月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第202話 孤児院の問題の対処2

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月の魔女とよばれるまで

第202話 孤児院の問題の対処2

エリシアのことを伝えてほっとしたシスターヴァレリーに、現状の問題点を聞こうと思っていたことを伝える。どちらにしろ、孤児院が無くなってしまえばまずい状態になるのは火を見るよりも明らかであった。

孤児達を助ける場所が無いと言うことは、それだけ治安が悪化すると言う事。これ以上の治安の悪化は都市として致命的になりかねない。住むのに不適切と言うことになり、他の地域に移住されてしまいかねない。

ウエストエンドが崩壊すれば、シルバール王国自体に激震が走るのは否めない。辺境最大の都市であり、モンスターから王都を守る城塞でもあるからだ。

そこが機能しなくなると言う事になれば、王国自体にかなりのダメージが出ることは必死だった。それ故に、孤児院を建て直すのが急務だった。

「今の最大の問題は、食料なのだけどミリアとセーナちゃんのおかげでなんとかなりそう。後は、建物の問題かしらね。数百年も経っている石造りの建屋だから、ボロボロなのは分かっているのでしょう?」

「シスターヴァレリー、建屋に関してはすぐには動き出せないと思います。金額が莫大すぎて、金貨数百枚は必要になるでしょう。荒技でなんとか出来なくはないですが、相当に目立つことになるので避けたいのが本音です」

「分かっているわ、そこまで手助けして貰ったらこちらが申し訳なさ過ぎて困ってしまうの。だけど、心配してくれるのは凄く嬉しいことなのよ」

食料に事欠く有様だったのが金貨10枚を渡したことで、そんな状態から抜け出すことが出来ることにシスターヴァレリーは嬉しさ一杯でそれ以上のことを考えられないようだった。

今までが今までだけに、最底辺だったのが食料や衣料品を手に入れられる状態に上がっただけ、大分良かったと言える。でも、それだけでなんとかなるわけじゃない。

定期的な収入なども考えなければならない。孤児達に物を教えるにも何をするにしても、お金が必要なのには変わりなかった。しかも辺境伯の資金源であった盗賊たちを排除したことで、更に強硬手段を使ってくることも予想できた。

(ミリアお姉さんにのしかかる責任は重大すぎるかもしれない。私も一緒に頑張らないと潰れちゃう。いろいろと考えないと…)

沙更の心配は、目先よりも中期から長期的視野によるもの。一時的な資金があってもそれを生かせなければ、必要な時にお金を入れて欲しいとねだるだけになってしまう可能性もあった。

ミリア自身がどう思っているかは分からない。が、それでは健全とは言えない。少なくてもどうにかやりくり出来る程度にはなって貰わなければ、いろんな意味で困ることになると危機感が募ってしまう。

少なくても、辺境伯が取り立ててくる税金の額は知っておかなければと思う。沙更自身としても、このままではいけないと思うが故の行動だった。
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