月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

閑話9 続々司祭アレク

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月の魔女とよばれるまで

閑話9 続々司祭アレク

ウエストエンドに到着して数日。ウエストエンドの教会はやはり王都ほどの大きさは無いが、それでもかなりの大きさを誇っていた。

そこに数日居たのだが、やはりここは教皇派で占められているためか居心地が非常に悪い。シスターあたりならいいのだが、司祭以上になるとアレク達を見て成り上がり者がと言う目で見てくるからだ。

「流石に、新進の私たちを受け入れられるほどの器がここにはないようだ」

「アレク様、孤児院からの要請はどうやらここの欲深僧侶たちに却下されたようです。孤児院を助ける位なら自分たちの私腹を肥やしたいとそう言うことみたいですね」

シスターの一人が、ここのシスターたちから情報を収集した結果がそれだった。アレクからしてみれば、頭が痛いことこの上なかった。

教会の上が腐ったことで、教会と国の力関係は既に国に傾いてしまっている。それに、これ以上聖女が出なければ教会側が苦境に立たされると分かっていても自分たちの権力を失いたくないと言う馬鹿どもが多いのだ。

アレクからしてみれば、実に嘆かわしいと思っていた。教会の馬鹿どもが増えた所為で、教会の偉大さが失われつつあったからだ。

既に庶民からは、お高くとまっている上に助けもしないとそっぽを向かれ始めていた。そのことがどれだけまずいのかすら理解していない。

そこに、アレクはウエストエンドの内部から感じたことの無い強大な魔力を感じ取った。

(なんだ、この途方も無い魔力は…。まさか、聖女様がもうウエストエンドに入っている!?あの知らせを受けて、まだ一週間も経っていないのにもう到着されていると言うのか?)

沙更の魔力を感じたアレクは驚くしか無かった。辺境からウエストエンドまでは普通に移動していれば10日以上掛かる。それを一週間以内で到着するとは思っても無かったのだ。

沙更が使える魔法を知らないからと言うのもあるが、加速魔法を丸一日以上持続させて移動させること自体が異常と言うしか無かったからだ。

それほどの魔法士は、この時代存在していない。だから、規格外になってしまうのだ。そして、その行動自体が理解されづらいと言う悪影響ばかりなのだが、沙更にとって逆に行動を読まれないのでそこは良かった部分である。

「アレク様、そろそろ孤児院に行きませんと聖女様と行き違いになりかねませんよ」

「そうだね、ここも居心地が悪すぎる。孤児院の方に移動しようか?」

アレクはそう言って、シスターたちを伴い孤児院へと動く。それを教会の上で眺めている男がいた。

「ポッと出の司祭ごときが我らの権益を侵すと言うのならその代価は命であがなうことになろうぞ」

そう呟いて、アレクの姿を睨み付けるとそこから姿を消した。
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