月の魔女と聖剣

空流眞壱

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辺境伯対他貴族

第66話 孤児院に戻って

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月の魔女と聖剣

第66話 孤児院に戻って

 領主と冒険者ギルドに報告が終わったことで、一回解散することになった。沙更とミリアは、ウエストエンドの孤児院に向かう。買い物は明日にして、今日はゆっくりすることにした。

 約一ヶ月ぶりのウエストエンドだが、人が増えた位でそれほどの変化はない。

 そのまま孤児院に戻ってくると真っ白な石造りの建物が出迎えてくれる。沙更が補修した建物は建てた当初の頑丈さを取り戻し、そこにあった。

 沙更とミリアを見つけた孤児たちが寄ってくる。孤児院を救った2人は、孤児達に慕われているから。

「セーナちゃんとミリアお姉ちゃんだ」

「「ただいま、みんな」」

 沙更とミリアが孤児達に手を振りつつ、孤児達に囲まれながら孤児院に戻るとシスターヴァレリーが待っていた。

「お帰りなさい2人とも、王都はどうでしたか?」

「貴族達が偉ぶって平民達を虐げていました。領主が偉いのは分かりますが、私はあの光景は好きではありません」

「あたしもセーナちゃんに同感かな。どうしても平民に辛く当たるのを見ちゃうとね」

 2人の話を聞いたシスターヴァレリーは納得した表情を浮かべる。沙更とミリアの反応は予想できていたし、王都の状態が良くないのも知っていた。孤児達は、シスターヴァレリーの質問に首をかしげる。王都に行っていたのは知っているがそもそも王都がどんな場所か知らないのだ。

「貴女たちが思ったことは間違っては居ないわ。王国はもう末期なのでしょう。王家に力がなくなってもう久しいわ。私も年老いてなおまだ分からないことが多いけれど、それでもこの国がもたないでしょう」

  シスターヴァレリーもなんとなく察しているのだろう。王国が厳しい状態になっていることを。国に関して、沙更やミリアが積極的に関与することはまずない。だが、カタリーナやガーゼルベルトがどう動くかで影響を受けることになるだろうと言うことだけは理解出来ていた。

 リエットが王都に行っている以上、再度行くことになるとは思う。が、今のところすぐに行くわけではないのでしばらくゆっくり出来るだろうと2人は思っていた。

 沙更が住み着いて辺境を救って以後、孤児院は教会より独立した。そもそも教会側が孤児院を手放した格好なのだが、それに貢献したのはアレク司祭であった。教会が関与しないのならば、孤児院が辺境伯の保護を受ける形を取っての独立であった。

 完全に教会側が領主側に負けた格好で、沙更の存在を重視したカタリーナが孤児院のことで動いた結果でもあった。おかげで教会より独立したこともあり、より領主の保護を受けやすくなったのだ。そのため食料、水、衣服も沙更がここに来た当初よりもかなり良くなっている。

 今も、アレク司祭やシスターたちはここに居る。教会の意向を受けてではあるが、当人達の意向もありここに滞在し続けている。前よりも魔力が伸びて、出世頭と言われた頃よりも強くなったと当人も思っているし、そうなっているのを沙更もミリアも確認できていた。

 シスターたちも魔力が伸びて、今まで出来なかったことも出来るようになっている。この時代のシスターでも魔力を伸ばせることを証明していたのだから。
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