月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第250話 孤児院での迎撃戦4

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月の魔女とよばれるまで

第250話 孤児院での迎撃戦4

真夜中、数人の人間が孤児院に入り込んだ。ほとんどが男性だが、二人ほど女性が混ざっていた。女性のうち一人は、闇ギルドの長が沙更に会わせたいが故に派遣した子だ。

彼らの腕前はバラバラだが、上級暗殺者になれるほどではない。伸び盛りの人間もいるが、それはほんの一握りでありここに居る面々の大半は中級から上がれない面々がほとんどだった。

「貴族の娘一人殺せば、俺たちのランクが上がる。誰が殺しても文句を言うなよ」

「それにしても実の父親が娘の殺しの依頼を出すこと自体が異常だろうが、この仕事で名を上げる」

功名心が出るのも無理は無いが、既にこの時点で沙更に位置を特定されていると言うことに気付かない。探知システムは無音で稼働していたし、悟られることも無い。

もし、悟ることが出来るのならばその暗殺者は超一流と言っても過言では無い。音だけで無く、気配だけでもなく、魔力にも対応できる暗殺者が一流以上なのは確定事項であるのだから。

そんなわけで、暗殺者たちの位置を把握しつつも沙更は動く。そもそも、彼らにリエットの顔を見て貰うわけには行かないのだ。それに、孤児院の中を血で汚すわけには行かない。

となれば、外で迎撃すると言う選択肢しかない。実際の所、10人居ようが居なかろうが関係ないのだ。動くことを決めれば、動くのが沙更なのだから。

それに気付くのは言うまでも無くミリア。暗殺者の動きは、御庭番の職業となったことで身近な物になっている。

「セーナちゃん動くの?」

「はい、そもそも探知出来るようにしたのは私が直接動くため。リエットさんに近づかせるなんて愚は犯しません。そうなる前に、確実に止めますから」

「なら、あたしも一緒に行くよ。セーナちゃんにおんぶにだっこは流石に遠慮だからね」

そうやって話をしていると、そこにガレムがやってきた。

「行く気だろ?なら俺も混ぜろ」

「ガレムさんを置いてけぼりにはしません。来ると思ってました」

「セーナちゃんは気付いていたか、まあいいぜ。そこを含めて、俺はセーナちゃんを買っているわけだ。ミリアもだけど、一人で片付けるのは無しだぜ?」

ガレムとしては、暗殺者とのやりとりは今後必要になると直感していた。そういう所の感はもの凄く鋭い。バトルジャンキーでもあるが、それ以外の感も鋭い。野生の勘と言うべきだろうか?

ガレムも合流したところで、沙更は暗殺者の面々の中に動きが違う人間がいることに気付いた。積極的に動いている他9人と比べて、いかにも待っていると言った感じで孤児院の入り口側で待っていたからだ。あまりにもおかしいことから沙更はその暗殺者に会いに行くことにした。

どうせ、そこまでの間に他の9人を撃退しなければならないのは変わりなかったからだ。
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