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第102話 血

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 補講期が始まり、僕はロビーでリリイと肩を並べて勉強していた。例によって、リリイの数学の補習対策である。今までも、こうやって一緒に勉強する機会は何度もあったが、やはりリリイが彼女だと思うと、側にいられるのが一層嬉しかった。本当に気持ちがふわふわしていて、レベル上げのモンスター殺しを忘れそうだ。忘れそうになるだけで完全に忘れてはいなかったけど。レベル60で三年生に進級できるので、もうレベル69の僕は今少し殺しをサボっても何の問題もないけれど。ちなみにリリイは、もうレベル75なので、魔法に関しては何の心配もいらない。もちろんクラスで一番レベルが高い。多分レベル100に一番乗りするのもリリイだろう。
「それで、この公式を使って……」
「ああ、なるほど! 前に習ったものを使うのね!」
 根気よく教えて来たのが功を奏したのか、リリイの数学への理解はだいぶましになっていた。とはいえ、リリイが数学が苦手という事実はどうあがいても変わらないから、テストに合格できるギリギリのところまでもっていくしかない。とにかく、一番基礎の問題さえ解ければなんとかなると判断した僕は、もう応用問題などは捨てて、テスト範囲の一番簡単なところだけ絶対に間違えないように繰り返しリリイに教えていた。
「ふう。なんとか解けたわ。これならテストで合格点ぐらいはいけるかしら」
「うん、大丈夫だと思う。リリイ、もうお昼だし、勉強はこのぐらいにして、学食に行こう」
「ええ」
 リリイと二人で学食に向かう。補講期なので、いつもより学食は空いていた。好きな食べ物を皿に取り、リリイと向かい合わせで食事をする。
 それにしても、リリイは、言葉づかいも仕草もとてもお上品だ。最初知り合った頃は、リリイはどこかお金持ちのお嬢様かと思っていた。 

 リリイは、リリイのお母さんとあまり言動が似ていないと感じる。見た目は似ているけど。リリイのお母さんは、もう少し粗野だったと思う。母親らしくない露出の多い服装だったし、言葉遣いも若干荒かった。あれはあれで魅力があったと思うが、あのお母さんと一緒に暮らして育てられて、こうもお上品になるものだろうか?一番上のボタンまできっちり留めた、リリイの窮屈そうな首筋を見ながらそんなことを考えていた。
「どうしたの? キルル、まじまじと見ちゃって」
 よほどじろじろ見てしまっていたのか、リリイが僕に尋ねた。
「ああ、いや、リリイってすごくお上品だなあって……こう言っちゃなんだけど、お母さんとあんまり雰囲気似てないなって」
 思い切って尋ねてみた。
「ああ、それはね、お父様がものすごく厳しかったの。私とお父様はモンスターの血が入っているから、言葉と作法は他の人間以上にきちんとしろって。お母様は純血の人間だから、お母様の言動についてはお父様はなにも仰っていなかったわ」
「へえ……なんだか大変そうだね」
「そうね、だけどやっぱりきちんとしていないといろいろ言う人もいるから。人間とモンスターのハーフのお父様は苦労なさったようだし」
 リリイにモンスターの血が入っていることについては、僕はほとんど気にしていなかったが、いろいろ苦労があるようだ。
 僕はリリイについて、意外と知らないことだらけだなと感じた。



 

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