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対公爵 対邪神
第189話 戦の終わり
しおりを挟む月の魔女と聖剣
第189話 戦の終わり
ディマジオ侯爵との対談が終わった。既に、ガーゼルベルトは滅亡した国の為に動いていたことからもし新しく国を作ろうともそこに関与する事はない。ディマジオ侯爵もそこを理解したが、惜しいと思っていたのは理解出来た。
『既に、支えようと思う人が居ない国に手を出すほどわしはもう若くは無いのだ』
ガーゼルベルトとしては、国政に携わっている間辺境を見ることが出来なかっただけに今後は故郷である辺境に注力する気でいた。カタリーナから月女神の眷属が倒れたことも聞いていたし、月が昇った事で魔力が大地に注がれていっていることも聞いていた。
自分の時には出来なかった事が、今なら出来る。作物の増産も街道の整備も何もかも今なら妨害なしで出来ると言うのは大きい。既に辺境はフィエリス家により、一枚岩となっていた。それだけに、内患を憂うこともない。
北の貴族も南の貴族も辺境に手を出す事は出来なくなる。元々、作物の関係上で大分借りを作ったりしたこともあったが今後はそう言うこともなくなる。宰相をやっていたこともあるが、既に領地だけの力が増したこともあって下手に手を出す事すら躊躇させるほどになりそうであった。
元々、軍事に関しては最先端を行く。他の貴族達が襲ってきたとしても返り討ちに出来るほどだったのだが、辺境大要塞インビジブルが出来上がった事で防衛に専念すれば大国が攻めてこようとも守り切れるようになってしまっていた。
対談の二日後、散り散りとなった貴族連合軍は1人また1人と東の領地へと帰っていった。もう辺境を襲わないと言う血判状を書かせた上で、領地まで持つ食料を与えていった。そのことが、東の貴族たちに取って温情でしかなくガーゼルベルトの好感度を一気に引き上げていたのだが、本人にとっては一切気にしなかった。
甘いと言われると思うが、ここで東の貴族を潰したところで内乱が激しくなるだけであり民のことを思えば、これ以上荒れるのを避ける為であった。ディマジオ侯爵に義理立てした部分もあり、この判断を間違えとは思っていなかった。
そして、貴族連合軍を率いて攻め込んできた首謀者であるカスル・ジャントゥールはディマジオ侯爵からガーゼルベルトへと引き渡された。
「ガーゼルベルト、貴様さえ貴様さえいなければ!!」
「お前がわしにどのような感情を向けていたかは知っている。だが、わしがいなかろうとも貴様では辺境に足を踏み入れることは出来なかったであろうよ。辺境はフィエリス家が守護する土地、千年以上の営みを破壊される訳にはいかんのだ」
ガーゼルベルトはそれだけ言うとカスルを牢へと兵士達に連れて行かせる。牢へ連れて行かれるカスルは、ガーゼルベルトに最後の言葉を発した。
「この国を滅ぼして、新しい国を作ることの何が悪い。我らが頂点で何が悪いのだ!!」
その言葉を聞いたガーゼルベルトは、何も言わずにカスルが居なくなるのを見届けた。見届けた後に、つぶやく。
「貴様に、王の座など荷が重すぎる。民の事を考えない男が王だと片腹痛いわ」
辺境大要塞インビジブルを構築し、貴族連合軍に勝った。貴族連合軍の首謀者公爵カスル・ジャントゥール公爵は引き渡されてから数日後に処刑され、侯爵家がある東の領地でも貴族連合軍に参加した諸侯から攻め立てられてジャントゥール公爵家は王家の末姫が産んだ女の子を除いて殺害されたことにより断絶した。
王家の末姫が産んだ女の子はディマジオ侯爵が引き取ったと後でガーゼルベルトは風の噂に聞くことになる。
第189話 戦の終わり
ディマジオ侯爵との対談が終わった。既に、ガーゼルベルトは滅亡した国の為に動いていたことからもし新しく国を作ろうともそこに関与する事はない。ディマジオ侯爵もそこを理解したが、惜しいと思っていたのは理解出来た。
『既に、支えようと思う人が居ない国に手を出すほどわしはもう若くは無いのだ』
ガーゼルベルトとしては、国政に携わっている間辺境を見ることが出来なかっただけに今後は故郷である辺境に注力する気でいた。カタリーナから月女神の眷属が倒れたことも聞いていたし、月が昇った事で魔力が大地に注がれていっていることも聞いていた。
自分の時には出来なかった事が、今なら出来る。作物の増産も街道の整備も何もかも今なら妨害なしで出来ると言うのは大きい。既に辺境はフィエリス家により、一枚岩となっていた。それだけに、内患を憂うこともない。
北の貴族も南の貴族も辺境に手を出す事は出来なくなる。元々、作物の関係上で大分借りを作ったりしたこともあったが今後はそう言うこともなくなる。宰相をやっていたこともあるが、既に領地だけの力が増したこともあって下手に手を出す事すら躊躇させるほどになりそうであった。
元々、軍事に関しては最先端を行く。他の貴族達が襲ってきたとしても返り討ちに出来るほどだったのだが、辺境大要塞インビジブルが出来上がった事で防衛に専念すれば大国が攻めてこようとも守り切れるようになってしまっていた。
対談の二日後、散り散りとなった貴族連合軍は1人また1人と東の領地へと帰っていった。もう辺境を襲わないと言う血判状を書かせた上で、領地まで持つ食料を与えていった。そのことが、東の貴族たちに取って温情でしかなくガーゼルベルトの好感度を一気に引き上げていたのだが、本人にとっては一切気にしなかった。
甘いと言われると思うが、ここで東の貴族を潰したところで内乱が激しくなるだけであり民のことを思えば、これ以上荒れるのを避ける為であった。ディマジオ侯爵に義理立てした部分もあり、この判断を間違えとは思っていなかった。
そして、貴族連合軍を率いて攻め込んできた首謀者であるカスル・ジャントゥールはディマジオ侯爵からガーゼルベルトへと引き渡された。
「ガーゼルベルト、貴様さえ貴様さえいなければ!!」
「お前がわしにどのような感情を向けていたかは知っている。だが、わしがいなかろうとも貴様では辺境に足を踏み入れることは出来なかったであろうよ。辺境はフィエリス家が守護する土地、千年以上の営みを破壊される訳にはいかんのだ」
ガーゼルベルトはそれだけ言うとカスルを牢へと兵士達に連れて行かせる。牢へ連れて行かれるカスルは、ガーゼルベルトに最後の言葉を発した。
「この国を滅ぼして、新しい国を作ることの何が悪い。我らが頂点で何が悪いのだ!!」
その言葉を聞いたガーゼルベルトは、何も言わずにカスルが居なくなるのを見届けた。見届けた後に、つぶやく。
「貴様に、王の座など荷が重すぎる。民の事を考えない男が王だと片腹痛いわ」
辺境大要塞インビジブルを構築し、貴族連合軍に勝った。貴族連合軍の首謀者公爵カスル・ジャントゥール公爵は引き渡されてから数日後に処刑され、侯爵家がある東の領地でも貴族連合軍に参加した諸侯から攻め立てられてジャントゥール公爵家は王家の末姫が産んだ女の子を除いて殺害されたことにより断絶した。
王家の末姫が産んだ女の子はディマジオ侯爵が引き取ったと後でガーゼルベルトは風の噂に聞くことになる。
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