月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第288話 辺境に押し寄せるモンスター

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月の魔女とよばれるまで

第288話 辺境に押し寄せるモンスター

リエットに渡されたお金はミリアに一端渡すことにした。そもそも沙更だけならそこまでお金が必要ではないからであり、いろいろと物入りならば使って貰えば良いと思ったからだ。

それにしても、開拓村の奥にモンスターたちが集まっているとなれば沙更としても見過ごすわけには行かない。少なくても、生まれ育った村は消えたとしてもそこが墓標であることに変わりは無い。

そして、エーベルの意識を封じ込めた魔方陣がある古代遺跡を失うわけにもいかない。となれば、エンシェントゲート付近で迎撃するしかない。だが、あそこは平原であるため守るには向かない。森から背後に回られる可能性もあることから、下手すればエンシェントゲートすら廃棄しなければ行けない事態になりえた。

そして、そこにカタリーナが出て行くだろう。領主として戦って死ぬ気なのも薄々感づいていた。まともな領主だという証である。だから、ジークがここに居るのだと。

「今回もリエット様の護衛を受けてもらえるだろうか?」

ジークのその言葉に、パウエル達はみんな沙更を見る。今回どうするかは沙更が決めることだと思っていたからだ。それに、逃げたとしても逃げ切れるかは分からない。それに、シルバール王国が今回の氾濫に対処するかどうかすら決まっていないと言う事が、逃げ場がないことの現れ。

ウエストエンドも無事で居られるか分からない状況下で、リエットの護衛は出来ないと言うのが本音。そして、冒険者ギルドの一員としてモンスター退治に参加するつもりでいた。

「ジークさん、申し訳ありません。今回は承れません。モンスターの氾濫となれば、冒険者として対処しなければなりません。もし、出来るとするならカタリーナ様をお守りすることになると思います。あの方はそれを望まないと思いますが」

それ故に、ジークの申し出を断る。ウエストエンドも危ないとは言え、リエットはウエストエンドに残ってくれた方が生き残る可能性が高い。だから、そのままここに居て欲しいと言うのが沙更の願いであった。

沙更の言葉に、パウエル達も頷く。モンスターの氾濫は、冒険者にとって確実に稼ぐチャンスであった。死ぬ危険も高いが、もし生き残ってある程度の数のモンスターを倒していれば相当数のお金を手に入れることが出来る。そういう点でも命知らずな面々なのだ。

そして、そんなウエストエンドの冒険者の最高位がパウエルたちなのだから参加しないわけがなかった。

「そうか、ならばカタリーナ様にその事を伝えておこう。君たちが来ると知れば、少しは状況が変わる可能性がある。その時点で朗報と言う物だ」

「私にも出来る事と出来ないことがあります。余り期待をされても」

沙更がそう言うものの、ジークとしては期待をせざるを得ない。少なくても、完全に絶望する状態では無くなったと判断してしまう。対人間とモンスターでは違うと言う事がこの時点で抜けていた。
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