30 / 365
古代遺跡の出来事
第27話 虚空庫
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第27話 虚空庫
魔方陣から魔力が消えたのを確認すると沙更とミリアは姿見の部屋に戻ってきた。
魔方陣の部屋でいろいろとあったが、ミリアにはさらなる力が与えられて、沙更もマジックプラチナの腕輪を預かったりと戻ってきたことが非常に良かったと思えた。
「なんか、本当にあたしがあたしじゃないみたい。こんな感じは初めてかな」
「ミリアお姉さん、身体が慣れてないと思います。それに、あれだけの魔力を身体に入れたのですから少し休んでくださいね。魔力酔いしてもおかしくないですから」
「そうさせてもらおうかな。それにしても、古代魔法士って凄いね。今だと言い伝えしか残ってないけど、あんなことが出来るなんて驚いたよ」
ミリアからしてみれば、エーベルの力は自分より遙か上の存在に映っていた。魔力だけでも数十万以上を誇るのは、なんとなく感じていたからだ。そういう点でも古代魔法士の力は、今の魔法士よりも遙かに上に感じられる。
そんな、エーベルが守って欲しいと言ったセーナ。約束したし、命を助けてもらったお礼も出来ていない。そのことを考えれば、そのくらいお安いご用だった。
「セーナちゃん、あたしもの凄く頑張るから守らせてね」
「ミリアお姉さんがそう望むのなら、私は拒否しません。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
「うん、よろしくお願いされました。それじゃあ、ちょっともらった物を見てみようかな」
そう言って、エーベルから渡された幻影の衣を取り出す。生地としてもそこまで厚くないが、ものすごい魔力が込められていることが分かる。
「うん、ものすごい魔力がこもってる。普通の衣服じゃないよ、これ。今までのと比べても全然違う」
セーナの魔力をエーベルの知識で紡いだ糸で作り上げた幻影の衣は、ミスリルの糸よりも頑丈で魔法にも対抗力を持つまさに一級品の代物だった。そこまで厚みがない布地であるが、防御力は鋼鉄製のプレートアーマーすら遙かに超えていたのだから。
「触れば触るほど、ものすごい代物だって理解出来ちゃうんだけど本当に良いの?」
「その丈だと私は着られませんよ?ミリアお姉さんのために作った物ですから、素直に着てください。その方が服も喜びますよ」
「それでも気が引けるというか、凄い物過ぎて気後れしちゃう。慣れたら、気にしなくなるんだろうけど」
余りにも高価な代物だと気付くと怖じ気づいてしまうのは、ミリアが孤児だったからだろう。妙に、頭が回ってしまうのは苦労しているからだと沙更は思う。
他の三人は寝ていることから、ミリアは思い切ってレザーアーマーとその下に着ていた服も脱いでしまう。沙更としては大胆だなあと思いつつ、誰も見てないから大丈夫とも思う。
素肌から直に幻影の衣を着ると幻影の衣は、すんなりとミリアの身体に収まった。幻影の衣は沙更の影響か、着物に近い感じで動きやすい感じだ。強いて言うと足は若干膝の上までの丈で、腕は手首までの長さではあるが動きを阻害しないゆったり目の作りであった。
見た目は着物のように見えるが、多分パウエルたちが起きたら別の物に見えるんだろうと沙更は思う。今は、二人だけだから着物風に見える。だが、魔力が込められていることから別の物に見えてもおかしくはないと推測出来てしまう。
「いらなくなったレザーアーマーどうしますか?」
「もう、ボロボロだから捨てても良いけどセーナちゃん何かに使う?」
「何かの素材で使えるかも知れませんし、預かっても良いですか?」
沙更がそう言うとミリアはボロボロになったレザーアーマーを渡してくれる。それをそのまま沙更は、空間魔法のディメンションボックスを唱えた。
そもそも、異世界人の沙更にその手の知識は豊富にある。ネットゲームなどもかじっていた事もあるからか、イベントリのイメージが出来ないわけがない。
が、しかし膨大な魔力によって古代詠唱されたそれはまだに巨大な倉庫と言うしかなかった。
「えっと、思って詠唱してみましたけど大きすぎますね。これ」
「セーナちゃん、これまさか失われた魔法!?」
「空間魔法って失われてるんですか?確かに、かなりの魔力を使っていますけど私に取っては全然余裕ですよ?」
沙更の言葉に、ミリアは驚きの表情だ。それもそのはず、この時代重力魔法にしろ、空間魔法にしろ、失われた魔法であり、使い手など誰も居ない。
ある意味、言い伝えや魔導書などで記述が残るくらいでしかこの時代に残っていないのだ。
「空間魔法、ディメンションボックス改め虚空庫ってところでしょうか」
「セーナちゃん、まじめにこれは凄すぎると思うけど・・・。この倉庫って、もの凄い量が入るけど埋められる?全体埋まりきらないと思うんだけど、これ」
余りの大きさにミリアの想像を超えているが、それでも気絶したりしないあたりは頭が柔らかいのだと沙更は思う。普通の人なら頭が理解を拒否するだろうと言うところまで来ているからだ。
第27話 虚空庫
魔方陣から魔力が消えたのを確認すると沙更とミリアは姿見の部屋に戻ってきた。
魔方陣の部屋でいろいろとあったが、ミリアにはさらなる力が与えられて、沙更もマジックプラチナの腕輪を預かったりと戻ってきたことが非常に良かったと思えた。
