月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第197話 孤児院への後押し

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月の魔女とよばれるまで

第197話 孤児院への後押し

孤児達に葉野菜と干し肉のシチューを振る舞う。その間にもパウエル達は、ジャガ種のジャガバターを食べていた。沙更も口にするが、やはり蒸してそこまで時間が経っていない事とジャガ種自体にある程度の甘みがあることで、塩バターの味が引き立っていた。

「やっぱり、ジャガ種は蒸した方がおいしいですね。チーズとかがあれば、また別のを考えてもいいかもです」

「流石にセーナちゃんの料理はおいしいよね。ジャガ種はここらで取れるけど、余り人気が無いんだよ」

「芽に毒があるってことだけを知られてて、その件で口に入れるのをはばかる形だったな」

「でも、こうやって調理できる事が分かれば売れるんじゃねえの?むしろ、これからじゃねえ?」

「セーナちゃんの料理スキルで、食べられないと思われていたものもあっさり食材として使われている当たりがすごいわよね。どれだけの事をしているか想像が付かないわ」

ホクホクのジャガバターを次々とほおばる男性陣。ミリアとヘレナも一つ丸々食べ終わっていた。なんだかんだで、十分いけるらしい。

孤児達に振る舞った葉野菜と干し肉のシチューは、牛乳の甘みと葉野菜や干し肉のうま味を引き出していて寸胴鍋一つ丸々作ったのだが、おかわりが相次いだことでそんなに時間が掛からずに消えてしまった。

みんな、お腹をいつも減らしていることからここまでしっかり食べられること自体が珍しいことのようだ。

そんな様子を見ていて、シスターヴァレリーは沙更に深々と頭を下げていた。

「ありがとうございます。孤児達に満足にご飯を上げられない状況で、ここまでご奉仕して貰うことになるなんて思いも寄りませんでした」

「えっと、シスターヴァレリー頭を上げてください。孤児院の経営が厳しいのはミリアお姉さんから聞いています。それに、私もここの改善に力を貸すことにしました。なので、お礼を言うのは良くなってからでお願いします。今できることをやらないと孤児院の立て直しも出来ませんから」

沙更はそれだけ言うとミリアの顔を見る。沙更からの視線を受けて、ミリアはシスターヴァレリーに金貨が入った革袋を差し出した。

「シスターヴァレリー、当座の資金でこの金額を渡しておくね。ちなみに、返却は受け付けないからそのつもりで」

「ミリア、貴女…。ごめんなさいね、ここのために頑張っているのは分かっているの。だけど、この子達すら飢える状況にしてしまった」

「シスターが頑張ってなかったわけが無いでしょう?あれだけ働いていて、それでも経営が苦しくていつも悩んでいたのを知っているよ。だから、少しでもこのお金を役立てて欲しい」

差し出された革袋をミリアから受け取ったシスターヴァレリーは、革袋に入っていた金額の量に驚くしかなかった。革袋の中身は金貨10枚。孤児院の一年以上の収入が入っていたからだ。
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