月の魔女と聖剣

空流眞壱

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辺境伯対他貴族

第94話 護衛として

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月の魔女と聖剣

第94話 護衛として

 リエットと再会後、ジークは辺境に戻る準備を始めた。パウエル達は、リエットの護衛をジークから引き継ぎ、その任にあたることになった。元々、学園への道中の護衛の任務はカタリーナから言われていたことでもあった。それをやる形になったのは想定内であり、辺境への補給のために一時的に戻ることになったからジークに代わって貰っていただけの話だったから。

「ジークさんから引き継いだから、リエット様の学園までの護衛を続けさせて貰いますね」

「幼い治癒士様たちが護衛してくれるのなら、ジークとは違った意味で安心できそうです」

「ジークさんは護衛も慣れているでしょうから、安心感はあるとは思います」

 沙更はリエットの言葉に、そう返す。元々、ジークはカタリーナやリエットの護衛もやったりしていた為、安心感があるのは当然の話であって、沙更たちよりも実績がある。それだけに、リエットの言葉に言い返すこともしなかったがリエットはそんな沙更を見て苦笑を浮かべる。

「小さな治癒士様の安心感はジークとはまた違う物です」

 リエットの精神を救ったのは沙更のムーンライトの魔法。実の父親に疎まれて、盗賊に売られて消されかけた。そこを救い出したのは沙更たちだからこそ、ジークとも違う安心感をリエットが抱くのも分からなくはない。

 そもそも、ジーク1人と沙更たちの護衛の仕方は全然違う。1人で警護するのとチームで警護するのではまた違って当然であった。

 リエットとして、ジークも沙更たちも同じく信頼しているだけに護衛を引き受けてもらえたことで、学園に通い続けることが出来るとほっとしていた。貴族は、学園の卒業が成人の証とされているだけに、ここで逃げると言う選択肢はないだけに、危険から身を守る手段が必要だった。

 カタリーナとしては安全を取って欲しいから逃れるとしても怒りはしなかっただろう。が、リエットとして退く気はなかったということ。沙更たちが付いてくれるなら心強いと思ったのも確か。

『幼い治癒士様たちが護衛をしてくれるのなら、学園への登下校の際の危険も回避出来るでしょう』

 高位貴族が抜けた今の学園で、一番上の貴族が実はリエットだったりする。公爵家と侯爵家は既に王都から自分達の領地に戻ってしまっているからだ。伯爵家の貴族たちも半数以上が王都から戻ってしまっていて、学園も閑散としていたが、それでも授業は続いていた。

 高位貴族たちが領地に戻ってしまったことで、高位貴族と王族のクラスは一時解散していた。そんな状況下の中戻ってきた第二王子は、一時的な処置としてリエットが在籍している辺境伯以下のクラスに編入されている。

 戻ってきたばかりだけに、第二王子ウィリアムの素性が良くわからないままであった。
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