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フィリエス家の内情と戦
第235話 サブギルドマスタールーカのイライラ
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月の魔女とよばれるまで
第235話 サブギルドマスタールーカのイライラ
護衛の依頼を引き受ける事で決まったところに、ギルドマスターのダイスが顔を出した。
「おっ、いいところにミリアがいるじゃねえか」
その声を聞いたルーカの表情がすうっと凍っていく。いつもの悪い癖が出てしまっているようだ。身体を動かしたいのはよく分かるが、ダイスの相手をするとなると相応の腕が必要になる。
その相手が出来るのは、ミストヘイムの鎧戦士とセリエか荒野の狼のパウエル、ガレム、ミリアの五人だけ。しかも、荒野の狼のメンバーだけがダイスの動きに合わせられるので模擬戦をやるのに一番の相手と言える。それだけに、楽しそうな表情をしているのだがそれに反比例するようにルーカの表情に変化があった。
「なんで、ここに居るんですか?」
ルーカが言った言葉は、ダイスの表情を一変させるのに充分だったようだ。
「いや、荒野の狼のメンバーがギルドに来たと聞いたからには身体を動かしたいなと」
「ギルドマスター、私は重要な仕事をしています。フィエリス家の家令ジーク様からの指名依頼の件で、荒野の狼の皆さんに来てもらったのを忘れていませんよね!?」
段々とルーカの表情に怒りが表れていく。その表情に、沙更はルーカが苦労していることを察する。大体、こういう場合ダイスがやらかして、後始末をルーカがやっているのは見なくてもわかるからだ。ミリアも察しているらしく、沙更が視線を向けると首を振った。
「ジーク殿から直接依頼された件だろう?でも、パウエル達が受けないわけがないから大丈夫だと言ったと思ったが?」
ダイスの場を読めない言葉に、深々とため息をつくルーカ。まさに無いと思われたらしい。きちんと説明した後でなら分かるが、説明する前にギルド側が受ける前提でいるのは確かに問題なのだ。
「結果として、受けてくれることにはなりましたが条件面も説明せずに依頼を冒険者に受けさせる気ですか?」
ルーカの怒りを感じたのか、ダイスも口ごもる。下手に刺激したら噴火が確定だからだ。それだけルーカのストレスが溜まっているとも言うのだが、察せないあたりが空気が読めないと言うことなのだろう。
その後、ルーカの怒りが引かないのを感じたのかダイスは個室をそっと出ていく。いなくなったところで、深々とため息をついた。
「はあっ。もう、本当に脳筋だから模擬戦が出来る相手が来ればああなのは困るところなの」
「ルーカさん、そのうち良ければ孤児院に来ませんか?少し、精神的に疲れているように見えます。話せない事もあるとは思いますが、不満を口にするだけでも気が楽になりますよ」
そう言った沙更をルーカは驚いた顔をしてから抱きしめた。ギルド内部でもたまに言われるのだが、沙更に言われたのがよほど嬉しかったらしい。
「セーナちゃんの優しさが身にしみるわ。リエット様もいるから遠慮はさせてもらうけれど、それでも嬉しい」
「ウエストエンドに、気軽に休めるいいお店あまり無いですから」
ミリアがそう言うとヘレナも頷く。ウエストエンドには娯楽が少ない。それか現実だった。
第235話 サブギルドマスタールーカのイライラ
護衛の依頼を引き受ける事で決まったところに、ギルドマスターのダイスが顔を出した。
「おっ、いいところにミリアがいるじゃねえか」
その声を聞いたルーカの表情がすうっと凍っていく。いつもの悪い癖が出てしまっているようだ。身体を動かしたいのはよく分かるが、ダイスの相手をするとなると相応の腕が必要になる。
その相手が出来るのは、ミストヘイムの鎧戦士とセリエか荒野の狼のパウエル、ガレム、ミリアの五人だけ。しかも、荒野の狼のメンバーだけがダイスの動きに合わせられるので模擬戦をやるのに一番の相手と言える。それだけに、楽しそうな表情をしているのだがそれに反比例するようにルーカの表情に変化があった。
「なんで、ここに居るんですか?」
ルーカが言った言葉は、ダイスの表情を一変させるのに充分だったようだ。
「いや、荒野の狼のメンバーがギルドに来たと聞いたからには身体を動かしたいなと」
「ギルドマスター、私は重要な仕事をしています。フィエリス家の家令ジーク様からの指名依頼の件で、荒野の狼の皆さんに来てもらったのを忘れていませんよね!?」
段々とルーカの表情に怒りが表れていく。その表情に、沙更はルーカが苦労していることを察する。大体、こういう場合ダイスがやらかして、後始末をルーカがやっているのは見なくてもわかるからだ。ミリアも察しているらしく、沙更が視線を向けると首を振った。
「ジーク殿から直接依頼された件だろう?でも、パウエル達が受けないわけがないから大丈夫だと言ったと思ったが?」
ダイスの場を読めない言葉に、深々とため息をつくルーカ。まさに無いと思われたらしい。きちんと説明した後でなら分かるが、説明する前にギルド側が受ける前提でいるのは確かに問題なのだ。
「結果として、受けてくれることにはなりましたが条件面も説明せずに依頼を冒険者に受けさせる気ですか?」
ルーカの怒りを感じたのか、ダイスも口ごもる。下手に刺激したら噴火が確定だからだ。それだけルーカのストレスが溜まっているとも言うのだが、察せないあたりが空気が読めないと言うことなのだろう。
その後、ルーカの怒りが引かないのを感じたのかダイスは個室をそっと出ていく。いなくなったところで、深々とため息をついた。
「はあっ。もう、本当に脳筋だから模擬戦が出来る相手が来ればああなのは困るところなの」
「ルーカさん、そのうち良ければ孤児院に来ませんか?少し、精神的に疲れているように見えます。話せない事もあるとは思いますが、不満を口にするだけでも気が楽になりますよ」
そう言った沙更をルーカは驚いた顔をしてから抱きしめた。ギルド内部でもたまに言われるのだが、沙更に言われたのがよほど嬉しかったらしい。
「セーナちゃんの優しさが身にしみるわ。リエット様もいるから遠慮はさせてもらうけれど、それでも嬉しい」
「ウエストエンドに、気軽に休めるいいお店あまり無いですから」
ミリアがそう言うとヘレナも頷く。ウエストエンドには娯楽が少ない。それか現実だった。
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