月の魔女と聖剣

空流眞壱

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聖剣の鞘の行方

第146話 聖剣の鞘とエーベル

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月の魔女と聖剣

第146話 聖剣の鞘とエーベル

 魔方陣の部屋に入ったリエットとウィリアムは、古代遺跡の魔方陣に興味を持った。正確に描かれた文様は現代魔法で扱う魔方陣とは全然別物で、解析も進んではいない。それだけに興味を持たれるのも分かる。

「ここまでの綺麗な魔方陣はなかなか見られません。どんな物なのでしょう?」

「カイゼルラントでもこれだけの大きい魔方陣は残っていなかった。気にはなるな」

 二人とも魔方陣がどんな物なのか、気にしていた。そんな二人を見つつ、沙更は魔法陣に魔力を注いでいく。現代魔法士では扱えない膨大な魔力を込めていけば、その魔力に魔法陣が反応していく。

 魔法陣に魔力を込めて、反応を返してから数分。魔法陣が完全に反応して、ある人物の意識が動く。そう、エーベルだ。

「また会ったね、我が子孫よ」

「御先祖様、お知恵をお借りしたくてまたここに来ました」

 沙更を見たエーベルはその言葉に嬉しそうな表情を浮かべる。また会えるとは思っていなかったからだ。一年前からのメンバーにも変わりはないことから難事を乗り越えたのが分かる。そんなエーベルに、リエットもウィリアムも驚く。

 古代魔法士の意識を封じ込めた魔法陣など聞いたことがない。それだけに、ものすごく希少な物だと理解するのに時間は掛からなかった。とは言え、これ程の魔法陣の起動にかかる魔力は膨大そのもの。現状では維持出来るものではなかった。

 エーベルはリエットとウィリアムが持つ剣を見て、呼ばれた理由を納得した。聖剣は、神剣を人間でも使えるように落とし込んだ品物であり、作ったのはエーベルであったからだ。

「なるほど、聖剣の鞘のことで私の知恵を借りに来たとそう言うことかな?」

「はい、聖剣に関しては御先祖様から頂いた知恵の範疇を超えています。ある程度は分かりますが、それでも正解ではないですし…」

「確かに、古代魔法士の知恵ではこれは理解出来てもそこまでが限界だね。そう言う点、頼ったのは正解だ。なにせこの剣を作ったのは私だから分からないわけがない」

 あっさりと白状するエーベル。彼の声に驚いてしまうのも無理はない。古代魔法士が作ったとすれば、鞘の技術は古代魔法文明の技術の集合体と言えるだけに、金額が付けられるわけがなかったからだ。

 現代では作成はおろか模倣すら厳しい。そんな技術の粋がこの鞘には詰まっているのを理解するしかないのだ。

「聖剣が、まさか古代魔法文明の遺産だとは思いもしなかった」

「いや、この剣は私の一存で作った物だ。あの時の文明で残せた物ではないし、彼女の許可なしでは作ることは叶わなかったと言える」

 そう、月女神の許可が無ければこの剣を作ることはなかった。エーベルとしてそこは語らないわけにはいかないし、今この剣が人間の役に立っているのなら、彼女の決断は間違っていなかった証明であった。
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