氷の花嫁

コサキサク

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第1話 氷妖精のかき氷

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これは、とある異世界の話。

僕は、カイ。22歳。職業は戦士だ。街の近くに出現したモンスターを倒したり、遺跡の調査をする学者の護衛をしたりしている。

今日は、モンスター退治の仕事を終え、1週間ぶりに拠点の街に帰ってきた。見慣れた街並みを前にしてほっと一息ついていた。

「今回も、無事かえってこれたな。カイ。さて、あの店に行こうぜ。」
相棒のリアが話かけてくる。僕はこのリアと二人組で活動している。リアの方がニ歳年上だ。でも戦士のキャリアは同じなので気楽な付き合いだ。
「うん、かき氷食べたいな。」
「カイはいつもかき氷だな。もう大人なんだから酒飲もうぜ?」
「僕はかき氷が好きなんだよ。」
僕の好物はかき氷だ。え?この世界冷凍庫あるのかって?ないよ。電化製品自体ないよ。ないんだけどかき氷はあるんだ。そのわけはそのうちわかるよ。

この街は比較的小さく建物はまばらだ。ほとんど民家なので飲食店はわずかだ。僕たちはこの街では一番大きい飲食店「炎と氷の料理店」に向かう。僕たちの行きつけの店だ。

そのお店はレンガ建てのとても可愛らしい外観のお店だ。ドアを開けるとウエイトレスの女の子が駆け寄ってきた。
「リアさん、カイさん、おかえりなさい!さあこちらのお席へ」
僕とリアはカウンター席座り、
「酒ちょうだい。カイはいつものかき氷ね。」
「かしこまりました。」
ウエイトレスが店の奥に消える。
「今日もかわいいな、アリス。」
アリスはさっきのウエイトレスだ。リアはアリス目当てでこの店に通っているようなものだ。周りを見渡すと、他の男性客も目当てのウエイトレス相手に話かけたりしている。

実はこの店、戦士とウエイトレスの恋愛が日常茶飯事で有名なお店だ。原因はウエイトレスの制服だろう。赤いチェックのワンピースにフリルのエプロン、頭には可愛いフリルのプリム、
靴下もフリル付きで靴も赤いチェックでそろえており、とても可愛いデザインなのだ。そこに、戦士がやってきたら当然食いつく。可愛いウエイトレスがあっという間に戦士と結婚し退職してしまうというのはよくある話。噂が噂を呼び、戦士と結婚を夢見る少女はここで働き、可愛い女の子を探している男はここに通うようになっていた。可愛い女の子が寿退職するとまた新しく可愛い女の子が入り、今この店にいる女の子は軒並み可愛いと評判だった。

「カイは、ここの女の子の中で誰が好みだよ?」
「僕は、その、かき氷が食べたいだけだから・・・」
「はは、カイはそればっかだなあ。」
そんな話をしていると、一人のウエイトレスが店の奥から飛び出してきた。
「カイー!」
ウエイトレスが僕に向かって駆け寄ってくる。
「ユーリ!」
ウエイトレスのユーリだ。白銀髪のツインテールに真っ白な肌が特徴の子だ。皆と同じように可愛い制服を着ている。
「いつものかき氷だね!」
「うん、よろしく。」
ユーリはガラスのお椀をカウンターに置くと、お椀の前で指をかざした。すると、だんだん細かい氷がガラスのお椀に積もり始める。お椀氷が山盛りになると、ユーリは氷の上に透明な液体をかける。

そう、このかき氷、ユーリの氷魔法でできている。ユーリは人間ではなく、氷妖精だ。ここのウエイトレスの中で唯一の亜人である。他のウエイトレスは人間だ。ちなみに店長は炎妖精で、ユーリとは属性違いの亜人だ。妖精と言っても体格は人間と同じである。

