月の魔女と聖剣

空流眞壱

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北方への探索行

第161話 聖剣の鞘

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月の魔女と聖剣

第161話 聖剣の鞘

 台座に納められた聖剣の鞘をパウエルが触ろうとすると不思議な力で弾かれた。やはり、資格がある人間以外には触れないらしい。

 聖剣の鞘に触れられるのは、沙更とミリアのようだ。月の力に影響を受けていないと資格を与えられないのだろうか?

「やはり、セーナちゃんとミリアだけか」

「月の魔力に反応出来ないと触れないのね」

 パウエルとヘレナで納得しているようだ。ガレムに関しては最初から予想していた節があった。

「流石にセーナちゃんとミリア以外に、月の魔力は扱えねえのはリーダーもわかっていただろう」

「確かめる意味で触ってみたんだ。触れなかったが理由が分かれば問題はないだろう」

 守っていることは分かっていても触れるかは分からない時点ではそれも選択肢の一つであった。あえてやってみたと言うことであった。

 パウエルの後に、ミリアが聖剣の鞘に振れると弾かれはしないが持ち上げることが出来ない。人を見る聖剣の一部だけあって、資格が無ければ持ち上げられないのだ。

「ごめん、セーナちゃんお願い出来る?」

「ミリアお姉さんで大丈夫かと思ったのですが、聖剣が認めていないと手に入れられないとは思ってませんでした」

 沙更とすれば、聖剣は神剣よりも力が弱いと認識しているし、作ったエーベルも認めていた。神剣は人が使えるものではないから人が使える聖剣を作ったと言っていた。

 それでも人は強くはないから、聖剣は人を見定めて主を決めていたのだ。悪用されないために、自衛するしか道がなかったのだろう。

 それだけ聖剣を欲しがった欲深い人間が多かったと言う証であり、他の物とは違って力があった。だから、欲しい人間が続発したのだろう。

 沙更が聖剣の鞘に触れると台座に施されていた封印が解除された。目に見えないなにかがなくなったことで、台座から持ち上げるのはそこまで難しくはなくなっていた。

 ただ6歳の女の子が持つ腕力では足らないのを見越して、マイティアップを使って補助しておくのは忘れない。

 台座から外れた聖剣の鞘は、沙更の手の中に納まっている。思ったよりも重いと言う印象もなく、なにか暴れると言ったこともなく、おとなしくしているようだ。

「これで、聖剣の鞘も手に入ったね。戻ろうか」

「依頼はこれで終わりだな。流石にさっさとウエストエンドに戻ろう」

 古代遺跡の時間の流れがわからないだけに、戻るのは早い方が良いのは分かる。

 シルバール王家を斃した公爵たちとガーゼルベルトたち辺境伯がぶつかるまでそこまでの時間の余裕はない。戻ったら、戦が始まっていたと言うことも考えられた。

 聖剣の鞘を沙更は虚空庫にしまうと荒野の狼の面々と一緒に、古代遺跡を後にした。
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