に後天異能の場合、稀に異能が発現したことが原因で後遺症に悩まされる者がいる。それは本人の異能と深く関係することが多い。これはすぐに治るケースと、長期間に渡り悩まされ続けるケースがあるため、症状が出た者はすぐに報告をすること」
そして遂に入校初日のお楽しみタイムがやってくる。
「では次は皆に自己紹介をしてもらおうか。名前と特技、そしてラグラスを教えてくれ。それでは――まずはヨハネス、頼む」
噂の美少女が自己紹介を始めた。
「私はソフィ・ヨハネスです。特技は特にありません。ラグラスは『重力操作』といって、重力を操り相手を無力化したり、重力を圧縮したエネルギー弾を放つことができます」
その規格外の能力を聞いた面々は、驚きと羨望の声を上げクラス中が湧いた。さすがは学年主席様だ。
その後もクラスメイトの自己紹介が進み、とうとう俺の番がやってきた。
「はじめまして、俺は藤堂幸近、特技は剣術で特に居合術です。ラグラスは無く無能力ですが、よろしくお願いします」
ヨハネスさんが偶然にも隣の席だったので、着席する間際に「今朝はどうも」と声をかけると、目は合わなかったが「こちらこそ」と返ってきた。
明日、俺の運命が大きく変わる日になるとは露知らず、この日は呑気に駅前でラーメンを食べて帰るのだった。
第1部1話 入校式 完
《登場人物紹介》
名前:ソフィ・ヨハネス
髪型:金髪ロングのストレートヘア
瞳の色:青
身長:162cm
体重:48kg
誕生日:11月17日
年齢:18歳
血液型:O型
好きな食べ物:ラクレット、鶏肉
嫌いな食べ物:生姜、ドライフルーツ
ラグラス:重力操作
周囲の重力を自在に操る能力
技名:重力崩壊
重力を圧縮したエネルギー弾を放出する
技名:重力強化
指定した領域内の重力を高め相手を押し潰す
⭐︎自分にかかる重力を下げ、少しの間宙に浮くことも可能
「お兄ちゃん早く起きないと入校式遅刻しちゃうよー!」
朝7時、いつもと同じく妹に起こされた。
本日は待ちに待った異能警察学校の入校式だ。
俺は高校を卒業したこの春、兼ねてから希望してきた進路へと進むことができる期待感に、少々胸を膨らませ過ぎて、昨夜はあまり眠れなかった。
「おはようぉ……」
欠伸をしながら妹に朝の挨拶をする。
「ご飯できてるから先に食べててー!」
「あぁ、いただきます」
俺が少し焦げた食パンを食べながらテレビを観ていると、思い出したように妹が口を開く。
「そう言えば、かりん今日部活で遅くなるから、夕飯は適当に済ませちゃって?」
「分かった」
「かりんの手作り晩ごはんが食べられなくて残念だねお兄ちゃん?」
そう言って妹は、俺が見つめるテレビとの間に、ぐいっと体を捩り割り込んできた。
「あぁ、とても残念だから今日は仕方なぁく、前から気になっていた駅前のラーメン屋にでも行ってくるよ」
「あの先月オープンしたお店? ずるいよお兄ちゃん! かりんも連れてけ!」
妹の夏鈴は、バスケで鍛えられた体幹を無駄遣いして、斜めった体のまま不満を漏らした。
「許せ夏鈴、また今度だ……」
「もうご飯作ってあげないからねー!!」
「じゃあそろそろいくよ、ご馳走様」
俺が憎まれ口を華麗にスルーすると、妹はいつもの可愛らしい表情に戻った。
「いってらっしゃい、気を付けてね!」
まだ少し眠いが、外は快晴で良い入校式日和だ。通学路には、ところどころに桜が咲いていて、とても清々しい。
今日から通う学校が見えてくる位置には桜並木が広がっていて、そこには綺麗な長い金色の髪をした少女が俯きながら歩いている後ろ姿があった。後ろ姿を見ただけで気品のようなものが滲み出ていて、ついつい見惚れてしまう。
桜とその少女のコントラストに目を奪われていると、その少女は真っ直ぐ桜の木に向かっていき、声を掛けようとしたのも束の間、木に額を"ゴチンッ"とぶつけてしまったのだ。
少女がその衝撃で尻餅をついてしまったため、慌てて駆け寄って「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「痛ぅぅ……」
ぶつけた頭を押さえながら痛がっているが、見たところ怪我はしていないようだ。
