月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第61話 地上に出て

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月の魔女とよばれるまで

第61話 地上に出て

現代魔法と古代魔法の最大の差は、魔力消費量とその効果だ。そして、沙更が行使する魔法は既に古代魔法と言うよりも神代魔法と言うべき物へと進化していた。

魔法と精霊魔法は全く異なる魔法体系であり、理を同じくはしない。が、魔法と精霊魔法に別れる前の神代魔法の場合消費量は莫大であるが、自然の力をも利用することが出来る。精霊魔法と同じ原理を使うことも出来るのだ。

精霊魔法は精霊がいなければ行使することが出来ない。が、神代魔法にそんな物は存在しない。己の魔力がしっかりあれば扱うことが出来る。

が、それは神に等しい魔力を誇ると言う前提条件をクリアーしていればだ。普通の人間にそこまでの魔力は存在し得ない。

だが、今の沙更ならその条件をクリアーしている。そのため、風があれば消費量も効果も上げる事が出来ていた。

だからこそ、この世界の人間にとっては沙更の魔法の凄さを感じざるを得ない。それで無くても冒険者として動いている荒野の狼のメンツにとって、沙更の魔法はそれだけ途轍もないものだったから。

地上への階段を上りきれば、脱出するまでそこまで掛からない。風を直に感じられる状態になって、地上階まで上ってきたことで更に風を感じられるようになった。そのことにより、ウィンドウォークの効果が更に上がる。2.5倍速から3倍速に上がって、風が効率よく足の動きを後押ししてくれていた。

「ここに来て、風が私の後押しをしてくれるの?」

沙更の問いには、答えないけれど魔法は風を感じられることで更にその効力を増す格好だ。ある意味それが答えだといわんばかりに。

さらに加速したことで、地上の出口までは階段を上がってから一時間も掛からずにたどり着いていた。広さとしては、一番広いはずの地上階層なのだがミリアが覚えていた道筋を辿るだけなのであっさりとしたものだった。

日の光が沙更の目前に輝いていた。それは、地上に戻ってきた証であり、開拓村まではあと少し。

「ミリアお姉さん、ガレムさん、パウエルさん、ヘレナさん。地上まで連れてきてくれてありがとうございます」

光の下に出た沙更がそう言って頭を下げる。その姿に、ミリアが駆け寄った。

「セーナちゃんが頭を下げなくて良いよ。あたしたち、セーナちゃんに救って貰った側だもの。あそこで出会ってなければ、あそこで命を落としていたはずだよ」

「俺が言うのもおかしいがセーナちゃんの治癒魔法と修復魔法で救って貰ったのは確かだぜ。それに、アイスジャイアントの時も結局手助けになったかどうかだったしな」

「俺にいたっては救って貰ってばかりだ。セーナちゃんに頭を下げて貰う側じゃ無いのは分かって欲しい。剣も直して貰ったんだから」

「わたくしからもセーナちゃんが頭を下げる必要はないって言わせて貰うわ。だって、四人だけでは帰ってこられなかったですもの。メイスも直して貰って、服も新しくして貰ってお礼も出来てないのだから」

「でも、私は…」

「セーナちゃん、あたしは巻き込まれたなんて思ってないからね。あたしの力を引き出して貰ったのはセーナちゃんの側に居続けるため。白の直刀だっけ?この剣に認めて貰ったのもあるけれど、それでも手助けになりたいだけ」

ミリアはそう言って、セーナの顔を見る。そんなミリアをセーナも見返すとガレムが脳筋とは思えない言葉を吐いた。

「ミリアがセーナちゃんを大事なのは分かるけど、開拓村まで送り届けようぜ。そっちの方が大事だろ?」

「ガレムが珍しくまともなことを言ってる。セーナちゃんに影響されてる?」

「まあ、思うところはあったって言うところだぜ。それに、セーナちゃんのやりたいことを手助けするって決めたろうが」

実際、セーナの事を話している間にそう言う話が荒野の狼の中でまとまっていた。結局、恩返しらしい恩返しも出来ていないのだ。それなら、セーナのやることを手助けしようと満場一致で決まったのだった。
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