月の魔女と聖剣

空流眞壱

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極星騎士団と王都冒険者ギルド

第43話 極星騎士団との顔合わせ2

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月の魔女と聖剣

第43話 極星騎士団との顔合わせ2

 沙更の魔力に気づいたナゼルは、ガーゼルベルトの顔を二度見した。これ程の魔力を持つ子を見たことがなかったからだ。

「大将、この子が話してた子ですか?」

「流石に分かったか、ああそうだ。わしの恩人だよ。この娘のおかげで守るべき人を失わずに済んだ」

 ガーゼルベルトは、ナゼルの問いを肯定した。

『この子の魔力は流石に冗談じゃ済まされないほどだ。大将の姪御さんが伏せっていたのもまた事実。それを助けたとなればどれだけの事をしたのか計り知れないか…』

 ナゼルはカタリーナの病状までは聞いていなかったが、それでも一流以上の腕を持っていることだけは察した。魔力を察せる騎士はそこまでいない。それだけに、練度が高い事の裏付けとなっていた。

 ガーゼルベルトはカタリーナの病のことを話してはいない。己の魔力に干渉され、呪われたなどと貴族が公開するわけにはいかなかったからだ。だが、2年も闘病したとなれば、かなりの難病だったことは分かってしまう。だからこそ、沙更の実力もある程度なら分かるのだった。

 他の騎士たちも合流し、顔合わせを終えるとガーゼルベルトは屋敷に戻っていく。流石に、仕事が溜まっているようだ。ナゼルや他の騎士たちは元々非番のため、宿舎に戻っていった。わざわざ顔合わせのために、来てくれたと考えれば恐縮するしかない。

 今後は、一緒に訓練したりすることもあるだろうから顔合わせをしておいて正解だった。ガーゼルベルトが気を利かせてくれたのだと分かる。

 騎士たちと顔をあわせを終えたところで、先ほどのメイドが5人に近づいてきた。

「これから、屋敷を案内します。ついてきてください」

 メイドに連れられて、5人はガーゼルベルトの屋敷に入って行く。流石に宰相の屋敷だけあって、広すぎた。屋敷に入ってすぐに吹き抜けのホールになっている時点で、平民の住宅ではあり得ない構造になっていたからだ。高さも二階どころか三階までの吹き抜けとなれば相当に高さがあった。

 元々、50部屋を超える大豪邸だけにあまりの広さに迷いそうであった。だからこそのメイドさんなのだろうが、それでも歩き回れるかと言えば怪しいと沙更は思う。ミリアは多分平気だろうが、ヘレナが結構怪しい感じであった。方向音痴とは言わないが、迷う可能性が高い。慣れていないから尚更であった。

「ガーゼルベルト様からしばらく世話役を仰せつかりました。メイドのアンナマリーと申します」

 そう言って挨拶するアンナマリー、メイドとして長いのだろう。立ち振る舞いが、下手な貴族の令嬢を超えているように見える。もしかしたら、護衛も出来るのかもしれない。ある程度の荒事も可能と思えるあたり、相当であった。

 伊達に、宰相の屋敷に勤めるにはただのメイドでは厳しいのかもと思っていたが、後にアンナマリーだけが特別だったと言う落ちがついてくるのだが、それは後の話。

 アンナマリーに連れられて、おのおのの部屋まで案内されると今日はそのままご厚意に甘えることにしたのだった。
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