「災難でしたね」
そう言って彼女の顔を見ると、後ろ姿からの期待を裏切るどころか、それを越えてくる紛れもない美少女だった。
「すみません、ボーッとしてて……もう大丈夫です」
「じゃ、じゃあお気をつけて」
「ありがとうございました」
俺は入校式前早々の美少女との出会いに、今日はとてもいい日になると確信して意気揚々と歩を進めた。
入校式の会場に入ると、間もなく式が始まり校長先生が挨拶をする。
「入校生の諸君、入校おめでとう。私は学校長のエマ・サリヴァンだ。この学校で学ぶ2年間が君達の異能警察になる未来への礎となることを期待している。君たちが異能特殊警察になろうと決意した動機は様々あると思うが、存分に能力向上に励んでくれ――以上」
エマ校長が挨拶を終えると、入校生代表挨拶に移る。
「では入校生代表ソフィ・ヨハネス、前へ」
「はい」
呼びかけを受けて立ち上がったのは、先ほど頭をぶつけていた金髪碧眼の美少女だった。
周りがざわつく。
「あの子超かわいくない?」
「オレ超タイプだわ」
「あれで学年主席だなんてスペック高すぎでしょ」
司会の先生が「静粛に」と言うまでの間、入校生たちのざわめきがおさまらなかった。俺は皆の反応に賛同して思わず「うんうん」と頷いてしまっていた。
入校式が無事終わると、入校生はそれぞれのクラスに集まってホームルームとなった。
「私が君たちの担任の村上智だ。警察内での階級は警部に当たる」
先生が黒板に心地よいチョークの音を響かせると、すぐにこちらを向き直して続ける。
「ちなみに私は無能力者だが、この中の殆どがラグラスを持つ能力者だと思う。皆も知っていると思うが、ラグラスには生まれつきのものと、その人間の成長過程で後天的に授かるものの2種類ある――」
村上先生は再度黒板に向かう。
「前者と後者を見分ける方法は簡単だ。異能を発動する前から、または異能を発動した際、使用者の外見や身体構造に変化が見られるのが前者、それ以外が後者だ。これを『先天異能』と『後天異能』と呼ぶ」
先生が前置きを終えると、近年ニュースなどで話題になっている件について、俺たちに忠告する。
「そして主に後天異能の場合、稀に異能が発現したことが原因で後遺症に悩まされる者がいる。それは本人の異能と深く関係することが多い。これはすぐに治るケースと、長期間に渡り悩まされ続けるケースがあるため、症状が出た者はすぐに報告をすること」
そして遂に入校初日のお楽しみタイムがやってくる。
「では次は皆に自己紹介をしてもらおうか。名前と特技、そしてラグラスを教えてくれ。それでは――まずはヨハネス、頼む」
噂の美少女が自己紹介を始めた。
「私はソフィ・ヨハネスです。特技は特にありません。ラグラスは『重力操作』といって、重力を操り相手を無力化したり、重力を圧縮したエネルギー弾を放つことができます」
その規格外の能力を聞いた面々は、驚きと羨望の声を上げクラス中が湧いた。さすがは学年主席様だ。
その後もクラスメイトの自己紹介が進み、とうとう俺の番がやってきた。
「はじめまして、俺は藤堂幸近、特技は剣術で特に居合術です。ラグラスは無く無能力ですが、よろしくお願いします」
ヨハネスさんが偶然にも隣の席だったので、着席する間際に「今朝はどうも」と声をかけると、目は合わなかったが「こちらこそ」と返ってきた。
明日、俺の運命が大きく変わる日になるとは露知らず、この日は呑気に駅前でラーメンを食べて帰るのだった。
第1部1話 入校式 完
《登場人物紹介》
名前:ソフィ・ヨハネス
髪型:金髪ロングのストレートヘア
瞳の色:青
身長:162cm
体重:48kg
誕生日:11月17日
年齢:18歳
血液型:O型
好きな食べ物:ラクレット、鶏肉
嫌いな食べ物:生姜、ドライフルーツ
ラグラス:重力操作
周囲の重力を自在に操る能力
技名:重力崩壊
重力を圧縮したエネルギー弾を放出する
技名:重力強化
指定した領域内の重力を高め相手を押し潰す
⭐︎自分にかかる重力を下げ、少しの間宙に浮くことも可能
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