「なんか、本当にあたしがあたしじゃないみたい。こんな感じは初めてかな」
「ミリアお姉さん、身体が慣れてないと思います。それに、あれだけの魔力を身体に入れたのですから少し休んでくださいね。魔力酔いしてもおかしくないですから」
「そうさせてもらおうかな。それにしても、古代魔法士って凄いね。今だと言い伝えしか残ってないけど、あんなことが出来るなんて驚いたよ」
ミリアからしてみれば、エーベルの力は自分より遙か上の存在に映っていた。魔力だけでも数十万以上を誇るのは、なんとなく感じていたからだ。そういう点でも古代魔法士の力は、今の魔法士よりも遙かに上に感じられる。
そんな、エーベルが守って欲しいと言ったセーナ。約束したし、命を助けてもらったお礼も出来ていない。そのことを考えれば、そのくらいお安いご用だった。
「セーナちゃん、あたしもの凄く頑張るから守らせてね」
「ミリアお姉さんがそう望むのなら、私は拒否しません。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
「うん、よろしくお願いされました。それじゃあ、ちょっともらった物を見てみようかな」
そう言って、エーベルから渡された幻影の衣を取り出す。生地としてもそこまで厚くないが、ものすごい魔力が込められていることが分かる。
「うん、ものすごい魔力がこもってる。普通の衣服じゃないよ、これ。今までのと比べても全然違う」
セーナの魔力をエーベルの知識で紡いだ糸で作り上げた幻影の衣は、ミスリルの糸よりも頑丈で魔法にも対抗力を持つまさに一級品の代物だった。そこまで厚みがない布地であるが、防御力は鋼鉄製のプレートアーマーすら遙かに超えていたのだから。
「触れば触るほど、ものすごい代物だって理解出来ちゃうんだけど本当に良いの?」
「その丈だと私は着られませんよ?ミリアお姉さんのために作った物ですから、素直に着てください。その方が服も喜びますよ」
「それでも気が引けるというか、凄い物過ぎて気後れしちゃう。慣れたら、気にしなくなるんだろうけど」
余りにも高価な代物だと気付くと怖じ気づいてしまうのは、ミリアが孤児だったからだろう。妙に、頭が回ってしまうのは苦労しているからだと沙更は思う。
他の三人は寝ていることから、ミリアは思い切ってレザーアーマーとその下に着ていた服も脱いでしまう。沙更としては大胆だなあと思いつつ、誰も見てないから大丈夫とも思う。
素肌から直に幻影の衣を着ると幻影の衣は、すんなりとミリアの身体に収まった。幻影の衣は沙更の影響か、着物に近い感じで動きやすい感じだ。強いて言うと足は若干膝の上までの丈で、腕は手首までの長さではあるが動きを阻害しないゆったり目の作りであった。
見た目は着物のように見えるが、多分パウエルたちが起きたら別の物に見えるんだろうと沙更は思う。今は、二人だけだから着物風に見える。だが、魔力が込められていることから別の物に見えてもおかしくはないと推測出来てしまう。
「いらなくなったレザーアーマーどうしますか?」
「もう、ボロボロだから捨てても良いけどセーナちゃん何かに使う?」
「何かの素材で使えるかも知れませんし、預かっても良いですか?」
沙更がそう言うとミリアはボロボロになったレザーアーマーを渡してくれる。それをそのまま沙更は、空間魔法のディメンションボックスを唱えた。
そもそも、異世界人の沙更にその手の知識は豊富にある。ネットゲームなどもかじっていた事もあるからか、イベントリのイメージが出来ないわけがない。
が、しかし膨大な魔力によって古代詠唱されたそれはまだに巨大な倉庫と言うしかなかった。
「えっと、思って詠唱してみましたけど大きすぎますね。これ」
「セーナちゃん、これまさか失われた魔法!?」
「空間魔法って失われてるんですか?確かに、かなりの魔力を使っていますけど私に取っては全然余裕ですよ?」
沙更の言葉に、ミリアは驚きの表情だ。それもそのはず、この時代重力魔法にしろ、空間魔法にしろ、失われた魔法であり、使い手など誰も居ない。
ある意味、言い伝えや魔導書などで記述が残るくらいでしかこの時代に残っていないのだ。
「空間魔法、ディメンションボックス改め虚空庫ってところでしょうか」
「セーナちゃん、まじめにこれは凄すぎると思うけど・・・。この倉庫って、もの凄い量が入るけど埋められる?全体埋まりきらないと思うんだけど、これ」
余りの大きさにミリアの想像を超えているが、それでも気絶したりしないあたりは頭が柔らかいのだと沙更は思う。普通の人なら頭が理解を拒否するだろうと言うところまで来ているからだ。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。
傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい
リコピン
ファンタジー
某乙女ゲームの悪役令嬢に転生したナディア。子どもの頃に思い出した前世知識を生かして悪役令嬢回避を狙うが、強制力が無茶するせいで上手くいかない。ナディアの専属執事であるジェイクは、そんなナディアの奇行に振り回されることになる。
※短編(10万字はいかない)予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる