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第40話 黒猫を拾う
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「おお、キルルが魔道士らしくなってる!」
ロビーに入るなりトイが言ってきた。
「うん、魔道士だし」
僕はロッドを誇らしく掲げてみた。
レベル25になり、ロッドも手にし、前から買おうか悩んでいたマントもバトルロワイヤルの賞金で購入した僕は、ものすごく魔道士らしくなった。見た目だけでも、この学校に来たばかりのころとは随分変わっていた。背も少し伸びたのではないかと思ったが、ほとんど伸びていなかったのは悲しいけれど……しかし、この小柄な体型も、舐められがちな顔立ちも、今はそんなに悪くないように思えていた。僕がもし、もっと強く怖そうな見た目だったら、周りが怖がってしまい孤立していたと思う。『即死魔道士』らしい格好存分をしても人付き合いに支障がでないのはこの見た目のおかげなのだ。
しかし、僕を恐れているものもいる。動物だ。やはり、動物は勘が鋭い。王都を散歩していると、野良猫や野良犬、野鳥も多く見かけるが、僕の姿を見ると逃げるように去っていく。レベルが上がれば上がるほどそれはあからさまになっていった。まあ僕も近くに来られると殺したくなってしまうのでありがたいけど、ちょっと切なさも感じていた。
ところが、ある日、王都を歩いていると、黒猫がこちらに近づいてきて、僕の足元でニャーと鳴いた。
珍しい現象だったので、少し嬉しくなった僕はかがんでその黒猫を撫でた。黒猫は僕に触られても大人しくしている。首輪はなく、野良猫のようだったので、また明日ねと心で話しかけて立ち去ろうとしたが、黒猫は着いてきた。そのまま学校へ帰ると、黒猫はまだ足元にいた。
ここまで動物に懐かれたことがない僕は、その黒猫に興味が湧いた。
「僕の部屋に来る?」
「ニャーオ」
来ると言っている感じがしたので、その黒猫を抱え、そのまま魔法陣に乗り、自分の部屋に帰った。
モンスターの剥製と骨が溢れかえる自室に連れて帰ると、黒猫はキョロキョロしていたが、余計なものに触る様子もなく大人しい。
「君もこの中に混ざる?」
黒猫は今度は鳴かなかった。人の言葉がわかるのだろうか。
「冗談だよ」
と言うと
「ニャーオ」
と返してきた。
「なんか食べるかい?」
「ニャーオ」
「惜しいな。こないだまでいつも数匹生きたネズミがいたのに」
僕は、魔法を使いそこねて一日が終わるのがなんだかもったいなくて、魔法を使う機会がなかった日は部屋で飼っているネズミを殺していた。だけど最近手にしたロッドに余った魔力を保存できるようになったためネズミを飼うのをやめたのだ。
僕は夕食を食べるついでに食堂から牛乳と魚を持ってきて、黒猫にあげた。喜んで食べていた。
僕が寝ようとベッドに入ると、黒猫もベッドによじ登ってきて、僕の枕元で眠りだした。このままここで飼おうかなあ。名前は何にしようと悩んでいる間に眠ってしまった。
次の日の朝も、黒猫は僕に着いてこようとしたが、
「ホームルームには連れていけないよ。ここで待ってて」
「ニャーオ」
というやりとりをしてホームルームに出た。
「皆さんおはようございます。まず連絡事項なんですが、今恐ろしいモンスターが王都を徘徊しているので皆さんくれぐれも注意をしてください。『ソクシクロネコモドキ』というモンスターで、黒猫そっくりですが爪に猛毒があって一度引っかかれただけで死んでしまいます。普通の黒猫との違いは爪の色だけです。爪の色が紫です。ですが爪はなかなか見えないので、捕獲情報が出るまでなるべく黒猫には近づかないでください」
嫌な予感がした。ホームルームが終わるなり僕は部屋に戻り黒猫に話しかけた。
「ちょっと爪見せてごらん!」
黒猫は黙って逃げ回る。僕は強引に捕まえて抱き上げ、目を見て言った。
「爪を見せてごらん。殺さないから」
「ニャーオ」
綺麗な紫色の爪が出てきた。
ロビーに入るなりトイが言ってきた。
「うん、魔道士だし」
僕はロッドを誇らしく掲げてみた。
レベル25になり、ロッドも手にし、前から買おうか悩んでいたマントもバトルロワイヤルの賞金で購入した僕は、ものすごく魔道士らしくなった。見た目だけでも、この学校に来たばかりのころとは随分変わっていた。背も少し伸びたのではないかと思ったが、ほとんど伸びていなかったのは悲しいけれど……しかし、この小柄な体型も、舐められがちな顔立ちも、今はそんなに悪くないように思えていた。僕がもし、もっと強く怖そうな見た目だったら、周りが怖がってしまい孤立していたと思う。『即死魔道士』らしい格好存分をしても人付き合いに支障がでないのはこの見た目のおかげなのだ。
しかし、僕を恐れているものもいる。動物だ。やはり、動物は勘が鋭い。王都を散歩していると、野良猫や野良犬、野鳥も多く見かけるが、僕の姿を見ると逃げるように去っていく。レベルが上がれば上がるほどそれはあからさまになっていった。まあ僕も近くに来られると殺したくなってしまうのでありがたいけど、ちょっと切なさも感じていた。
ところが、ある日、王都を歩いていると、黒猫がこちらに近づいてきて、僕の足元でニャーと鳴いた。
珍しい現象だったので、少し嬉しくなった僕はかがんでその黒猫を撫でた。黒猫は僕に触られても大人しくしている。首輪はなく、野良猫のようだったので、また明日ねと心で話しかけて立ち去ろうとしたが、黒猫は着いてきた。そのまま学校へ帰ると、黒猫はまだ足元にいた。
ここまで動物に懐かれたことがない僕は、その黒猫に興味が湧いた。
「僕の部屋に来る?」
「ニャーオ」
来ると言っている感じがしたので、その黒猫を抱え、そのまま魔法陣に乗り、自分の部屋に帰った。
モンスターの剥製と骨が溢れかえる自室に連れて帰ると、黒猫はキョロキョロしていたが、余計なものに触る様子もなく大人しい。
「君もこの中に混ざる?」
黒猫は今度は鳴かなかった。人の言葉がわかるのだろうか。
「冗談だよ」
と言うと
「ニャーオ」
と返してきた。
「なんか食べるかい?」
「ニャーオ」
「惜しいな。こないだまでいつも数匹生きたネズミがいたのに」
僕は、魔法を使いそこねて一日が終わるのがなんだかもったいなくて、魔法を使う機会がなかった日は部屋で飼っているネズミを殺していた。だけど最近手にしたロッドに余った魔力を保存できるようになったためネズミを飼うのをやめたのだ。
僕は夕食を食べるついでに食堂から牛乳と魚を持ってきて、黒猫にあげた。喜んで食べていた。
僕が寝ようとベッドに入ると、黒猫もベッドによじ登ってきて、僕の枕元で眠りだした。このままここで飼おうかなあ。名前は何にしようと悩んでいる間に眠ってしまった。
次の日の朝も、黒猫は僕に着いてこようとしたが、
「ホームルームには連れていけないよ。ここで待ってて」
「ニャーオ」
というやりとりをしてホームルームに出た。
「皆さんおはようございます。まず連絡事項なんですが、今恐ろしいモンスターが王都を徘徊しているので皆さんくれぐれも注意をしてください。『ソクシクロネコモドキ』というモンスターで、黒猫そっくりですが爪に猛毒があって一度引っかかれただけで死んでしまいます。普通の黒猫との違いは爪の色だけです。爪の色が紫です。ですが爪はなかなか見えないので、捕獲情報が出るまでなるべく黒猫には近づかないでください」
嫌な予感がした。ホームルームが終わるなり僕は部屋に戻り黒猫に話しかけた。
「ちょっと爪見せてごらん!」
黒猫は黙って逃げ回る。僕は強引に捕まえて抱き上げ、目を見て言った。
「爪を見せてごらん。殺さないから」
「ニャーオ」
綺麗な紫色の爪が出てきた。
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