「はい!ボク特製のかき氷だよ!」
ユーリが笑顔でかき氷を差し出す。ユーリは一人称が「ボク」だ。氷妖精は13歳ぐらいまで性別不明らしく、13歳で自身が女とわかるまで男の子気分で過ごしていた名残らしい。ユーリは今18歳だ。
「ありがとう!」
僕はかき氷を口に入れる。ひんやりしておいしい。さっきユーリがかけていた透明のシロップの甘さで疲れが飛んだ。
「おいしい!」
「あはは、お店にくるなりかき氷食べるのなんてカイだけだよお。みんな食後だよ?」
「いいじゃない。僕はこれが一番楽しみなんだ。」
「ねえねえ、今回はどんなモンスター倒したの?」
ユーリは僕と会うと僕の仕事のことを聞きたがる。話すといつも楽しそうに聞いてくれる。かき氷を食べるのも楽しみだったが、ユーリに話を聞いてもらうのも僕の楽しみだった。

僕はさっき、この店のウエイトレスじゃなくてかき氷が目当てみたいな話をしてしまったけど、僕の目当てのウエイトレスを強いて挙げるならユーリだ。亜人故の白銀髪のツインテールに真っ白な肌、整った顔に加えて無邪気な態度が最高にかわいい。どのウエイトレスよりもかわいいと思っていた。かき氷一杯で店を出るのは惜しい。ユーリともう少し話したい。という気持ちから結局いつもいろいろ注文してしまう。リアもアリスちゃんと少しでも話したいがためにいろいろ注文する。

僕は追加で冷製パスタを頼んだ。今日のメインディッシュだ。これもガラスの器でユーリが運んで来てくれるためキンキンに冷えている。さらに葡萄ジュースとフルーツも頼んだ。どちらもユーリのおかげで冷たくておいしい。ユーリはしばらく僕と話してくれていたが、食後のかき氷の注文が他の席から入りだし席を離れたので、リアとの会話に戻る。
「カイっていつも冷たいものばっか食べてるよな。夕食って普通、温かいもの欲しくならないか?」
リアは焼き立ての肉と熱々のスープをを頼んでいた。
「そう?冷たいものっておいしくない?この辺は気候が暖かいからキンキンに冷えた食べ物なんて貴重だし」
「まあ、そうだけど。」
僕は元来、温かい食べ物にあまり興味がない。温かい食べ物が冷めてしまっても気にせず食べてしまう性分だ。仕事中野営しながら食事するときも、リアはいつも火を起こして干し肉を丁寧に炙って食べるが、僕はそのまま食べてしまう。
「なにより、かわいいユーリが冷やしてくれたんだと思うと・・・やっぱり食べたくならない?」
リアが吹き出した。
「お前ユーリが好きだったのか!物好きだなあ!こんなにかわいい女の子達の中からよりによって氷妖精選ぶってすごい趣味だな!」
僕は思わずムキになった。
「なっ!?そんなことないだろ!ユーリはかわいいだろ!この店のウエイトレスはたしかに見た目はいいけど、あわよくば戦士と結婚したいという気持ちが滲み出ていて正直好きじゃないんだよ。それと比べるとユーリは亜人だし無邪気でかわいいよ!」
「カイ、まだ前の彼女に浮気されたの引きずってるな?」
「それも、あるかもね。」
僕は、以前結婚を考えていた彼女がいた。向こうからの告白だった。真剣に付き合っていたが、仕事で街を離れている間に他の男に心変わりされてしまった。以来、僕は恋愛に積極的な子が好きになれない。だから未だに新しい彼女を作る気にもなれず、ここでユーリと話すのが唯一の癒しだった。

「しかしさ、いつまでも彼女作んねえのもどうよ。ユーリが好きなら好きで、口説けばいいだろ。」
「え?氷妖精と恋愛ってできるもんなの?」
「できるだろ。ここの店長炎妖精だけど、旦那は人間らしいし、ねえ、アリス。」
リアがカウンターでドリンクを作っていたアリスに尋ねる。
「ええ、そうよ。人種の違いがあるから多少大変そうだけど、仲はいいわよ。」
「そう・・・だけど、ユーリって恋愛に良くも悪くも興味ないような・・・いきなり告白しても、伝わるかな?」
僕は不安になった。
「たしかに・・・そうだ、俺いいこと思いついたぞ」
リアがあることを提案してきた。

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